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城山文庫の書棚から079『誰も断らない こちら神奈川県座間市生活援護課』篠原匡 朝日新聞出版 2022
「面白い」という感覚の裏側にあるのは驚きであり、驚きの根源にあるのは「知らないこと」だと篠原さんは言う。さらに言うと「見えていなかったこと」の中に何かが始まる萌芽があるとも。本書はまさにそんな本だ。
座間市役所生活援護課の職員たちの取組みを取材したルポルタージュ。民間出身で熱血漢の課長を軸に、周りでサポートするNPOやサービス会社による「チーム座間」の活動も紹介。生活援護を受ける市民にもフォーカスして、普段目に見えない社会の様相を浮かび上がらせる。
生活困窮者自立支援制度と生活保護は「不幸な双子の制度」と揶揄されるように、並立することで分断を生み出しているという。福祉の世界には専門用語も多く、素人には取っ付きにくい。本書で篠原さんはそうした制度の背景も含め、分かりやすく噛み砕いて解説してくれている。
入国管理局職員の移民に対する非道い仕打ちや生活保護の申請をよしとしない一部役所の「水際作戦」の話を聞くと、どうしても役人に対して冷酷で杓子定規というネガティヴな印象を抱いてしまうが、公務員も人の子だ。本書に登場するような善良な職員が大部分だと信じたい。