アレクサンダー•ロバートソンに襲いかかった悲劇
アレクサンダー•ロバートソン。
名前がイカしてる。シティズンでなくともサッカーファンなら1度聞けば忘れられないほどインパクトのある名前。「なんでこんな名前の選手がシティ在籍なんだ!」そんな声がマージーサイドの赤いチームの方から聞こえてきそうなくらい。先に断っておくが、サイドバックではなく中盤が本職の選手だ。
今回はそんな彼に襲いかかった"悲劇"を紹介する。
選手紹介
生い立ち
2003年4月17日、父方のルーツの地🏴ダンディーにてペルー人の母親とオーストラリア人の父親マークの間に生まれた。4歳の時にオーストラリアへ移住し、12歳までの間を生まれ故郷から遠く離れたシドニー郊外マルブラで過ごした。2015年に帰英し今に至る。
プレースタイル
身長182cm。運動量豊富で気が利くMF。ドリブルで1枚、2枚剥がせるタイプ。右サイドに流れて放たれる高精度のクロスも魅力的。
尊敬する選手はギュンドアン(現バルセロナ)
クラブキャリア
ハコアシドニーシティイーストFC
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マンチェスターユナイテッド
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マンチェスターシティ
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ロスカウンティ(loan)
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マンチェスターシティ
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ポーツマスFC
彼とサッカーとの関係は生まれた時から密接だった。というのも、彼の父マークは通算1キャップの元豪州代表選手、祖父のアレクサンダーも1970年代に豪州代表として活躍した名選手だった。余談だが、父マークがサッカルーズのユニフォームを纏って戦った唯一の代表戦は2001年第1回AFC/OFCチャレンジカップ決勝vs日本戦だった(気になる方はtransfermarktに当時の両チームスタメンが残っているので是非覗いてみてほしい)
豪州に移住後、ラグビーそして体操に触れる機会も得た。そしてロバートソンは父親が運営する小さなクラブでプレーした後、10歳でハコアシドニーシティイーストFCのアカデミーに入団。12歳になった2015年秋、家族は息子の夢を叶えるために帰英を決断。加入したのは同じ町のライバルMan Utdだった。それから色々あって(←2003年フィオレンティーナがセリエDからセリエBに飛び級昇格した時ぐらい複雑)2017年秋フリーでMan Cityに加入した。同年夏にCityのアカデミーディレクターに就任していたジェイソン•ウィルコックス(現サウサンプトンフットボールダイレクター)による華麗なる口説きがあったことは想像に難くない。
Cityに加入してからのロバートソンは度重なる怪我に悩まされながらも順調に成長し、2020年には英紙ガーディアンのNext Generation BEST60にも選出された。
21/22シーズンこそローン先のロスカウンティで苦しんだものの、今季はローン先の英3部ポーツマスで安定した出場時間を得て、ブレイクの兆しを見せていた。
代表キャリア
(オーストラリアU-15代表)
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イングランドU-16代表
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イングランドU-17代表
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イングランドU-18代表
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2023年3月オーストラリアA代表
🏴🇵🇪🏴🇦🇺4カ国のユニフォームに袖を通す権利を持つロバートソン。イングランドのアンダーでは同学年でボーンマスの英雄ベリンガムと共にプレーした経験もある。当然のことながら争奪戦が勃発し、とりわけ母親の母国ペルーサッカー連盟採用部門責任者のパブロ•ボッシは熱心に一方的な片思いアプローチを続けてたという。しかし、ボッシのアプローチも虚しく23年3月親善試合vsエクアドル戦で念願のオーストラリアA代表デビューを果たした。
悲劇の代表落選
自分で"悲劇"というセンセーショナルな見出しにしておいて言うのもなんだけど、傍から中立的な目線で落選までに至る経緯を見れば"悲劇"でも何でもない。簡単な話、3月の初招集以降、9月10月11月のスカッドリストには1度もロバートソンの名前が載ったことがない。単純明快、保守的な監督がチームの熟練度を優先すれば1月のアジアカップに呼ばれることは当然ないはずだ。
しかし、今季のポーツマスでの躍進を知っている自分にとって今回の落選は"悲劇"そのものだった。
代表監督の言葉から紐解く
23年3月初招集時のロバートソン選出理由について
『才能があるという理由だけでロバートソンを選んだわけではない。彼はMan Cityで非常に上手くやっている。PL2でプレーしているが、トップチームに混じって毎日トレーニングを積んでいる。彼は8番の選手としてプレーしており、デブライネと非常に似ている。彼が毎週トップチームに混じって練習しているのには理由がある。それはグアルディオラが彼を高く評価し、クオリティの高さを認めているからだ。』
23年9月ロバートソン落選について
『アレックスはポーツマスにいる。彼はどんどん成長してる。しかし現時点ではそのポジションにはデニス•ジェンロー(トゥールーズ)とライリー•マッグリーがいて私はこの2人で選手層の厚みをカバー出来ていると感じている。』
23年12月アジアカップのメンバーからロバートソンとCircati(パルマ)が外れたことについて
『正直なところ、(ロバートソン、Circatiがいなくても)我々の今のスカッドには十分な厚みがある。僅か数分の満足出来ない途中出場の為だけにわざわざカタールまで飛んでトーナメントを戦うこととクラブに残って満足のいく8試合を戦い彼ら自身が成長すること。20歳の若者にとっていいのはどちらだろうか?』
グラハム•アーノルド代表監督の言葉が答えだ。仮に選ばれたとしても出場機会が限定され、ヒートマップがベンチ周辺だけ真っ赤になるくらいならクラブに残って戦った方が将来のためになるのは明確だ。4月にパリオリンピック予選を兼ねたAFC U-23アジアカップの開催が迫る中、代表監督はロバートソンらをU-23の中心メンバーとして捉えており、これはイェンギ(25歳,11月に初招集)が代表キャップが浅いながらもアジアカップのメンバーに選ばれたことからも合点がいく。
シルヴェラだけ別枠らしいけど。笑
アーノルド代表監督のこの上ない選手ファーストな配慮に気づかず、センセーショナルなまでに"悲劇の代表落選"と銘打った自分が恥ずかしい思いをしただけだった。
が!しかし!だ!この話には続きがあった
ロバートソンの本心や如何に
FIFAの定めるルールによると、国際親善試合でフル代表デビューした後でも代表チームの鞍替えは可能である。つまり、エクアドル&アルゼンチンとの国際親善試合にしか出場していないロバートソンにも鞍替えの権利はまだ残っている。
最近、鞍替えした有名選手の例を挙げるとすると真っ先に元Man Cityユースで現ノリッジのGKアンガス•ガンが思い浮かぶのは全人類共通だろう。全世界に衝撃を与えたニュースだった。アンガス•ガンはU-16からU-21に至るまで全ての時間をイングランド代表として過ごしており、とりわけU-21では現イングランドA代表監督ギャレス•サウスゲートの元でプレーした。そして、遂に2017年11月負傷したジャック•バトランドに代わって国際親善試合vsブラジル戦にてA代表初招集を受けた。しかし、それ以降というもののイングランド代表とは縁のない時間が続き、23年3月、アンガス•ガンは元スコットランド代表GKの父ブライアンの後を追うようにEURO2024予選vsキプロス戦でスコットランド代表デビューを果たした。あのハムデンパークでFlower of Scotlandを唱うアンガス•ガンの姿に心打たれたのは自分だけじゃないはず。3月のデビュー後もアンガス•ガンは継続して代表戦フル出場を果たしており代表守護神の座を完全に掴んだと言っていい。
話が脱線したが、ロバートソンの話に戻る。アジアカップのメンバー漏れからしばらくたって事件が起こった。なんとロバートソンが過去にInstagramに投稿していたオーストラリア代表関連の写真を全て削除したのだ。ちなみにイングランド代表時代の写真は削除されていない。この行動はオーストラリア代表サポーターの間ですぐに話題になり、1月6日バーレーン戦の前日会見でアーノルド代表監督が弁明する羽目になった。
以下、その時のアーノルド監督のコメントだ。
『ソーシャルメディアなんて見ない方がいい。おーん、2日前彼から電話があった。そこで彼は私にオーストラリア代表のためにプレーしていると伝えてきた。』
オーストラリア代表サポーターは、さぞかし喜び安心したことだろう。
父マークが息子に自身の父と同じアレクサンダーの名前をつけた理由は不明だが、勝手に妄想するに、父アレクサンダーのような偉大なオーストラリア代表選手になることを願って名付けたに違いない(妄想なのに断定口調)。
デビュー戦後、父と祖父に挟まれてインタビューに答える19歳のロバートソンの表情からはプレッシャーに耐えながらも生涯オーストラリア代表として戦っていく強い覚悟が窺える。
私個人的にもオーストラリア代表以外のユニフォームを着てピッチに立つロバートソンの姿は想像出来ない。Circatiと共にオーストラリア代表を牽引する存在になることを期待している。
神様の悪戯
幕開け
2024年。それはロバートソンにとってキャリアで最も濃密で飛躍的な1年になるはずだった。
しかし、そんな彼に神様は悪戯をした。
チェルトナム戦に向けていつものようにトレーニングをこなしていたロバートソンだったが、そのトレーニング中にハムストリングを負傷。グレード等怪我の詳細は不明だが、1月16日にはSNSで本人が手術成功を報告しており、今季中の復帰は絶望的と伝えられている。
前にも述べた通りロバートソンは以前から怪我がちな選手だった。Man Cityに来てからも加入初年度にハムストリング負傷で7ヶ月離脱するなど、足首や股関節の怪我に幾度となく悩まされていた。
ロバートソンとジェズスがお互いの負傷歴や離脱期間中の辛さ、メンタルについて語ってる動画があるので見てみて欲しい。ジェズスを前に落ち着きを見せる14歳のロバートソン少年であった。
『怪我人が出た時、我々は常に、何が上手くいかなかったのか理由を考える。木曜日の彼はとても状態が良さそうだった。怪我のリスク回避の為に(クリスマスから新年にかけての)10日間4試合での出場時間は以前よりもはるかに短く、我々は細心の注意を払ってきたつもりだった。』
こう語るのはポーツマスを率いるジョン•モウシーニョ監督だ。以前からモウシーニョ監督は今季のロバートソンをチームベストプレイヤーの1人と称しており、彼の離脱がリーグ首位に立つポーツマスにとって大きな痛手になることは言うまでもない。実際、ロバートソン離脱後の2試合はボトムハーフのチェルトナム、レイトンオリエント相手に1-2,0-3と昨年3月以来およそ10ヶ月ぶりに痛恨の2連敗を喫した。
もちろん痛手を負ったのはポーツマスだけではなく、オーストラリアU-23代表も同じだ。4月に開催されるU-23アジアカップにロバートソンは間に合わないと見込まれている。
焦り
20/21シーズン、Man City U-23はレジェンド エンツォ•マレスカ(現レスター監督)の下、2位以下に圧倒的大差をつけてクラブ史上初のプレミアリーグ2優勝を果たした。
スタメンにリアム•デラップ(現ハルシティ)、コール•パーマー(現チェルシー,イングランド代表)、フェリックス•ヌメチャ(現BVB,ドイツ代表)、ジェームス•マカティ(現シェフィールドUtd)、トミー•ドイル(現ウォルヴァーハンプトン)、カラム•ドイル(現レスター)らが名を連ね、ベンチからロバートソン、ベルナベ(現パルマ)、エドジー(現サウサンプトン)が出てくる超超超高火力スカッドだ。2024年現在、ビッグクラブで活躍する元同僚もぼちぼち出始め、ロバートソンの中にも少なからず焦りはあるかもしれない。
そんな超豪華スカッドの中でも特に自分はベルナベとロバートソンの姿がどこか重なるように感じている。
ベルナベは皆さんご存知の通りラ•マシア時代にエリック•ガルシアやファティ、久保建英と共にプレーしたカタルーニャの逸材だ。その後2018年夏にMan Cityに加わり数試合トップチームの試合にも出場するも、トップチーム定着までには至らず2021年夏に当時Man City U-23監督だったエンツォ•マレスカと共にパルマへ移籍した。
予期せぬ悲劇がベルナベを襲ったのはパルマ入団に際してメディカルチェックを受けた時だった。今すぐに手術が必要な心臓の問題が見つかった。8月上旬にメスを入れ、ベルナベは当時の思いをInstagramに綴っている。
6ヶ月に及ぶ懸命なリハビリを経て、翌年22年2月5日ベネヴェント戦でベルナベはようやくパルマの選手としてデビューを果たした。
ちなみにベルナベがデビューした時、ベンチにマレスカ(11月に成績不振で解任)の姿は無く、代わりに座っていたのはフィオレンティーナのレジェンド監督ジュゼッペ•イアキーニだった。
復帰してからのベルナベは"流石"の一言。今季は元アビスパ福岡監督ファビオ•ペッキアの下セリエB首位を独走するチームで背番号10を背負い、心身共に充実した日々を過ごしている。
ロバートソンの手術後のInstagramにいいねを押してる所から、両者の関係性だったり自身の経験を踏まえてのロバートソンへのエールだったりが垣間見えてファンとしては心温まる瞬間だったりする。
いつかこの2人がピッチで対戦する日が来れば、その日は祝日になって然るべきだ。
結び
最後に、ロバートソンを語る上で絶対に忘れてはならない選手が1人いる。シティU-18アカデミー時代の元同僚ジェレミー•ウィステンだ。ウィステンはロバートソンの2つ歳下だったが彼ら2人は兄弟のように仲が良かった。
しかし、ウィステンは2018年に膝に重傷を負いキャリアが暗転する。2019年12月に契約満了に伴いMan Cityの組織から完全に放出され、以後怪我の影響からかトライアウトを重ねるも他のクラブとは契約出来ず、無所属のまま月日が過ぎた。サッカーが当たり前にあったウィステンにとってそれはあまりにも辛い時間で耐えられず次第に心を蝕まれていった。その間、元Man Cityのコーチが個人的にウィステンをトレーニングに誘うなどして状態改善を図っが、周囲の友人達の努力も虚しく、2020年10月24日ウィステンはこの世を去った。
生前とりわけ仲の良かったロバートソンとドーラン(元Man City Academy,現ブラックバーン)らは今でも定期的にウィステンのために皆で集まっているという。
11月2日FAユース杯決勝チェルシー戦勝利後ロバートソンは次のように語っている。
『ジェレミーと僕は本当に親しい友人だったので、本当に辛い出来事だよ。これから(キャリアの中で)やろうと思っていることは全て彼のためなんだ。知らせを聞いた時、僕は文字通りベッドの上に横たわっていた、打ちのめされたんだ。何が起こったのか本当のことは知ってるけど、これは秘密にしておく。
自分の頭とメンタルを正しく保とうと意識してる。気を引き締めて、サッカーに集中しなければならないんだ。チームとしてチェルシー戦ではただ彼の誇りのために戦おうと決めていた。彼を偲んで勝利を届けられてよかったよ。彼はチーム全員と仲が良かったので、試合に勝利した後でもみんな複雑な心情だった。彼はクラブ全員から愛される存在だったんだ。』
弱冠20歳ながら数々の悲劇に曝され、乗り越えてきたアレクサンダー•ロバートソン。
この若者にはこの先どんな未来が待ち受けているのだろうか。父祖父からのプレッシャーも人一倍に感じている彼が今後数年日本代表を脅かす選手になるかもしれない。
誤解が無ければMan Cityとの契約は2025年夏に満了を迎えるため、現実的に考えると24年夏or冬に他クラブへ完全移籍することが予想されるが、かなり怪我がちなことを考慮すると彼に移籍金を払ってまで獲得に乗り出すクラブがあるかは疑問符がつく。
しかし、彼の才能に疑いの余地はない。ウィステンのために努力を続けるロバートソンが大舞台で輝くその日のために応援し続けようと私は心に決めた。
あとがき
初のnote投稿とゆーことで使い勝手も分からずただひたすら文字を打ち殴っただけで終わってしまったのはお許しください。
インスタの投稿は埋め込めるのにTwitterの投稿は埋め込めないというバグが起こってます。
これイーロンのせいでしょ(多分自分の端末のせい)
まぁこんなことイーロンに頼んでも仕方ない。今、全世界の人々がイーロンに求めてるのはジョーイバートンの垢凍結です。間違いない。監督業辞めてから人格が元に戻るどころか、より厄介で害悪になっちまったよ。
投稿ペースについては全くの未定です。まぁネイサンジョーンズが次の職見つけるまでにはもう1本何か考えておきます。
ネタとしてはMan Cityのコーチ陣について何か書いてみたいかもです。ペップ(監督)-チキ(ダイレクター)-ブエナベントゥーラのトリオは盤石ですが、コーチに限って注目するとここ数年でアルテタが抜け、ブライアンキッドが抜け、リージョが抜け、マレスカが抜け、ボレルが抜け。。と意外にもポツポツ重要人物が抜けてるんですよね。
今季からペップの隣に座ってるのはリージョとその付き人イニゴドミンゲスですが、このドミンゲスがミステリー過ぎて情報が全く出てこないんです。昨季いたボレルとマレスカは選手との距離も近く頻繁にコミュニケーションをとる姿が見られましたが、ドミンゲスに関してはマジ謎です。
レスターサポさんマレスカに優しくしてやって下さいね。もし困ったら後任はイアキーニが良いと思いますよ。
そんなわけで、途中で放り出さず最後まで読んで下さった皆様ありがとうございました。
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