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城山文庫の書棚から058『森林列島再生論』塩地博文他 日経BP社 2022

林業を産業として再生することが我が国の喫緊の課題となっている。建築・金融・エネルギーそして流通の各分野の指揮者が自らの専門領域について論じる。ナビゲーターの文月氏がそれらを繋ぎ、林業・建築・バイオマスを連携した「森林連結経営」を模索する。

タイトルの通り、日本は国土の7割を森林が占める森林列島だ。ところがその貴重な天然資源を活かし切れていない。輸入材に押され林業は市場競争力を失い、高齢化に伴い担い手不足が深刻化している。高度成長期に植林した杉材活用をようやく国交省と林野庁が推進し始めた。

本書では再造林、森林直販などがキーワードとなり垂直型協同組合による林業経営が提言されている。ITを活用した資源管理等も有効だろう。ロシアのウクライナ侵攻で中国への木材輸出需要が急増したように、市場の動向に柔軟に対応できる体制づくりも求められている。

かねてから提案しているように、林業→製材業(木造建築)→再生可能エネルギー(木質バイオマス)という地産地消のサイクルを地域内で確立することが森林列島の再生に繋がる。残された時間はわずかだ。官民の知恵を集結することが不可欠だ。