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また来た

今朝、ルリナから連絡があって「今日も甚九郎先生の家に行ってもいいですか?」と尋ねられた。

もともとの予定では「毎週土曜日にルリナに勉強を教える」ということになっていたはずである。
つまり、土曜日以外には教える約束をしていなかったはず…。

でも、よく考えてみると、「もし、勉強していて何か疑問点が出てきたら、いつでも質問してきていいよ。週末は基本的には自分の仕事を入れないから、何かあったら直接来てもかまわないよ…」と言ってしまっていたのは私のほうだったことを思い出した。
その言葉をルリナは真に受けたのだろう。
それに、昨日の 学習初日 で私の家で過ごすことがすっかり楽しくなってしまったのかもしれない。
いずれにしても、悪いことではない。
むしろ、私との学習を前向きに捉えてくれたということだから、とても喜ばしいことなのだろうと思う。

念のため、母親のマナミと連絡をとると、マナミは恐縮していた。
「すみませんねぇ、
 ルリナがすっかりやる気になってしまって、
 連日そちらにお邪魔するのは…、ご迷惑ですよね?」

いやいや、私はべつに迷惑ではない。
まあ、勉強を頑張ってくれるのであれば、週末であればいつでもルリナが来てくれてもかまわないけれども…と、答えてやった。


そして、今日もルリナは私の家に来た。

友達がいない子のあるあるなのだろうけど、珍しく誰かと親しくなったりすると、ちょうど良い距離感が掴めなくて接近しすぎてしまう傾向があるのかもしれない。
じつは、友達が少ない私自身もそうなのだけど、人間関係はすべて「とことん親しい」か、「まったく親しくない」かのどちらかなのだ。
つまり、人間関係も「0」か「100」かの 0-100思考 になりがちだ。
だからこそ、ルリナの気持ちも私には違和感なく理解できる気がした。

わが家のダイニングルームのテーブルで雑用する私の傍らで、ルリナは黙っておとなしく宿題の勉強を進めていた。
ときどき分からないことが出てくると、ルリナが私に声をかけてきて、私がその場で教えてやってクリアーにしていく。
一方的な私の説明が多かった土曜日の学習スタイルとはまた違う雰囲気で、ルリナの勉強は順調に進んでいった。

2人で過ごす静寂の空間。

日頃は誰かと一緒にいると落ち着かないはずの私が、なぜかとても安らかな気持ちになれている。
自分でも不思議だった。

ランチは、トマトサラダとパスタを速攻で私がつくってやった。
パスタは、ベーコンペペロンチーノ。
超シンプルな簡単料理だが、ルリナは今日も「おいしい!」と繰り返し言いながら、ペロッとたいらげてくれた。

ルリナはアレルギーもなければ、苦手な食べものもほとんどないという。
最近の若い子達は、昔の人間に比べてアレルギーや好き嫌いが多いそうだが、ルリナはそういうところもイマドキの子っぽくないのかもしれない。

勉強の後、またいろいろとおしゃべりをしていたら、すっかりまた外が暗くなってしまったので、今日も帰りはルリナをアパートまで送り届けた。

ルリナの母親のマナミは、やっぱりまだ仕事から帰っていなかった。


ルリナのアパートからの帰り道、近所のスーパーに寄った。

(今度またルリナが来たときには、どんなランチをつくってやろうかな…)
そんなことを考えている私がいた。