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世の中にはピンポンという音が溢れている

駅前にある、かつ丼チェーンの店前でのこと。

私は、かつ丼屋から少しだけ離れたところに立って人待ちをしていた。

そこに立ち止まって電話をしているおばちゃんがいた。

おばちゃんの立つ位置は、かつ丼屋の自動ドアのセンサーが反応してしまう絶妙な位置だったため、時折自動ドアが開いては閉じを繰り返していた。

一方でおばちゃんは電話の向こうの人にまあまあ大きな声で必死に何かをお願いしており、自動ドアのセンサー反応してしまっていることに気づいていなかった。

いや、実はこのおばちゃん、気づいていたはずだ。

正確には、自動ドアのセンサーに反応していることには気づいていないが認識はしていた。

なぜそう思ったか。
ここからは私の推理をお聞きいただこう。

おばちゃんは電話の向こうの人に、「そろそろ宅配の荷物が届くはずだから受け取っておいてね」とお願いをしていた。

続けて「あれ?“ピンポン”って聞こえたけど届いたんじゃない?届いてない?ほら、“ピンポン”って聞こえるじゃない!」と必死に伝えていた。

きっと電話ごしにインターホンの“ピンポン”の音が聞こえた気がしたのだろう。

しかし冷静にその様子を眺めていた私は気づいていた。

「ピンポンって聞こえるじゃない!」と何度か言うタイミングの前には必ず、センサーに反応した自動ドアが開き、入店の“ピンポン”が鳴っていることを。

世の中にはピンポンという音が溢れている。

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