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野菜不足な人がボードゲーム『サラダマスター』を作った理由

バンソウから新作ボードゲーム『サラダマスター』を出版します。4月下旬に一般発売、ゲームマーケット2021春で先行&特別価格で販売予定です。詳細はプレスリリースをぜひご覧ください。

『サラダマスター』は"野菜不足な現代人のためのボードゲーム"としてリリースしましたが、誕生のおおもとにあったのは個人的な健康面の課題でした。

本noteでは『サラダマスター』というアイデアがどういうふうに誕生し、ゲームになっていったかというお話と、そのアイデアを超えて、遊んでくれた人に起きた面白い現象について書いてみます。

30才目前。身体の衰え

『サラダマスター』のアイデアが生まれたきっかけは、あんまりカッコいい話ではないんですが、30才を目前にして身体の衰えを感じ始めたことでした。

なんだか集中力が続かなかったり、食べすぎた後の体重がなかなか戻らなかったり、夜更かしをすると次の日に明確に響いたり。まだまだ「若い」と言われることも多くて、名実ともに若輩者ですが、しかし数年前の自分自身と比較すると身体が下り坂であることを感じずにはいられません。

そこで僕が選んだアプローチが「野菜の摂取量を増やす」ことでした。ランニングをするとか、糖質制限するのが真っ当な方法なのだと思いますが、しかし多分続かない。なので、ゆるく実行できて効果がありそうで、リスクも少なめな目標を設定しました。あと、肉などばかり食べていたら、前に一緒に仕事をした先輩が呪文のように「野菜を食え、パフォーマンスが変わる」と言って、野菜たっぷりの弁当を奢ってくれたのを思い出したからかもしれません。

ダイエットする時は体重を毎日計測するのがいいと言われますが、つまり目標を意識する習慣をもつべきだということではないでしょうか。僕の場合は「スーパーに行ったら野菜を必ず買う」「外食する時は野菜が含まれるメニューを食べる」というルールを設けて、野菜の摂取量が増えるようにしました。

野菜をデータで見るという視点

そういう野菜意識生活をなんとなく始めて少し経ったころ。それが『サラダマスター』というゲームを作る発想に転じたきっかけは、樋口直哉さんのツイートでした。

むろん、僕はレシピを書く人ではないのでこの本自体は購入しなかったんですが、ここからデータで野菜を見てみるのも面白いかもしれないなというアイデアをいただき、『サラダマスター』製作時に大いに役立ってくれた日本食品標準成分表に出会ったのでした。

日本食品標準成分表は、文部科学省が発表している、各種食品の成分が網羅されたデータベースです。誰でも無料で見られます。

穀物、野菜、肉、加工食品など、あらゆる食品の100gあたりのカロリー、水分量、炭水化物、タンパク質、脂質、各種ビタミンといった成分の量が掲載されています。通常は栄養士さんや、飲食店の方が料理のカロリーや成分表示をするのに活用されているものだと思います。

僕はダウンロードしたデータを漫然と眺めてみたのですが、思ったよりも面白いものでした。見た目はこんな感じです。

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※日本食品標準成分表2020年版(八訂)より引用

「米ってすごいカロリー高いんだな」とか「食物繊維って炭水化物なんだ」とか「レタスって意外と食物繊維少ないな」などいろんな発見がありました。単なる野菜や栄養の知識不足とも言えます。

でもそれまでは「野菜を食べねば」というやや義務感っぽい感じで野菜を摂取していたところ、日本食品標準成分表に触れて、「データで比較する」という視点を得て野菜を選ぶのがちょっとゲームっぽく、楽しくなりました。

カードゲームで、どのカードを使用すればよりアドバンテージを得られるか考える感じですね。今日はタンパク質をあまり摂取してないから、せめて鍋に入れる水菜を豆苗にしとこう、とか考えるようになりました。それが実際どれほどの効果があるのかは知りませんが、気分はいいです。

そういう感覚から、これはもしかしたら楽しいゲームができるかもな、と思いました。そうして完成したのが『サラダマスター』です。最新の日本食品標準成分表のデータを引用した、面白くも真面目なゲームです。

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『サラダマスター』のルールはざっくり言うと、「もっともカロリーが多いもの」などのお題に合わせて、手札からそれに合うと思った野菜のカードを出していく…それだけです。

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ただし、注意が必要なのは自分の手札の成分の数値は自分からは見えず、他プレイヤーには見えるようになっているところ。他の人の手札や自分の過去の食生活からの勘を駆使して出すカードを考える必要があります(もちろん全ての数値を覚えたら無敵ですが、多分無理です)。

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遊んでみると、僕が日本食品標準成分表を見て感じた野菜のデータの面白さをご理解いただけると思います。

↓こういうシーンが発生しまくります

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「野菜不足」な現代人のためのボードゲーム

『サラダマスター』をこうしてリリースにこぎつけるまでには、何人もの人にテストプレイにご協力いただきました。すると、遊んでくれた人はみな、上記のデータを比べる面白さを超えて、想像していなかった嬉しい反応をしてくれました。

例えば、プレイ中になぜか自分の好きな野菜についての話が始まったり、プレイ後にはカードを並べて成分を比べてみんなで眺めてみたくなったり、その後に行った飲食店で自分の手札にあった野菜を注文しちゃったというお話を聞いたり。

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突然ですが、何かに興味をもったり学ぶための1番の近道は、それに対するアウトプットをすることだと思います。だからスポーツでは試合があるし、学校の勉強ではテストがあるのかなと。

『サラダマスター』は別に試合やテストって感じに真剣にやるゲームでは全然ないんですが、ゲーム体験に伴って主体的に思考することは、プレイした人にアウトプットするのと近い影響をもたらすようです。なので、遊んだ人はどうやら、面白いと思ってくださるだけでなく、なんとなく野菜に興味をもってしまうようでした。『サラダマスター』がマジなデータを使用しているので現実とリンクさせやすいというのあるかもしれません。

だからキャッチコピーの「野菜不足な現代人のためのボードゲーム」の"野菜不足"には、野菜への"興味"不足、野菜の"知識"不足という意味もこめています。これらの不足が解消されれば、身体的な意味での野菜不足を解消し、健康への第一歩になるんじゃないかなと。『サラダマスター』はボードゲームであり、そんな不思議なアプローチでもあります。

これは実際に形にしてみて、遊んでもらわないと分からなかったことだったと思います。当初は「米と玄米ってこっちの方がカロリー多いんだ〜」みたいな、その場限りの面白さだけを想定していたゲームでしたが、『サラダマスター』はそんなデザイナーの想像を超えた遊びになったのでした。

というわけでそんな『サラダマスター』、絶賛予約受付中です。一度遊んでおいて損はないゲームかと思います。野菜を食べてほしい、あの人へのプレゼントにもおすすめです。

4月10日と11日に開催するゲームマーケット2021春にお越しになる方は、会場限定価格でお求めいただけます。特典もつきますので、ぜひご予約を!


ナイスプレー!