
本と呼ぶには、過ぎるもの
古本屋での出合い。それは、読むための本と言うには美しすぎた。
「数学スナップ・ショット」 紀伊國屋書店
手帳サイズの本は、ハードカバー。
中彩度の緑みの青、sf16かd16あたりの色。
金色の字が表紙の上に沈み浮かんでいる。
裏からめくると、定価290円(地方定価300円)。
1957年に第一刷、第二刷、第三刷発行。
数式を可視化、図形を見て愉しむ。
小学生の頃の、算数や理科のワクワクを思い出させる本だ。数学は苦手だけれど、数学×美術が好きな人にとっては魅力的な一冊。
古い本は存在そのものが歴史のようだ。
印刷された字のかわいらしさ、今とは異なる送り仮名の発見、単価の違い。
ただの本と呼ぶには、歴史が現れすぎている。
表紙や中の図は、アートだ。
建物や曇り空をイメージする表紙は、静かで美しい。
幾何学図形をなぞるように見つめるとき、絵を見るのと何の変わりもないだろう。
数学の本と呼ぶには、アートの楽しさが溢れすぎている。
歴史であり、アートであり、数学である本。
宝物のように美しいこれは、本棚に並べるべき本ではないのかもしれない。
静かに、ゆっくりと体験していくのが相応しい本は、手元にあるだけでドキドキする。
そして、ヒリヒリします。ほこりっぽくて、首や手がかゆいです。
美しい本と呼ぶには、過酷すぎる。