城山文庫の書棚から005『グリーン・ニューディール』明日香壽川 2021(岩波新書)
2010年から2019年の間に太陽光パネルの価格は10分の1になっている。その間、原発の発電コストは1.5倍から2倍以上に。2020年の米国データで再エネの発電コストは原発や石炭火力の半分以下。もはや原発に経済合理性すら無いことは明らかだ。
欧米では産業界の方に“エネルギー転換は不可避”という覚悟がある。日本では、どうせ政府はいつものように口先だけであろうと思っているので真剣な議論もしない。この差はとてつもなく大きい。
本書では“気候正義”の論調をリードするジャーナリストのナオミ・クラインや気鋭の若手学者斎藤幸平の『人新生の資本論』にも言及。斎藤氏に対しては、論理展開の課題を的確に指摘しつつ暖かい視線を向けている。
1996年のベルリンCOP2から政策形成過程に携わってきた明日香先生ならではの深い洞察で、グリーンニューディールの現状と課題を分かりやすく描写した良書。エネルギーに関するいい加減な報道を目にしてテレビを叩き壊しそうになったとか、冷静の中に熱さを持った人のようだ。