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きみのおめめ はじめに

2年ぶりにランチへ出た。
チャイムと同時に蟹クリームパスタを目指す。添えてあるカニの爪を指先で持って、白い身を食べた。しっとりと絡むタリアテッレ。くるくる回して皿の底に溜まった赤いトマトソースを乗せる。オリーブオイルが艶やかに光る。

オフィスへと帰る横断歩道、頭上に降る音に合わせて白線を踏む。
ぴぽ、ぴぽ。
かつ、かつ。
間の抜けた音と、へたくそなヒール音。
ふんわりした長袖の生地が風に揺れて、肌を撫でる。そこだけひんやりして、秋をおもう。

夏が消えていた。
あまりにも慌ただしくて、手のひらから記憶がすり抜けている気がした。
夏のきみはなにを見ていた?
夏のわたしはなにを見ていた?
書くならゆっくり時間を取ってと思っていたけど、その間にぽろぽろこぼれ落ちている。気づいたときには溶けて消えてさようなら。
かなしくてさみしい。

きみの見ていたものと、わたしの見ているものを、もっと言葉で残したいと思う。
みじかくなると思うけど、目線の先をのこしていきます。

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にわのあさ
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