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村上ちゃんと青木くん

コールセンターのセンター長をやっていると、部下のSVからいろいろな相談やお願いをされます。そして、それを一つずつ解決していくことが私の仕事です。

業務の相談ももちろんですが、やっぱりそこで働いているオペレーターへの接し方なんかは結構SVの人たちにとってはとても重要な問題なんです。

接し方や指導方法をアドバイスするのですが、それでもやっかいなオペレーターもいます。

今回はそんな、SVからの相談とやっかいなオペレーターへの対応についてお話しします。

村上ちゃん

その子は20代前半の女の子、前職は美容師だったからかちょっと髪の毛が明(赤)るくて、服装もすこしカジュアルで、爪も派手で、ジャニーズが好きで、「ちょこん」って感じの今時の女の子って感じ。

まだSVになって間もなくて、先輩SVと一緒に一生懸命目の前の業務に取り組んでいる子です。それでも自分の業務はきっちり把握しているし、オペレーターごとの特徴も頭に入っているし、新人オペレーターにも優しく丁寧に指導できる。

だから私も先輩SVもその子を頼りにして、すごく期待している。

その子は、「村上ちゃん」と言います。あ、もちろん仮名です。

私は男性だし、上司だし、村上ちゃんより一回りも年上だから「ちゃん」付けはあまり良くないのは理解しているけど、ウチのコールセンターはちょっとゆるいところもあって、私もダメなのはわかっているんだけど、そうやって呼んでしまっています。

青木くん

青木くんは村上ちゃんにとって苦手なオペレーターがで、というか村上ちゃんに限らずSVの間では青木くんはあまり評判が良くないのです。

青木くんは村上ちゃんよりも一回り年上、身長も高く体格も良いのでSVを下に見た態度が目立ちます。

始業時間ギリギリで出勤してくるから時間を過ぎてもパソコンが立ち上がってなかったり、教えたことをなかなか覚えなかったり、休憩も遅れて帰ってきたり、業務中ウトウトしたり、退勤も早かったり。

もちろんその場でいつも注意はしているんだけど「あれ、そうでしたっけ?」「そんなことないですよ」「ちゃんとやってますよ」といった感じ。

ある日、村上ちゃんと先輩SVから相談を受けました。「青木くんなんですけど、どうにかなりませんか?」と。

相談

私のセンター運営方針は、私は全体の方向性を示して本人のやる気を引き出して、みんなが自分が考えてやりたいと思ったことをやってもらうというスタンスなので、村上ちゃんが青木くんのことで困っているのは分かっていたけど、彼女から相談してくるまで私からは何もアクションは起こしていませんでした。先輩SVには少し状況聞いたりアドバイスはしてましたけどね。

なので村上ちゃんも、自分で考えて、自分が相談したほうがいいと思って私に聞いてきたので、そこで初めて私も動きました。

私のセンターのSVはとても優秀です。基本的に私が関与しなくても自分たちで解決してくれて、しっかりと報告をしてくれています。なので私も全体の方向性からずれていなければSV達のやり方に口出しはほぼしません。

ですが、このように私に頼ってくるということはよっぽどのことなんだな、と感じました。

なので、まずは村上ちゃんから話を聞きます。

ここでの話を聞くというのは、愚痴を聞く、というのと同じです。

私も青木くんのことは先輩SVを通して把握しているので、どんな状況かわかっています。

それでも結論や指示出しをすぐにするのではなく、まずは村上ちゃんが悩んでいることや青木くんに対する考え方を聞きます。それは愚痴レベルでもOKで、要は、彼女の気持ちを楽にしてあげるのです。

全て吐き出したところで、私なりの解決策を出します。

青木くんは私が引き取る

私が出した解決策は、青木くんを私の近くの席に配置して、私が青木くんを管理(というか監視)する、ということでした。

村上ちゃんの話を聞いて、村上ちゃんが青木くんのことを完全に拒否していること、青木くんも村上ちゃんのことを完全に下に見ていること、このままでは村上ちゃんも青木くんもお互いのためにはならないこと、が分かりました。

コールセンターってとてもいろいろな考え方の人がいて、それを同じ場所で仕事をさせるわけですから、管理者と合う合わないや、どうしても自分の考え方を押し通したり、会社の方針を理解してくれない人って一定数いるんです。

採用の段階でそういったことが分かればもともと採用しないんですが、実際に入社してからでないと分からないこともあります。

一度雇用してしまうとよっぽどの理由がないと解雇なんて出来ないので、SVからの指示を聞いてくれなかったり反抗的な態度で仕事をしていても、なかなか業務から外すということは出来ないんです。

また、青木くんは成績自体は悪くなく(中の上くらい)なのでその業務から外すのもなかなか決断できないでいるのも村上ちゃんは言ってました。

管理者側にとって、一番いいのは青木くんが
①管理者の指示を素直に聞いてくれて、
②時間も守って、
③一生懸命働いてくれることです。

全てうまくいけば一番ですが、さすがにそれは都合がよすぎるので、せめて一つか二つは解決したいと思って、私の近くで業務をしてもらうようにしました。

私の近くの座席へ

オペレーターの座席は毎日違うので、青木くんははじめは「あれ、今日は珍しい席だな」と思っていたことでしょう。

でも次の日もその次の日も私の近くを固定席として配置したものですから、青木くんもなにか気付いた様子が伺えます。

私は業務中はほぼ青木くんへ話しかけませんが、私も男性で、青木くんよりも年上で、しかもセンター長という立場ですから、青木くんも少しやりにくそうにしています。

※ちなみに、身長も体格も私より青木くんの方が大きいです。

なにか指示があれば、村上ちゃんから私へ連絡がきて、私から青木くんに指示を出します。

青木くんが遅刻ギリギリだと「今日は遅いね、早くパソコン立ち上げてね」、休憩から遅れて戻ってくると「あれ?何時から休憩行ったんだっけ?」、ウトウトしていると「こら!」。

三日も続けば、青木くんも態度を改めざるを得ません。

やっぱりセンター長という立場は、オペレーターにとっては脅威なのかもしれません。

それでも業務を一生懸命やっているかどうかはあまり言いません。

一生懸命やってくれればもっと成績が上がるかもしれませんが、もともと青木くんは成績が悪いわけではありませんから、今まで通りの結果であればそこまでガチガチに固めなくてもよいと考えたからです。

これで、
①管理者の指示を素直に聞いてくれる
②時間も守る
③一生懸命働いてくれる
のうち、①と②は解決できました。

ある程度青木くんにも逃げ場を残しておかないと、辞められしまってはセンターにとっての損失になるので、どこまでやればいいのかの妥協点は必要だと思っています。

私が考えたのは、どうすれば青木くんが会社の方向性を理解してくれるか、理解してくれなくても管理者の意図した動きをしてくれるか、です。

一つ一つ解決していく

なんでもそうですけど、何か問題が起こってそれを解決していく、の繰り返しです。

事前に回避できる問題もありますが、起こってしまってそれをどう解決・改善していくのか、が私たちの仕事です。

青木くんはしばらく私の近くの席ですし、村上ちゃんのストレスも少なくなりました。

あと一つ、青木くんに直してほしいところがあるんですが、あの貧乏ゆすりは今後の課題です。

私のデスクが揺れる揺れる・・・

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