祖父がキツネに化かされたと言い張る話
先日、ふと思い出したので子供のころに母方のお爺ちゃんが昔「キツネに化かされた」と言い張っていた話を書いてみたいと思います。
クソ田舎
私は北海道の道東の育ちなのですが、それはもうびっくりするほどの田舎ですので子供の頃は校庭にキタキツネが現れたり、知り合いが鹿を轢いてしまって車が廃車になったり、どこどこの誰が熊に喰われたーなんてのは日常でした。
今回思い出した話というのは、確か小学生の頃、お正月に親族一同が集まった時に母方のおじいちゃんから聞いた話です。
このお爺ちゃんってのが、また偏屈な頑固者で親族が集まっても大人達の酒盛りには参加せず、一人でご飯食べてそそくさと寝ちゃうタイプのジジイだったんですが、酒盛りに参加しないため自動的に子供たちの話し相手になってしまうのです。
ある日、何かの話でキツネの話になった時、お爺ちゃんが『昔キツネに化かされたことがある!!』と言い始めました。
お酒を飲んでた大人たちは、「何言ってんだジジイ」とか「また始まったww」的な感じで相手にしていなかったんですが、子供たちにとってはそれはもう興味津津な話で、すぐに「いつ?」「どこで?」「どうやって化かされたの?」と質問の嵐でした。
するとお爺ちゃんは話してくれました。
友人の訃報を聞いて駆けつけるはずだった祖父
お爺ちゃんが若い頃…詳しくは聞いていませんが恐らく20代〜30代くらいの話だったと記憶しています。今から60年~70年くらい前でしょうか。
ある日、隣町の同年代の友人が亡くなったとの知らせがありました。(何故亡くなったかは失念。。。事故だったような)
仲の良かったお爺ちゃんはもちろんすぐに駆けつけようと家を出ました。季節は冬で、その日は猛吹雪だったそうです。
隣町までは歩いて2〜3時間くらいでしょうか。お爺ちゃんは徒歩で向かいました。田舎なので道は一本。真っすぐ進めば隣町に着きます。
しかし、吹雪のせいかいつまで経っても進んでいる感じがしません。真っ白な道をただただ真っすぐ歩いているだけ。それでも歩き続けます。
しかし進めど進めどあるのは真っ白な道だけ。どれだけ歩いても隣町には着かなかったそうです。
そこでお爺ちゃんは諦めました。
元々神秘的なことを信じる人だったので、恐らく亡くなった友人が来るなと言っているんだろうと、そう判断したのです。
仕方ないと踵を返し家に戻ろうと引き返したところ、なんと10分も経たずに自分の家が見えたそうです。
よくわからないまま、まさにキツネにつままれたような気持ちで家に帰り、とりあえず一旦布団に入ったお爺ちゃん。
翌朝、目覚めると雪がやんでいたので、改めて歩いて隣町に向かいました。
歩き始めると、昨日自分が歩いた足跡が残っています。
自分の足跡を辿る形で隣町に向かいました。
そして歩き始めてすぐに異変に気付きました。隣町までは道を真っすぐ歩くと着くのですが、自分の足跡が急に左に逸れていたのです。
『どうしてだろう』気になったお爺ちゃんは自分の足跡を追いました。
すると、そこには…
全く関係ない近所の家の近くの広場をぐるぐるぐるぐる何周も廻っている自分の足跡があったそうです。
真相は闇の中・・・
お爺ちゃんはキツネに化かされたと言っていましたが、果たして本当に化かされたのか、それともお爺ちゃんが子供を楽しませるために創作した話なのか、亡くなった友人が来させないようにしたのか、本当のところはわかりませんが…。
先日、兄にこの話をしたところやはり興味深かったようで覚えていました。
田舎ではキツネやタヌキに化かされたというエピソードをたまに聞いたりするのですが、今思えばお爺ちゃんのこの話はもっと詳しく聞けばよかったなー、と思います。もう10年以上前に亡くなってしまいましたが。
田舎にはこの手の話は結構あるのかもしれませんね。