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城山文庫の書棚から088『建築と経営のあいだ』高橋寿太郎学芸出版社 2019

創造系不動産の高橋寿太郎さん第二弾。副題に「設計事務所の経営戦略をデザインする」とあるが、発注者のプロジェクトマネジメントにも通じる内容だ。建築を作ることが事業の一環である以上、そこには必然的に経営が関わる。当たり前の話だ。
これまでの施設計画で定石だった「与条件から建築設計を始める」という実務的なプロセスが当てはまらないケースが増えているという。社会や技術の変化が加速し、様々な業界ごとの「経営の定石」が確たるものでなくなっているからだ。VUCAの時代ならではの現象である。
設計事務所の経営の6ピースとして①設計スキル、②販路開拓、③経営理念、④会計知識、⑤人と組織そして⑥仕組み化を挙げている。どれも基本的に重要な要素だが経営理念と仕組み化は特に重要だと思う。
高橋氏は空き家ストックが急増する日本の住宅市場の特異性に着目する。中古住宅流通市場の確立したアメリカやそもそも長く大事に住む欧州と比べ、新築志向の強い日本には中古住宅の価値を的確に判断できる目利きもマーケットも不在だ。そこにビジネスチャンスを感じる。