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その緑は、深碧となる。

二日目は生憎の雨だった。

「小雨が降っていても行ける場所はありますか」

昨日の夕食も、この青年におすすめのおばんざい屋を聞いた。
京都に生まれ、京都で就職したという若いホテルマン。
ううん、と地図を前に首をひねる。

あ、ここはどうでしょう。

思ったよりも遠い場所を指差していた。
天候が悪いことは前置きしたはずなのに、と顔が曇ったが、昨晩いただいた九条ネギの酢味噌和えは、彼を信頼するに十分だった。


ゴトンゴトンと電車に揺られ、終点で降りた。
彼のいう、瑠璃光院の庭園を眺め見るため山門をくぐる。
薄暗い書院から見る庭園は、遠目からでも輝いて見えた。
鮮やかな新緑の木々は、こぢんまりとした庭園を覆うように枝をもたげる。

しと。しと。しと。

その葉の先端から落ちる催花雨は、地面や石や木の根までふわりと覆う苔のじゅうたんを、艶やかに濡らす。

ああ。感嘆がもれる。

苔の緑は、雨で一層たゆたう土の匂いとともに、深碧となる。

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にわのあさ
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