学習プラン
不登校のルリナに、これから毎週末の土曜日に私の家に来てもらって勉強を教えることになった私。
さっそく今週から始めるわけだけど、その前に母親のマナミにも参加してもらって今後の計画を話し合うことにした。
つまりは、オリエンテーションだ。
マナミとルリナに私の家に来てもらって、リビングでお茶を飲みながら3人で相談した。
その場で私は5つの方針を示した。
一週間に一日だけの勉強では、五教科の全ての勉強を網羅していくのは難しい。だから、英数国の3教科を中心に焦点を絞り、しかも将来的に社会に出たときに必要になる実学を中心に進めていく。
理科と社会については、一般常識として必要な事柄にポイントを絞って随時フレキシブルに進めていく。
毎回、一週間分の宿題を出すので、平日はその宿題をこなしてもらって、足りない勉強量を補う作戦にする。
もし、分からないことがあったら、24時間365日、いつでも電話かメールで私が質問を受け付ける。
Googleカレンダーでスケジュールを共有して、いつ何を勉強するかを決めて計画的に進めていく。
母親のマナミのほうは「そんなに本格的にやるんですか…」という感じで少し引いていたけれど、意外にも娘のルリナのほうはまるでイベントの計画でも立てるかのように嬉々として私の話に乗って来てくれた。
ついでに、目標達成の場合のご褒美プランも示してやったら、ルリナは嬉しそうにすっかりその気になった。
勉強は目標と楽しみを持って始めるのが一番だ。
大学時代に私はバイトで塾講師をしていたのだが、そこから私の名前が人づてに伝わったそうで、某議員先生のご子息の家庭教師をしていたこともある。
けれども、私はその後には他のビジネスの道に進んだため、教育には関わって来なかった。
だから、決して私は教育の専門家ではないが、それなりに変化球を使った学習指導ならできるのかもしれない。
「どうしてそこまでしてくれるんですか?」
母親のマナミがそんな質問を私にぶつけてきた。
マナミは何か誤解している。
これは私が「してあげている」わけではない。
忘れてもらってはいけないのではっきり言っておくが、私は社会的には「変人」であって「善人」ではないのである。
この社会では、多くの人間がすぐに対価を求めたがる。
そして、その対価とは「お金」や「名誉」に変換される。
しかし、私はお金については自分のビジネスだけで事足りているし、名誉については全く興味がない。
なので私が欲しいのは、1つだけだ。
他でもない、自己満足だ。
マナミにはそんなふうに正直に回答してやったのだが、それは納得してもらえたのかどうかはよく分からない。