洋館の中で見つけた日記 81 【師③】
20☓☓年。
研究所にて自分らしさを忘れてしまうP-ウイルスが流出した。
瞬く間にウイルスは蔓延。
世界はポカンハザードに陥る。
ポカンから逃れるため古い洋館に駆け込んだ。
そこである日記を見つけた。
◆師③
サッカー部の最後の大会が終わり、再び塾に通いました。
私たちは中学3年生、高校受験の時期です。
授業は19:00から21:00で、帰宅の際は外が真っ暗になります。
塾から私の家までは500歩ほどの距離です。
その途中に外飼いの犬がいます。
柴犬と何かの雑種で毛並の白いシロという犬です。
近寄ると牙を見せて吠えます。
ある日塾終わりに友人と歩いているとシロは鎖がついておらず、道の真ん中にいました。
私は驚いて友人を置いて自宅に駆け込みました。
友人も遅れて私の家にたどり着きました。
危険があったときに自らを犠牲にできないことを自覚した出来事です。
夏期講習には将棋大会がありました。
一回り年上の塾生も将棋が出来たため、6人ほどの指し手が参加しました。
賞品は袋いっぱいのきびだんご。
定規のように平べったい白い包み紙に「日本一きびだんご」と書かれています。
開けると、きなこ味の練り菓子がオブラートに包まれています。
先輩の塾生も個性豊かな方でした。
大学受験のために塾に通っていました。
先日、恐らくこの先輩が作成したTシャツをメルカリで見つけました。
そうです。
龍馬塾を語る上で欠かせないものが地球温暖化です。
先生は30年以上前から熱心に地球温暖化を探求されていました。
本も作成しています。
古い紙質のA5判、カバーはなく表紙は暗いオレンジ。
自費で出版したこの本は参考書の中に埋まっています。
地球温暖化を説明する際は授業が30分ほど中断し、何よりも熱心に語ります。
「産業革命以降、二酸化炭素の排出量が増えた。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の研究によると、
二酸化炭素、フロンガスはオゾン層を破壊し、地球の平均気温が今後指数関数的に上昇する。
南極の氷が溶けて海水面が上昇。
離島は海に沈む。
平均気温が1度上昇すると何種類もの生物が絶滅する。
水と食べ物がなくなる地域が増え、人類の大移動が始まる。」
Tシャツに書かれた「被害はJカーブで拡大する!」。
黒板とコピー用紙の裏を使って書いたグラフを説明する際のキーワードです。
グラフのy軸が気温、x軸が時間。
グラフが50年後になると気温が跳ね上がりJの字になっています。
そして遠く見つめるような眼差しで
「今のままでは50年後温暖化で人類はほとんど絶滅してしまうでしょう。」
先生にはディストピア的未来が見えているようでした。
先生が繰り返し言っていたのは今すぐに行動しないと手遅れになるといことです。
この内容の話を小学校のときから何度も何度も聞きました。
授業をサボりたいときも質問で温暖化の話に水を向けました。
当時は先生の強烈な話し方を面白がっていましたし、内容も夢物語のように思っていました。
しかし現在の世界的な潮流は概ね先生の言った通りになっています。
世界はCO2の排出量を0にしないと温暖化により自然災害が増えるなどの危機感を共有し始めました。
その危機感ゆえ、車はEV、電力は再生可能エネルギーがスタンダードになっていきそうです。
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