今こそイネイブラー(世話焼き過ぎさん)を卒業するとき。
「イネイブラー」をものすごく要約すると、「伴侶や家族等の事を大事に思うあまり、手を出しすぎる、世話を焼きすぎる人」の事である。
そして、その人の為に良かれと思って助けてきた事が、かえって状況を悪化させてしまう事を「イネイブリング」という。
例えばアルコール依存の夫を抱える妻が、「断酒はかわいそうだから、このくらいなら飲ませてあげても・・・」と、お酒を買ってきたり、酒の失敗を手助けしたり(二日酔いで遅刻する時に、本人に代わって会社に電話を入れてあげる、など)する事で、いつまでもアルコール依存が続いてしまう、といったことが挙げられる。
世話を焼いている当人には自覚がない事が多い為、この悪循環を断ち切る事は非常に難しい。
妻がイネイブラーであるケースが散見されるが、それは一昔前の日本文化のせいかも知れない。
女性は男性を立てるものだという価値観が、両親等を通して刷り込まれてしまっているから、ごく自然と共依存の関係性を作ってしまうのである。
男性は、妻が世話をしてくれて当たり前と思い、女性は、この人は私がお世話してあげなきゃ、という考え方が一般的であった。
実のところ、私の両親も多分に漏れず、共依存の関係性だという事に最近気がついた。
きっかけは、両親が自営の店を閉めた頃、父の方が日に日に弱りだした事だ。
よくあるパターンだが、仕事を辞め社会的役割を喪失した事による精神的落ち込みが原因のようである。
喪失感に加え、家の事は完全妻任せで生活してきたものだから、家事が殆どできない。
このままでは認知症を発症するのは時間の問題。
母に対し、手を出しすぎる事のリスクを幾度となく話すと「分かった」とは言うものの、行動は裏腹、相変わらずのイネイブラー。
それではダメだと、家族の事になるとつい声を荒げて言ってしまいそうになるが、怒りに任せて伝えても何も変えられない。
仕事柄、沢山の老夫婦と接してきたので、その経験をもとに、想像しやすいように根気強く、何度も何度も話をしていこうと思う。
大切な両親に、少しでも幸せな老後を送って欲しいから、出来るだけ早めにリスクを減らす協力をしていきたい。
そして、自分達の夫婦の在り方も見直し、万一どちらかが倒れてしまっても家庭を守れるようにしておかなくてはならない。
夫婦だけではなく、親子関係も同じ。
コロナの影響で、家族と過ごす時間が多くなっている今、自分の関わり方が家族にどう影響を与えているのかを見つめ直してみよう。