語感の言語化練習#7〈御用達〉
御用達
ざっと辞書を引いてみた限り、②の意味は三省堂の辞書にしか記載されてなかったが、個人的にはほとんど②の俗な言い方の意味だと思っていて、大多数の辞書が「官庁に物事を納入すること」としか記述がなくて隔靴掻痒の感があった。私の語感は相当歪んでいるのだろうか?ただ、三省堂の語釈にも100%賛同という訳ではなくて、単にその人が頻繁に通っていてひいきにするというよりかは、①の意味の「用品をおさめること」という意味から「ある特定の集団に対して調達される物やサービス、またはそれを提供する組織」という意味なのではないか。本来は宮中や官庁などの公的で権威のある組織に対して「御用立てる」立場であったのだから、そういう上の立場の需要に対して先回りして物やサービスを供給する業者のことを意味していてもおかしくはない。元々は偉い人らが対象だったが「セレブ御用達」とか「受験生御用達」のような表現を見ると、もはやマーケティング戦略によるターゲット層として捉えているように思える。類義語を考えると「セレブ専門の」「受験生用の」「セレブ特化の」「受験生向きの」などが浮かぶが、「業者」を指す場合が多いので意味はだいぶずれてしまう。場合によっては「セレブを意識した」「受験生を狙った」のように書き換えられる。ただし「足繁く通う」という意味はないが。
書籍になってるものでも俗な意味で使われている用例はたくさん見つかる。
英語だと、purveyor という語があるらしい。
「ひいきにしている」という意味で、patronage が使えるのはおもしろくて、コウビルドで、patronage を引くと、Patronage is the support and money given by someone to a person or a group such as a charity とあり、まるで政府や王室のような資金のある組織が支援する(=そのサービスを利用する)という意味にも取れる。
cater to~ も使える。
プチ・ロワイヤル仏和辞典を引くと、
と出ていて、attitré の訳語として「正式の肩書をもつ、専属の」と「ひいきの、いつもの」という二つの意味に分けられていた。fournisseur は「出入りの商人、納入業者、行きつけの店」だから御用達の本来の意味にかなり近い。