城山文庫の書棚から070『災害対応ガバナンス』菅野拓 ナカニシヤ出版 2021
今年元旦に能登半島を襲った震度7の巨大地震。復旧作業の真っ只中だが、避難所の映像が映し出されるたびに心が痛む。1月の極寒で体育館に避難した人の中に被害者が出た。なぜ日本の避難所はいつまでたっても酷い環境なのか。なぜ過去の経験から学ばないのか。
地震、津波、台風、豪雨。毎年のように自然災害に見舞われる災害大国ニッポン。それなのになぜ、災害対応はいつも混乱するのか。我が国の災害対応に関する法制度の変遷をたどり、混乱の原因を構造的に明らかにする気鋭の防災専門家による一般読者向けの書。
行政が主体となってハード中心に行う災害対応から、NPOなど市民主体でソフトも重視して行う災害対応へ。1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災・津波など経験を重ねる過程で我が国の災害対応は確実に進化している。ただし劣悪な環境の避難所など改善すべき点もまだまだ多い。
改善のポイントは「災害対応のマルチセクター化」と「社会保障のフェーズフリー化」だと著者の菅野氏は指摘する。特に後者の提案は重要だ。フェーズフリーとは平時と非常時の垣根を取り払い、常に災害に備えること。東日本大震災から13年、能登半島でまた大地震が起きた今、改めて読み直したい。被災した方々に心からお見舞い申し上げます。