城山文庫の書棚から092『タクティカル・アーバニズム・ガイド』M.ライドン+A.ガルシア晶文社 2023
アメリカ発祥・最新の都市デザイン理論、タクティカル・アーバニズム。本書で初めて耳にした。「短期的かつ低コストで規模を変更できる介入と政策を用いて、近隣のまちづくりと活性化を行う手法」と定義されている。市民からの小さなアクションから始まるのがポイントだ。
紹介されている事例に共通するのが、現状のまちの不満に対して小さな抵抗を試み、そこから波紋を広げて公的承認を勝ち取っていること。初めからルールに従うのでなく、制度の不備を突いて近隣の共感を生み出し結果的に行政を動かすというゲリラ的な手法だ。
ポートランドで生まれたインターセクション・リペアは、交差点に掲示板やアートなどで細工を施し車の減速を促す仕掛けだ。リーダーは近隣住民を巻き込み、最終的に行政当局から許可を勝ち取った。こうした成功体験が全米に広がっている。
オランダ語で「生活の庭」を意味するボンエルフも、行政や専門家ではなく市民のアイデアから生まれた。歩行者優先のまちづくりは今や時代の潮流である。市民主導のボトムアップの取組みが世界中に広がったタクティカル・アーバニズムの好例だ。