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城山文庫の書棚から045『イシューからはじめよ』安宅和人 英治出版 2010
“イシュー”とは何か。「どんな答えを出すか」以前/以上に重要なのが「何に答えを出すべきなのか」。「課題解決」に対する「問題発見」のことと理解した。知的生産活動の目的地となるのがイシューなのだ。
「バリューの本質」=「イシュー度」×「解の質」と安宅さんはマトリクスを描いて解説する。両軸の値が高い時にはじめてバリューのある仕事が可能となる。イシュー度の低い問題から取り組むアプローチを「犬の道」と呼び、踏み込んではならないと戒める。
解の質を高めるのに不可欠なのがイシュー分析。記憶装置を持たず、神経同士の繋がりが理解や記憶をもたらす脳の情報処理の特徴から分析の本質を紐解くくだりは、脳神経科学のPh.Dを持つ安宅さんならではだ。コンピュータとは異なる人間の知覚の特徴を知れば、AIもChat GPTも恐れるに足りないだろう。
10年以上前に書かれた本なのに、今読んでも少しも古くない。「メッセージは常に本質的でシンプルであるべき」という安宅さんの主張に同意する。どれだけ時間と手間をかけても、相手に真意が伝わらなけば意味がない。イシューから始め、ミニマリズムを極める。すべての仕事に共通する肝だ。