スパイダー討論で授業が変わった〜実践編〜
今回は、スパイダー討論の実践編です。
スパイダー討論に興味のある方や、よく分かんないけれど面白そうって思ってくれた方は、ぜひ最後でお読みください。
スパイダー討論の内容については、こちらの記事でまとめていますのでご覧ください。
道徳とスパイダー討論の共通点
このスパイダー討論を、どの授業で活用できるか、そしてどう普段の授業に取り入れるか。それを、自分の研究テーマとして、これまで、いろいろな教科で試してみました。そして、その結果分かったことは、一番使いやすい教科は”道徳”です。
なぜ、道徳がスパイダー討論と相性がいいのか、それは3つの共通点にあります。
1つ目は、話し合うための深い問いが必要であること。
2つ目は、話し合い活動で授業が進められること。
3つ目は、多様な意見を出し合うことで学びを深められること。
この3つの項目は道徳にも必要であり、スパイダー討論にも必要な項目です。これらの共通点を満たしているため道徳の授業が一番導入しやすいと思います。
さて、それでは、実際にどのように行っているのかを紹介します。
スパイダー討論を使った授業には3つのポイントがあります。
問いの設定
まず、一つ目は問いの設定です。問いといっても先生が作るのではありません。
児童に問いを作らせます。子どもに問いを作らせる理由は、自分たちで、問いを作った方が、話し合いたいと思う意欲が増すからです。また、問いを見つける力も身につけさせるためです。
資料は、話し合いの時間を確保するため、家で読んでこさせます。
難しければ、朝学の時間などでもいいと思います。
そして、みんなで話し合いたい問いを考えてくるように伝えます。
この問いの作り方については、少しコツが入りますが、それは、またの機会に。
授業は、家で考えてきた問いを出し合うところから始めます。
全ての問いを出し尽くしたら、この問いを比べていきます。
問いの中には、すぐに解決できそうな問いもありますから、今日の授業でみんなで話し合いたい問いを絞っていきます。
この時、話し合う問いの数は、多くても3つまでにします。
これ以上になると時間が足りなくなるし、軸がぶれるからです。
問いが決まったら、物語の順にそって、話し合う順番を決めます。
やってみると気がつくと思いますが、、子どもたちが見つけてくる問いは本質的なものが多く、指導書に書かれている問いと大きくズレることはありません。また教科書以上の問いが生まれることもあります。これは一例ですが、「赤おにと青おに」の授業では、「どちらの友情の方が大きいのだろう?」という質問が子どもから出てきて、この問いから価値へと迫っていくことができました。
3つの役割
2つ目のポイントは3つの役割です。
ここまでで、すでに予習と問いの設定を通して、話の内容を理解できていますし、どういう点を話し合いで明らかにしていくのかもはっきりしています。
ですので、話し合いに対して主体的に参加しやすい条件が揃っています。
ただ、話し合いを深めていくには、そのコーディネータが必要です。
スパイダー討論では、このコーディーネートもできるだけ児童にさせます。
そのために役割を設定します。
役割は3つあり、
・司会者・・・全員の発言回数のバランスを取ったり、話し合う軸がずれた時に修正する役です。
・質問者・・・話し合いの中で、質問を投げかけることができます。ただし授業中に質問できるのは3回までです。回数を制限することで、質の高い質問に絞ることができるからです。
・記録者は・・・前回紹介したアプリを使って、記録をしていきます。
なお、この3役は授業中に自分の意見を発言することはできません。
それでは、その子たちの学びにならないのでは?と思われるもいるかもしれませんが、これは「最高の授業」の本にも書かれていることなのですが、司会者も、質問者も、記録者も全ての話に集中して耳を傾けていないと成り立ちません。
また全体を俯瞰してみることで、気づく価値もあります。ですから、この子たちの学びが少なくなることは、ありません。むしろ他者の意見に耳を傾けることで、自分の考えを深めることができます。
また、普段発言ばかりしている子は、聞き手に回ることで、全体のバランスということに気づく、いわばメタ認知をする機会にもなります。
ルーブリックによる自己評価
3つ目は、ルーブリックによる自己評価です。
話し合いが終わったら、記録者が記録していたデータを見せます。
そのデータから、発言の時間や回数そしてAIによる授業のバランス判定を確認します。児童は、この時点で、自分の話は長かったなとか、私が発言すればよかったとか様々な振り返りを始めます。
その上で、今日の話し合いでは相手の意見を尊重できたか、話し合いによって価値が深まったかを考えさせ、総合的に授業の評価をA〜Eまでの5段階で判定させます。こうすることで、次こそは、もっといい授業を創りたいと、話し合い活動への参加の意欲をより一層かき立てることができます。
そして、この方法で行えば、全員が参加する道徳、多様な意見を認め合い多面的多角的に価値を深める道徳が実現できます。
道徳でありがちな、話を朗読して聞かせ、掲示物をペタペタして、ストーリーを捉えさせ、先生が用意した発問に、決まった児童だけが答えていくといったようなつまらない授業をしなくても済むのです。
先生のメリット
ここまで、道徳×スパイダー討論についてお伝えしましたが、スパイダー討論を道徳に取り入れることは、先生にとってもメリットがあります。これまで、道徳の授業は、時間がかかると言われてきました。それは、毎回教材が変わるからです。毎回、教材研究をして、発問を考えたり、貼り物を準備したり、そういうのが好きな方ならいいのですが、時間がかなり奪われてしまうのは事実です。しかし、このスパイダー討論には、準備が入りません。発問は児童が作りますし、話し合いも児童が進めていきます。先生は授業中、共感や問い返し、比較などを要所ではさみながら、意見を構造的に板書していくだけです。これもコツさえ掴めば難しいことではありません。つまり先生は楽なんです。ズルいように聞こえますが、先生が楽をして、児童が伸びる。これが今まで大変だと言われていた道徳でできるのですから、試してみる価値は十分にあると思います。
ぜひ、興味のある方は、実践してみてください。きっと、多くの子どもたちが道徳をもっと楽しく、そして先生がもっと楽になると思いますよ。
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