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飞蛾扑火ーー電撃殺虫器と人の心には近づき過ぎちゃダメ
(1490字・この記事を読む所要時間:約4分 ※1分あたり400字で計算)
【飞蛾扑火】
ピンイン:fēi é pū huǒ
意味:走光性を持つ蛾などの虫が火の中に飛び込むこと。自ら滅びを招くというたとえ。
『電撃殺虫器と人の心には近づき過ぎちゃダメ』
むかーしむかし。
と言ってもまぁ、別にそんなに昔のことでもなくて。
今から20数年ぐらい前の、90年代初期の頃のお話。
あの頃の中国ーー少なくとも私が暮らしていた地域では、夏になってもまだエアコンを四六時中付けながらアイスを頬張るとか、そんな贅沢なことをする人はあまりいなくて。
小さな扇風機がギコギコと今にも首が折れそうな音を立てて必死に回って一家の涼みをまかなっていて。
で、熱源である太陽が沈んだ夜はもうそのボロ家電の電気代でさえ勿体なくて、皆バタバタと一斉に窓を開けて、そよ風で部屋をいっぱいにして。
そして、そんな時に必ずひょっこりとやつらも風に乗って部屋に入ってくる。
誰かって?
虫よ、虫。
コバエだの、蚊だの。
おっきな蛾も、時々いたっけ。
当たり前っちゃ当たり前。
真夏の夜にあんな大きく窓を開けるのだから、どうしても虫の1匹や2匹は寄ってくるものだ。
ただ実際は1匹2匹なんてもんじゃない。
ひどい時はもう「群がってくる」ような勢いで、これが本当に大変だった。
そこで大活躍するのが「電撃殺虫器」だ。
「誘蛾灯」、とも。
パチッと電源を付けて、窓辺や玄関といった虫がよく出入りするような場所にポンと置くだけ。
すると、おもしろい程にバチバチと虫がやられたものだ。
電撃殺虫器の殺虫原理はいたって簡単。
まず、多くの虫は「走光性」を持っている。
その名の通り、光に引きつけられる習性のことだ。
電撃殺虫器にはぼんやりと光るランプが内蔵されていて、虫達はその光を求めて四方八方から寄ってくる。
外側にある柵を通り過ぎると、たちまち目の前に愛しのランプが。
「後一歩だ!」と気を奮い立たせ2層目の柵をくぐろうとすると、それは高電圧のワイヤーになっていて、虫達はそれにぶつかった瞬間、即死する。
憧れの存在を目の前に、哀れにブスブスと焦げ臭くなって命を落とすのだ。
小学校で先生からこの原理を教わった時、私は「なんて残酷な道具なのだろう」と子供心ながらに恐怖を覚えた。
心惹かれた相手を求めて必死に羽ばたきやっとの思いで近くまで来たと思ったら、至福の一時を味わう暇も無く裏切られ、満身創痍に傷つけられ、しまいには無惨な死を迎える。
虫達1匹1匹の怨念が聞こえてくるようであった。
そして大人になった今。
私は、人間社会もこういった「電撃殺虫器」だらけだということに気付いた。
酒だの。
たばこだの。
ギャンブルだの。
魅惑的な「ガチャ」機能がついたゲームだの。
娯楽なんて、どれも血眼で追いかけていくうちに、ある日突如首を締め付けられるものばかりだ。
それと……そうそう、忘れてはならない最悪の「電撃殺虫器」がもう一つあったな。
それはーー
「人の心」。
私は、人と人の関係はたき火を眺めているのと似ていると思っている。
ある程度の距離を保って接するのは暖かくて心地よいものだが、近付き過ぎると火傷をおう。
炎の中に飛び込むような真似をしてしまったら、もう大変なことになってしまう。
迂闊に誰かの心に飛び込むのも、これと同じことだ。
逆に、やすやすと自分の人生を他人に開示するようなことは、相手を炎の中に投げ入れるのと等しい行為になる。
こんなことは間違ってもやっちゃいけない。
ダメ、絶対だ。
「自分」と「相手」の境界が曖昧になると、必ずと言って良い程身を滅ぼすからだ。
どんなに魅力的に見えても、丸焦げにされたくなければ適度な距離で眺めるだけ、それだけにしておくべきだろう。
電撃殺虫器も。
たき火も。
人の心も。
📚適切な距離感で見守れることが、一番の愛なのでは?
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