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電験3種から1種までの3年間の記録

はじめに

 この記事では、私が3年間で電験3種から2種、1種と挑戦してきた過程や実施した勉強法、感じたことについて共有したいと思います。

電験とは

 一般の方には馴染みのない資格かもしれませんが、電験とは「電気主任技術者試験」の略であり、電力業界では有名な国家資格です。簡単に説明すると、社会に存在する多くの電力設備を維持・管理する際の責任者を務めるために必要な資格です。昨今では、再生可能エネルギーの普及や情報化社会の発展によるデータセンターの拡大に伴い、多岐に至る分野で需要が増しています。一方その難易度の高さにも定評があり、1種ともなると合格率が数%の年もある難関資格でもあります。

なぜ電験取得に取り組んだか

 私は国立大学および大学院を卒業後、新卒で某大手インフラ会社に入社しました。大学時代からエネルギーを専攻していたこともあり、資格の存在は認知していましたが、取得しようとは当時1ミリも思っていませんでした。入社後、いろいろとやる気が湧いてくる時期(この期間だけ特有でありますよね)に自己研鑽で何に取り組もうか考え、電験に決めました。理由は大きく3つあります。1つ目は、就活時にお世話になった先輩が取得に励んでいたこと。2つ目は、電験1種が社内の昇進において優位になる資格の1つであったこと。3つ目は、同じ職場の方々が皆「電験は難しすぎて取れない」と嘆いていたことです。(なんとなく尊敬する先輩が取り組んでいて、昇進のためにはあって損しなくて、取れば周りに少しは尊敬されるかも!って感じです。)こうして入社1年目の冬から、私の電験への挑戦が始まります。

電験3種取得まで

勉強期間

2020年1月~2020年8月(約8ヶ月)

勉強法

・基礎習得期(2020年1月~2020年3月)
 電験3種の参考書を1冊読破しました。目的としては2つあり、1つ目は出題範囲を把握すること。もう1つは基礎知識の土台を固めることです。どんな問題がでるのか、どんな形で出題されるのか、忘れかけている学生時代の知識を呼び起こす、初めて触れる分野の概要を把握する、といったことをイメージして取り組みました。
・出題傾向把握期(2022年4月~2022年8月)
 5ヶ月間で、過去10年間の過去問を3周しました。1周目では、答え合わせの都度その問題の周辺知識についても理解することを意識しました。電験の特徴として、全く同じ問題が出ることは少ないですが、似たような問題や近い分野の問題が出題される傾向はかなり高い印象を受けました。やはり3回転すれば答えを覚えている問題ももちろんありますが、8割方の問題に正解することができるようになりました。

結果

1発で4科目合格


電験2種取得まで

勉強期間

1次試験:2020年4月~2020年8月(約5ヶ月)
2次試験:2020年9月~2020年11月(約2ヶ月)

勉強法

・1次試験勉強期(2020年4月~2020年8月)
 気づいた方もいるかもしれませんが、電験3種と並行して電験2種にも取り組みました。やったこととしては、過去10年間の問題を3回転だけです。電験3種よりも多少範囲が広がる分野もありますが、3種の過去問で通用する知識もありますし、逆に2種と似た問題が3種に出ることもあります。その点でみれば、どちらの過去問を解いてもどちらの勉強にもなっていたと思います。
・2次試験勉強期(2020年9月~2020年11月)
 やったことは毎度お馴染み、過去問10年分を3回転です。2次試験は記述式ということもあり、どんな勉強法がいいだろうかと考えましたが、2ヶ月という短い期限のなかで最も効果的な手段は過去問だと思い取り組みました。1次試験とは比べ物にならない程難易度が上がりましたが、学生時代から計算問題が得意だったこともプラスして、なんとか3回転目には理解できる問題が増えていきました。それでも、全く答えを見ずに解ける問題は少なかったです。

結果

1次試験:1発で4科目合格
2次試験:1発で合格


電験1種取得まで

勉強期間

1次試験:2021年4月~2021年8月
2次試験(1回目):2021年9月~2021年11月
2次試験(2回目):2022年5月~2022年11月

勉強法

・1次試験勉強期
 こちらもやはり、過去問10年分を3回転です。(3種2種に合格できたことから、既に過去問信者になっていました。)解いてみるとわかりますが、2種とさほど難易度は変わりません。しかし、何問かはかなりマニアックな質問があるため、「解ける問題を確実に解く」ことがより求められます。
・2次試験勉強期(1回目)
 2種の2次試験を受けたときに感じたことは、「過去問だけでは厳しい」ということです。これは、過去問がダメというわけではなく、その解説が圧倒的に少ないことに起因します。3種や2種の1次試験は、過去問の答えや解説が充実しているため、答え合わせに付随して周辺知識が身に付きました。一方、2次試験ともなると、公式回答のような非常に省略された簡素な回答しかありません。そのため、少しでも問題を捻られると、途端に対応できなくなってしまいます。運良く2種は合格できましたが、1種は確実に厳しいだろうなと感じていました。そこで、2次試験の計算問題と論説問題に特化した参考書をそれぞれ1冊ずつ購入し、その参考書と過去問をひたすら解きました。初年度の2次試験は残念ながら不合格でしたが、2年目に向けてその後も参考書と過去問を繰り返し解く勉強を続けました。

結果

1次試験:1発で4科目合格
2次試験:初年度不合格
      2年目は結果待ち→合格!!!!

試験を通して感じたこと

率直な感想

 3種、2種、1種とすべて受けた私の率直な感想としては、「3種は出題範囲の基礎知識を広く浅く記憶することが大事」であり、「2種は絞った範囲を深く理解することが大事」、さらに「1種はそのうえで運も必要」といった感じです。

勉強法について

 私は「過去問10年分を3回転」を信じて勉強を行っていました。結果からすると、「試験に受かるため」の勉強であれば効果的だと思います。特に3種や2種は、過去問と同類の問題が出題される傾向が高く、それなりに対応できると感じました。一方、1種はマニアックすぎる問題や計算量がとんでもない問題も多く、解きやすい問題が自分の知っている分野かどうかという運も必要かなと思います。これらを鑑みて、もし今から私が電験の勉強を始めるとしたら、下記のように取り組みます。
電験3種:参考書1冊をとことん+過去問
電験2種1次試験:過去問
電験2種2次試験:論述参考書1冊+計算問題の過去問
電験1種1次試験:過去問
電験1種2次試験:論述参考書1冊+計算問題特化参考書1冊+過去問

電験の勉強が実務に活きているか

 正直、私はそこまで活きていません。その理由としては2つあります。1つ目は、電験自体の範囲が広く、自分の業務にあまり関係のない分野まで含まれているからです。その中で関係する分野については、たまに役立つこともありますが、であれば初めからその分野に特化して勉強していたほうがはるかに効率的です。2つ目は、私の勉強は「試験に受かるため」の勉強であり、「実務に活かすため」の勉強ではなかったからです。例えば電験では1線地絡時の地絡電流を計算する問題がよく出ますが、試験に受かるためだけであれば、その計算のやり方を覚えるだけです。しかし実務に活かすとしたら、それはどういう場合に起きて、どう他の設備に影響してきて、どう復旧するのがよいのかといったとこまで求められます。そこまで深堀して勉強していなかったため、まだまだ実務への応用を効かせることができる知識量ではありません。
 ですが、電験の勉強を通してよかったこともあります。それは、学会や研究会のような場において、いろんな人の発表内容をなんとなく理解する力が向上したことです。これは、幅広い分野の勉強をしたおかげです。そしてその力は質問力にも繋がります。なんとなくイメージできるからこそ、1つ踏み込んだ質問ができることもあります。
 また、私はわからないことはすぐに質問するタイプなのですが、「電験に受かる賢いやつ」というイメージとのギャップからか、「素直で頑張り屋なやつ」という印象を相手に与えやすくなったと感じています。(これはあくまで感覚的な話ですが)仕事も結局は人と人のやり取りです。相手にどう思われるかで、仕事の進み方が大きく変わります。その点においては、複利的な効果ですが、勉強した甲斐があったかもしれません。

ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます。次は、実際に使用した参考書等も紹介できればと思います。
電験1種2次試験の結果が出たら、また更新したいと思います。
→合格していました!!


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