一九三六年 屏東⑶ ー 客家部落の朝と売春宿の夜
客家部落の朝
二人して宋君宅に帰り、暫時睡眠する。朝五時にもかかわらず著しく暑く寝苦しい。周囲を散歩すると支那風の赤瓦の建物ばかりで、辺りは黒猫や黒犬がウロウロしていた。半時間歩いただけなのに玉のような汗がドッと出た。宋君の住む地区は客家ばかりで日本人蕃人は居ないと云う。客家とは清代に台湾に移り住んだ漢人即ちちゃんころを指し、日本語を解するのは其の内半数程度である。宋君も客家の一人である。田圃には台湾バナナがたわわに成っている。台湾バナナは汽車に乗り高雄港に運ばれ緑色の硬い