『秋の暮れ』
葉山の文学シリーズ その1
かいのどうぶつえん 園長です。
今回は、言葉の錬金術師といわれた俳人・西東三鬼(さいとうさんき)の代表作です。
三鬼は、明治33年(1900)岡山県生まれ。56歳(昭和31)の時、大阪の香里病院(歯科部長)を辞職し葉山に転居。角川書店の『俳句』編集長に就任するも、1年後に退任し俳句で一本立ちしました。時代を先駆ける句を次々に発表。全国各地に吟行し、俳人はもちろん小説家や劇作家、詩人、文芸評論家など多分野の論客たちと、エネルギッシュに交遊しました。松本清張は「三鬼は現代俳句でもっとも天才的な地位の作家。詩趣はボードレールの『悪の華』に近い」と才能をたたえています。権威に媚びず、女性関係は自由奔放で毀誉褒貶のエピソードがつきない三鬼。潮騒の森戸海岸を愛犬と散歩し、名高い句を遺しました。
「秋の暮 大魚の骨を 海が引く」
そして胃がん発症。昭和37年(1962)4月1日、5年余を過ごした葉山の自宅で永眠しました。享年62歳。「春を病み 松の根つこも 見あきたり」(絶筆)。なお、平成11年(1999)4月1日、森戸神社そばに”秋の暮”の文学碑、相福寺近くの住居跡に”終焉の地”の句碑が建立されました。
2003年の開園時より、貝たちとは「割らない」「塗らない」「削らない」と固く約束して制作しています。園長
<貝の配役>「秋の暮」
★大魚の骨 頭:エガイ 目:スガイ 骨:マルツノガイ/ヤカドツノガイ/アカウニ 鰭(ひれ):イタヤガイ他★砂浜: ホタテガイ ★海:マドガイ
参考資料:『西東三鬼自伝・俳論』沖積舎/『西東三鬼全句集』沖積舎(全2735句)/別冊「俳句四季」『西東三鬼の世界』/『俳句αあるふぁ』特集ー生誕100年西東三鬼 毎日新聞社/『ふるさと歳時記』葉山町
追憶:三鬼が葉山に転居した年、園長は小学生(9歳)。漁師の親戚に遊びに行く時、三鬼の家の前を通り、三鬼が大魚の骨を見た小さな漁港の横で、地引網を手伝ったことを思い出しました。もちろんまったく面識はありませんが、なぜか近しい気がしています。