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城山文庫の書棚から084『全体主義の克服』マルクス・ガブリエル、中島隆博 集英社新書 2020

8月28日の夜に開催するガブリエル氏シンポジウム、後半のパネルに登壇される中島教授との対談。現在起きている問題の核心にあるのが、公的な領域と私的な領域の区別の破壊。その背景にある新たな形の全体主義に現代社会は脅かされているのではという問題提起。

「上からの力」によって民主主義が攻撃されている訳ではない。それは「市民的服従」によるものであり、新たな全体主義の本質だという。GAFAをはじめとするグローバル・テック企業の科学と技術が全体主義の台頭を加速する。我々は国家とは別の物語を作らなければならない。

本書の対談が行われたのは世界中がコロナ禍にあった2020年。パンデミックの語源はギリシア語でパン(全ての)・デミック(民衆)。正に全民衆が当事者として巻き込まれたウイルスのパンデミック後に必要なのは、形而上学的なパン・デミックだという。

中島教授の専門は東洋哲学。ガブリエル氏は学生時代に中国哲学も研究していて、その後のシェリング研究に影響を与えた。ガブリエル氏が提唱する新実在論がどこか東洋的で、仏教の無や無限に通じるものがあると感じるのは、そうしたバックグランドからも腑に落ちるものがある。