見出し画像

David Bowieの魅力とは?何がすごいの?

好きなアーティストは誰?という質問は、音楽好きにとっては非常に悩ましいものだと思います。
そ、そんな殺生な…!と。一人に定められるわけなかろうと。

これは他の趣味でも同じで、例えばゲーム好きの人に「好きなゲーム何?」と尋ねてもその人は苦悶の表情を浮かべるでしょう。

かくいう私も好きなアーティストは誰かと問われたら、かなり難しいです。
その時々で聴いているアーティストも違いますし、私の場合は洋楽のロックとポップとR&Bとヒップホップを幅広く聴いているので、選択肢は無限大です。
ビートルズ、クイーン、オアシスのような定番アーティストはもちろん、The SmithsやJoy DivisionやRush、Frank OceanやChance the rapper、Childish Gambinoのような日本でそこまで知られていないアーティストも大好きです。

しかし、ちょっと別格に好きだなというアーティストが二人います。

一人目はKendrick Lamar
当noteでは何度も言及しており、私は現在彼が世界最高のアーティストであると確信しています。


そしてもう一人はDavid Bowie
今日はDavid Bowieがなぜすごいのか、その魅力について語ります。


キャリアの長さがすごい

David Bowieのデビューは1966年。実質的なファーストアルバムと評される「Space Oddity」を発表したのは1969年で、そこから2016年に逝去するまでj実に50年近く第一線で活動していました(途中10年ほど休止期間あり)。

しかもほとんどのアーティストは、50年も活動すれば最後の方は昔の曲を演奏し続けたり、そもそも新作を発表せずに余生を過ごすことがほとんどですが、David Bowieは亡くなる2日前に新作を発表するなど本当に音楽と創作に捧げ続けた人生でした。
しかもこの遺作である「Blackstar(★)」は2010年代に残る傑作として知られ、全米・全英ともに1位を獲得するなど大ヒットを記録しました。
文字通り、死ぬまで第一線を張り続けたのです。


変化を恐れない姿勢がすごい

50年間活動し、実に28枚ものスタジオアルバムを発表したDavid Bowie。
実は彼の音楽性はキャリアの中で変わり続けました

まず彼はSpace Oddityでデビューしたのち、音楽史に残るアルバムである「ジギー・スターダスト」というアルバムを発表します。

このアルバムはアルバム全体で一つのストーリーになっているコンセプトアルバムであり、簡単に言うと「宇宙からの使者であり、ロックスターでもあるジギー・スターダストが、地球がまもなく終わることを人類に警告しにやってきた結果瞬く間に人気を博し、熱狂的なファンベースを得るが、やがて成功にあぐらをかいて彼自身が滅亡する」というストーリーになっています。

このアルバムはコンセプトアルバムな上、一つ一つの曲もとってもキャッチーで、特に「Starman」や「Ziggy Stardust」はDavid Bowieのキャリアを代表する曲です。

この頃の音楽性は、見た目はド派手な化粧もして煌びやかなヨーロッパ貴族的な衣装を身につけながらキャッチーなロックを披露する、グラム・ロックというものです。

日本人だと忌野清志郎が直接的な影響を受けていますね。

普通のアーティストだとこのままグラム・ロックをずっとやりそうなものですが、なんとボウイはジギー・スターダストからたった2年でこの音楽性を捨て、過渡期の作品である「Diamond Dogs」を発表したのち、なんと黒人音楽に傾倒します。
ここで発表されたアルバムが、「Young Americans」です。

この頃、黒人が聞く音楽と白人が聞く音楽とではまだまだ乖離があり、ボウイ自身は白人でファンもほとんど白人でしたが、思いっきり黒人音楽に傾倒し、スタジオにも多数の黒人ミュージシャンをバックアップとして入れてソウルのアルバムを作ってしまうのです。
同じく黒人音楽に強い興味を持っていたジョン・レノンとのコラボ曲である「Fame」では全米1位を記録しています。

しかし、このアルバムでは正直「白人が黒人音楽の真似をしてみた」という匂いが強かったものの、次回作では一歩進んで「白人である自分がいかに黒人音楽を取り入れるべきか」というコンセプトで超名作、「Station to Station」が発表されます。
これは個人的にAll time favoriteでもあり、是非聴いてほしいアルバムの一つです。

このアルバムは2020年に発表されたRolling Stone誌の「The 500 Greatest Albums of All Time」では52位に入るなど現在でも非常に高い評価を受けています。

さて、グラム・ロックからの方向転換に大成功し、大名作を発表。批評だけではなく全米1位を獲得したりと売り上げ的にも絶好調。
普通のアーティストだったらここで満足するところですが、このStation to Stationの次にDavid Bowieは急激な方向転換をします。

この頃のDavid Bowieは深刻な薬物中毒に悩まされており、そこからの脱却を図った結果、「ジャーマンロックをベースとしたシンプルな電子ロック」という、黒人音楽とは全く似ても似つかない音楽へと方向転換するのです。
大名作、「Low」の発表です。

このアルバムは後半が全てインストという超攻めた構成になっており、非常に先鋭的で今までとは全く異なるDavid Bowieの姿が見られます。

この路線で「Heroes」「Lodgers」といった作品を出していったDavid Bowie。彼は次にこう思います。
俺、ポップスターになりてえな。

この時点でDavid Bowieは超売れっ子ですし大スターであることは間違いないんですが、どちらかというとカルト的な人気があるタイプでした。
グラム・ロックの時点で既に見た目的に人を選びそうですし、Lowなんてめちゃくちゃ聴く人を選ぶアルバムなので当然だと思います。そもそもイギリス人なので、アメリカでのセールスは若干不利です。

ところが時代はMTV全盛期。
この頃になるとMichael JacksonやMadonnaなど、今までよりはるかに大きい規模のポップスターが生まれてきます。
David Bowieはここを目指してみる気になったのです。

とはいってもそんなのみんななりたいわけで、そんな簡単に大スターになれるわけがありません。普通の人なら
David Bowieは普通ではありませんでした。「Let’s Dance」によって、世界的な大スターになるのです。

この頃のライブを見ると黄色い声援も多く、観客も6万人くらいいたりして、完全に世界的なスターであったことがよくわかります。

そしてここからDavid Bowieは…と無限に続くわけですが、今書いたような凄まじいまでの音楽性の変遷、実はたった10年間のうちに行われた話なのです。
そしてDavid Bowieのキャリアは50年あったのです。どれだけヤバイかわかるでしょ?


幾度の復活がすごい

実はDavid Bowie、何回も途中で復活しています。

一つ目は先述の薬物中毒からの復活。

二つ目は90年代の復活。
実は先述の通りLet’s Danceを発表し世界的なスターになったDavid Bowieは、この後少し迷走してしまうのです。

Let's Danceから4年後には、キャリアで最も駄作であると評されることも多い「Never Let Me Down」を発表。その後ポップスターからのイメチェンをはかり、シンプルなロックをするバンド「Tin Machine」を結成しますが、これは大失敗します。

Tin Machineの前には「今後David Bowieとしては活動を行わない」と宣言するほど気合の入っていた本プロジェクトでしたが、全く評価されず、ほとんどの人がDavid Bowieは終わったと評価していました。

しかし、そこは奇才David Bowie。90年代に再びDavid Bowieとしての活動を再開すると、「Black Tie White Noise」で完全復活。全英1位を獲得します。


三つ目は隠居からの復活
Black Tie White Noise以降も「郊外のブッダ」「Hours…」「Outside」など、1993~2003年の10年で7作品と非常にハイペースで新作を発表し続けます。

しかし2003年、ハンブルクのツアーにて動脈瘤による心臓の痛みを訴え緊急入院して以降ぱたりと活動を止めてしまい、完全な隠居状態に入ります。
そうして世間もDavid Bowieを忘れていた2013年、突然新作「The Next Day」を発表するのです。

しかもこれがただの復活作というだけではなくかなりの名作で、史上最高のカムバック・アルバムと言われることも珍しくありません。

昔の音楽をやってみました~みたいな感じではなく積極的に現代音楽を取り入れていて、かつそれを完全に自分のものとして操っている。60代でどうやってこれを作れるんだと思えるほどの作品だったのです。

あまりにも名作が多い

そんなこんなでキャリアは長い上に音楽性を変え続け、何度も蘇ってずっと活躍し続けてきたわけですから、とにかく名作が多いです。

ひとえにオススメはどれ?と言われても言葉に詰まるほどで、実際Apple MusicのDavid Bowieの必聴アルバム欄には9作もあります。


これ実はとんでもない数で、例えば更にキャリアが長いThe Rolling Stonesは6作、多作で知られるPrinceは5作、現代のトップアーティストであるKanye Westは6作、Drakeは4作、Taylor Swiftは4作、邦楽でもBUMP OF CHICKENが2作、Mr.Childrenですら1作、スピッツやB'zにいたっては0作です。
そう、この欄は非常に基準が厳しいのです。

そこに9作も掲載されているDavid Bowie、半端ないって。
実際これより掲載されているアーティストを探してみたんですが、私が調査した限りはありませんでした。
如何にDavid Bowieが名作だらけかよくわかると思います。

新しいものを受け入れる柔軟性がすごい

音楽性が変わり続けていたというのは色々なものからインスピレーションを受けていたということに他なりません。

Young Americansでは黒人音楽から、Lowではクラウト・ロックから、その後失敗こそしましたがTin Machineの際にはPixiesというバンドから強く影響を受けています。

また日本からの影響も非常に強く、グラム・ロックの化粧は歌舞伎の影響が色濃いですし、ステージでも歌舞伎の「早替わり」を採用していました。
また山本寛斎とのつながりが非常に強いことも知られ、ジギーやアラジン・セインの衣装をデザインしてもらっていました。

It’s No Game(Part1)という曲では日本語のナレーションがあったりします。
(日本人が聞くとだいぶ珍妙でちょっと面白いですw)

阪急電鉄に乗っているDavid Bowieの写真も非常に有名です。

遺作である「Blackstar」は、Kendrick Lamarの「To Pimp A Butterfly」に強く影響を受けていることでも知られています。

上の記事のiという曲の解説でも解説しましたが、この曲にこんなラインがあります。

Black stars can come and get me
ブラックスターラインが俺を迎えにくるかもな
Take it from Oprah Winfrey, tell her she right on time
それをオプラ・ウィンフリーから奪い取って、あんたの言う通りだって言うんだ

Kendrick Lamar - iより。Zoe和訳

ブラックスターラインというのはマーカス・ガーベイの主導したアフリカ帰還運動の象徴です。David Bowieの「Blackstar」には様々な意味が込められているとされていますが、これもその一つでしょう。

そしてビックリするのが、「Blackstar」が出たのが 2016年1月8日、「To Pimp A Butterfly」が出たのが2015年3月15日、つまり間に10か月くらいしかないんですよね。でDavid Bowieは「Blackstar」発表の2日後に亡くなっています。

死ぬ直前のアーティストが、その死のたった10か月前の音楽、しかもヒップホップという自分のキャリアから遠く離れた音楽を聴いてインスピレーションを受けて、新作であり名作を作り上げる。
これがどれほどすごいことか。

如何にDavid Bowieが新しいものを柔軟に取り入れ、それを自分のものに昇華する能力が高かったかが分かると思います。

見た目の美しさがすごい

David Bowieって、めっちゃイケメンなんです。
普通に顔ファンもかなり多いアーティストでした。

デヴィッド・ボウイ:美しきアクターより引用

これはジギー・スターダストが出た頃のボウイ。イケメンですねえ。
年をとった後もイケメンです。

デヴィッド・ボウイ CHANGES 写真で綴る生涯より引用

彼はステージ衣装などもかなり気を配っており、男からも女からも好かれる見た目を維持し続けていました。
元々中性的なキャラクターで売り出したこともあり、とにかく「自分をどう見せるか」にこだわっていた方だったのです。

俳優としての活動もすごい

実はDavid Bowieは俳優活動もしており、『地球に落ちて来た男』で初主演を演じ、それが高く評価されます。

『地球に落ちて来た男』でのDavid Bowie

その後も「トップガン」の監督である「トニー・スコット」の監督デビュー作である「ハンガー」では主役級のキャラクターを演じます。

『ハンガー』でのDavid Bowie

日本で最も有名なのは、大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」でしょう。
ビートたけし、坂本龍一、David Bowieという今見てもすごすぎてよくわからないキャスト陣で公開されたこの映画は世界中で大ヒットします。
ビートたけしが映画監督を始めるきっかけとなった映画としても有名です。

クライマックスで、坂本龍一演じるヨノイの前で見せるパフォーマンスは非常に崇高ですし、クライマックスである日本刀を抜いたヨノイ大尉にボウイ演じるセリアズが近づき、頬にキスをするシーンも大変有名です。

実は先ほどLet’s Dance以降David Bowieが若干の低迷期に入ると書きましたが、戦場のメリークリスマスはこの頃の時期と被っており、音楽的な低迷期と俳優としての全盛期が被っています
他にも『スノーマン』、『眠れる夜のために』、『ビギナーズ』、『ラビリンス 魔王の迷宮』、『最後の誘惑』など多数の映画に出演しています。この頃のボウイはおそらく、自分のクリエイティビティを音楽ではなく演技に注いでいたのではないのでしょうか。


最後に

いかがでしたでしょうか。

David Bowieは個人的にも非常に思い出深いアーティストです。
私の父親がDavid Bowieの大ファンでして、その影響を受けて聞き始めました。中高時代はiPodが壊れるんじゃないかと思うくらいDavid Bowieを聴き続けていたのを覚えています。

また、David Bowieが10年越しの復活を果たしたのが2013年で、当時高3だった僕はDavid Bowieばかり聴いており、完全に夢中でした。
それは受験勉強でも例外ではなく、特に受験直前はStation to Stationを聴き続け、結果東大に合格したので、その思い出補正もあってずっと生涯のAll time favoriteはStation to Stationである、と言い続けています。

ただ、そんな大好きなDavid Bowieの魅力があまりにも多すぎて、一度整理しておきたいなと思い、書かせていただきました。
これからも彼の音楽が聴き継がれて、いっぱいファンが増えると嬉しい限りです。


いいなと思ったら応援しよう!

Zoe
いただいたサポートは、大学院の研究生活に必要な経費に充てさせていただきます。

この記事が参加している募集