#78.《医師主導治験》放射性治療薬64Cu-ATSM(STAR-64試験)について
私は2週間に一度の通院時、もしくはセカンドオピニオン時には必ずと言っていいほど、治験情報などを聞くようにしている。
今のところ有用な情報としては「ONC201」くらいであるものの、2年前くらいに国立がん研究センター主導で出ていた治験「放射性治療薬64Cu-ATSM(STAR-64試験)」についても気になっていたので、今日はそれを書きたいと思う。
放射性治療薬64Cu-ATSMを使った新しい治療法について、標準治療終了後に再発した悪性脳腫瘍の患者さんを対象とした第1相臨床試験が、国立がん研究センター中央病院で開始します(2018年7月)。
ただ冒頭で述べておくが、治験についてはあくまで「効果が本当にあるのかどうか、今から調べていくもの」であり過度な期待は禁物。また当初はメカニズムを解析し動物実験などを通じて、効果が期待できると思われるので治験を行うのだが、こういった治験は過去から出てきては無くなっていったものが多いことを理解しておかないといけない。
放射性治療薬 64Cu-ATSM(STAR-64試験)の概要と、そのメカニズムは以下の通り。
放射性治療薬 64Cu-ATSM(STAR-64試験)とは低酸素環境下で治療抵抗性を有する腫瘍細胞に高集積し、高い治療効果を発揮します。放射性核種64Cuは、既存の放射性治療薬(131Iや90Y)で放出されるベータ線の他に、がん細胞 DNA を効果的に損傷する特殊な電子(オージェ電子)を放出するため、がん細胞に対し高い殺傷効果が期待できます。 64Cu-ATSM 治療はこの新しいメカニズムで、低酸素化した治療抵抗性腫瘍を攻撃する治療法で、既存治療法で十分な効果が得られず再発した悪性脳腫瘍の治療において効果を発揮することが期待されます。
放射線治療にしろ、抗がん剤治療にしろ、治療開始当初については、ある程度の効果を発揮することが多いと思う。
ただ放射線の充てる線量は決まっているので、同じ箇所に何度も繰り返し照射することは当然できない。また抗がん剤においても長期間の使用によって治療抵抗性を有してくるので、効果がずっと継続していくわけではない。
そのいづれも問題も、上記にあるような「がん腫瘍内部の低酸素化」にあり、放射性治療薬 64Cu-ATSM(STAR-64試験)はその低酸素化した腫瘍に対し、既存の放射線とは違う種類の放射線(特殊な電子)を放出するので、がん腫瘍に対し高い殺傷効果が期待できるようだ。
注意として、この効果はマウス(ヒト遺伝子などの動物実験での効果立証されているだけで、今から行う治験は第I相臨床試験(薬の安全性と投与量を調べることを目的とする試験)、ファースト・イン・ヒューマン試験であることなので過度な期待は禁物であること。
ちなみにこの治験の主な参加条件としては
・悪性神経膠腫、中枢神経系原発悪性リンパ腫、悪性髄膜種、転移性脳腫瘍と診断されていること
・がんに対する標準的治療を実施済みの方
・標準的治療に治療抵抗性(治療効果が認められなかった)であること
・20歳以上75歳以下の方
・全身状態として日常生活が概ね可能の方
・各種臓器機能が保たれている方
※その他、満たさなければならない基準があるので、詳しくは下記の国立がん研究センター中央病院の治験問い合わせ担当へ相談した方が良いと思う。
治療方法について
治験に参加された場合、治験薬である「64Cu-ATSM」を使用。一定期間放射線治療用の特別な病室に入院して頂き、治験薬を週一回、計4回投与。治療終了後は定期的に通院。入院期間は患者さんのご状況により異なる。
実施施設について
・国立がん研究センター中央病院
・神奈川県立がんセンター
現時点でもこの治験は参加を募集している模様。ただ定員があるので、今後締め切ってしまう可能性は高い。治験参加要件は厳しいようだが、妻が参加できるかどうかを主治医へ問い合わせている(ただ妻は最近になって再発部位への放射線を充てているので、治験参加は難しいのではないかと思うが…)。
国立がん研究センターの治験担当の方からは下記「オンコロ」のWebサイトからアンケートに答えて参加要件に当てはまるのかどうか、同時に主治医に相談して参加可能かどうか確認して欲しいとのこと。
また治験自体を主治医に聞いた時、主治医は知らなかったということ。理由としては、この治験は「放射線科」の分野であるので、脳外科は情報がなかったとのことだ。
この治験にすでに参加している方がいれば情報が欲しいので教えて欲しい。
脳の病気といえども、治療に関することを脳外科のみが知っているわけではないんだなと思った。
幅広く治療に関する情報を集め、主治医へ問い合わせていこうと思う。