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資生堂、2024年の営業利益73%減少。中国市場での苦境続く
2025年2月10日、日本を代表する化粧品ブランド、資生堂が2024年度の業績発表を行いました。全体としては売上高が前年同期比で2%増の9906億円に達し、成長を見せたものの、営業利益はわずか76億円にとどまり、前年同期比で驚異的な73%の減少を記録しました。この大幅な減益の主因は、特に中国市場での低迷によるものとされています。資生堂にとって中国市場は重要な戦略市場であり、その不振は今後の成長に大きな影響を与えることが予測されています。
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中国市場の低迷:売上減少の要因を探る
資生堂が2024年度に発表した中国市場での業績は、売上高が前年同期比で5.3%減少したことが明記されています。特に、主力ブランドである「SHISEIDO」の売上が顕著に減少しており、この点が業績全体に悪影響を及ぼしました。資生堂は、これまで中国市場において強力なブランド力を誇っていたため、その不振は市場全体にとっても注目すべき事態となっています。
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資生堂の公式発表では、2023年に発生した「福島第一原発の処理水海洋放出問題」が、特に中国の消費者に与えた影響が大きいとされています。この問題により、日本製品に対する購買意欲が低下したことが、資生堂の売上減少に繋がったというのが同社の見解です。しかし、これは単なる一因に過ぎません。中国市場での競争が激化し、消費者のニーズが急速に変化している中で、資生堂がその変化に十分対応できていないことも、要因の一つと考えられます。
競争激化と消費者の多様化するニーズ
中国市場では、国内外の化粧品ブランドが激しく競争しており、その競争環境はますます厳しくなっています。特に、価格を重視する「プチプラ」ブランドや、国内化粧品メーカーが急成長しており、資生堂は高価格帯の商品を中心とする戦略において、顧客層の獲得に苦しんでいると言われています。中国の消費者は、質と価格のバランスを重視する傾向が強く、特に若年層においては新興ブランドや地元ブランドへの支持が高まっています。
さらに、デジタル化の進展により、消費者はオンラインでの購買体験を重視するようになっています。ライブコマースやSNSを駆使したマーケティング手法が主流となり、特にZ世代と呼ばれる若者層をターゲットにしたブランド戦略が求められています。しかし、資生堂はそのデジタル戦略が他の競争相手に遅れを取っていたことが、消費者からの反応が鈍くなった一因として指摘されています。
観光業向けの小売業務も苦境に
資生堂は中国国内の免税店や観光業向けの小売業務にも注力してきましたが、この分野でも困難な状況が続いています。特に、海南島を中心に展開していた免税店舗の業績が低迷しており、2024年の前9ヶ月では売上が30%以上も減少しました。海南島は中国国内における観光消費の中心地であり、外国ブランドが競って進出する重要な市場です。しかし、COVID-19の影響から観光業は回復が遅れており、特に観光消費が低迷している中で、資生堂は大きな打撃を受けました。
また、最近の中国経済の低迷や消費者の購買力の減少も影響を及ぼしています。中国の経済は成長率が鈍化しており、特に高級消費財に対する需要が弱まっています。これにより、資生堂のような高価格帯のブランドは、特に影響を受けやすくなっています。
戦略見直しと今後の展望
資生堂は今後の戦略として、2025年の売上高を9950億円、営業利益を135億円と予測していますが、これもあくまで慎重な見通しに過ぎません。資生堂は、これまでの高価格帯の商品を中心とした戦略から、デジタルシフトを加速させることが急務となっています。特に、オンラインショップやSNSを活用したプロモーション強化が必要であり、リアル店舗とデジタルチャネルの統合が不可欠です。
また、中国市場における再構築のためには、若年層向けのブランドや、ミレニアル世代・Z世代をターゲットにした新しいラインの開発が重要です。さらに、地域ごとの消費傾向に合わせた柔軟な商品展開や、現地パートナーとの連携強化も求められるでしょう。
資生堂は、国内外での競争の激化、消費者ニーズの変化に対応するために、事業戦略の再構築を進めていますが、その成果が現れるまでには時間がかかると予想されます。日本国内にとっても、資生堂の今後の展開は非常に重要な意味を持つため、業界全体がその動向に注目しています。