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城山文庫の書棚から080『ガザとは何か パレスチナを知るための緊急講義』岡真理 大和書房 2023

昨年10月7日に突然始まったわけではない。我々日本人も惨状から目を背けてはならない。100日を越えたイスラエル軍による今回のガザ侵攻はあまりにも度が過ぎている。3万人以上が殺され、その多くは民間人の子どもたちだ。岡真理さんが10月20日と23日に行った緊急講義を緊急出版。

1948年にパレスチナ人を襲った民族浄化の暴力、ナクバ。今回のガザ侵攻はその再来、いや規模で言えばそれ以上だ。背景には欧米列強の煮え切らない中東政策と国連によるパレスチナ分割がある。国際社会の無関心が今もパレスチナ人の命を奪っている。

ユダヤ人の国家建設の希望を尊重することと、パレスチナにユダヤ人国家をつくることの是非は分けて考える必要がある。ホロコーストという戦争犯罪の代償をパレスチナ人に支払わせることは政治的に不正だ。世界にはイスラエルの蛮行を嘆くユダヤ人も大勢いる。

ガザを知ることはイスラエルを知ることに他ならない。彼の国がやっていることは南アフリカで吹き荒れたアパルトヘイトと同じかそれ以上に非道い。「言葉とヒューマニティが私たちの武器だ」と岡真理さんは言う。人間の側に、踏みとどまりたい。