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『ガメラ2 レギオン襲来』のあのセリフで考えること

圧巻!4K HDR版 ドルビーシネマ上映

ガメラ生誕55周年記念イベントの一環として展開中である、平成ガメラシリーズのリバイバル上映。先日の『ガメラ 大怪獣空中決戦』の反響が周囲でも結構あったので、気になっておりました。特に平成三部作では最もソリッドでブレイブな『2』のリマスター版を、ドルビーシネマで観るのは間違いなくオツなものだろうと思い、公開日初日の本日、午前の第1回目を鑑賞しようと梅田ブルク7へ足を運ぶと、入場前のロビーは大混雑!映画館は今、かかる映画も軒並みペンディングになって厳しい状況の筈なのに、しかも約四半世紀前の旧作を観るために、大勢の人が集まっている状況に驚きつつ、少し前の映画館の賑わいを感じて安堵もしたのも事実。そして、平成ガメラ3部作の根強い人気を改めて実感するのでした。入場者特典のフィルムしおりを受け取り(これ目当ての人も多いのだろう)何気に初体験のスクリーン1、ドルビーシネマへ。。。何度も観たはずのガメラ2ですが、レストアされた映像と大迫力の音響効果のおかげで、作品そのものへの没入感が半端なく、まるで初めてこの作品に触れた小学4年生のあの時の感覚が蘇ってくるような、不思議な映画体験をしました。ファンの方々の多くは、今回のリマスターで画や音の解像度が高まったことにより、これまで判然としなかったディティールが浮き彫りになるのを発見する楽しみを共有しているようですが、個人的には、言葉は変ですが「『ガメラ2』をもう一度初めて観た」という意味合いが大きかったように思います。

https://twitter.com/gamera_info

『我が名はレギオン。我々は、大勢であるがゆえに』

怪獣には様々な名前があり、その名付けに関しても多様なアプローチがあるわけですが、本作の敵怪獣・レギオンの命名シーンは非常に印象深いものの一つとして、怪獣ファンの記憶に刻まれている筈です。というのも、このシーン、石橋保さん演じる自衛隊員の花谷が、多数群がる虫のような宇宙生物を眺めながら上記のセリフをぽつりと呟くのですが、若干唐突感が否めず、大人になった今でも少しばかり観てる側がこっ恥ずかしくなる場面でもあるからです。すかさず本作の主人公格である渡良瀬が「聖書か」と返します。すると花谷はそれが(新約聖書の)マルコ第5章の一節からの引用であることを説明します。

聖書や神話は教養なのだ

先に私はこのシーンを「こっ恥ずかしくなる」と表現しましたが、どうやらその認識は少し改める必要があると最近考えています。仏教徒の割合が大きい我々日本人においては、聖書の知識を備えている人も同様にあまり多くないと思われますが、聖書やギリシャ神話、北欧神話、それとシェイクスピア作品などは、人類の思想や文化に深く根差しているいわば「教養」の一つであるわけで、日本の作品においてもそれは例外ではないのです。つまり花谷と渡良瀬のあの会話は、聖書という教養を備えた自衛官であることの証左でもあると言えるのではないでしょうか。一概に言うことはできませんが、キリストや聖書、神話の知識があまりない私たちのような凡庸なオタクは、普段慣れ親しんでいるロボットアニメの登場人物や兵器、敵キャラやもちろん怪獣の名前から、そういった知識を得る機会が多いと思います。これを「中二病」や「衒学的」ととらえるかどうかは別として、所謂オタクという言葉が生まれる前のクリエイター、例えば宮崎駿や富野由悠季といったレジェンドたちは、上記のような神話や聖書など、ベーシックというべき教養を幼少期から吸収していたはずで、それを自らの作品に昇華していっていたと思われます。後に続くクリエイターや我々ファンは、それら教養を2次的、3次的に享受することのほうが多いのではないでしょうか。故に富野監督などは、アニメばかりを浴びるのではないと警鐘を鳴らしているのではないかと考えます。

しかし、きっかけになるならいいじゃないか

私は、書籍を中心に所謂アカデミックな業界(研究や教育に関わる人たち)を相手に仕事をしています。といっても、一番川下に位置している業種なため、いくらアカデミックなお客様だからといって、自身がたちまちアカデミック(学術的)な人間になるわけでもなく、正直お客様が抱える課題と自身の会社や事業内容、日々の仕事にギャップを感じながら働いているのも事実。人生100年時代と言われる中、少しでも知識を得て、文化的で豊かな生活を営めるようになるには、自身の学びの機会はたくさんあったほうが良いというのが私の考えで、だからこそ、今の仕事もなんとか続けていっています。ただ少しばかり背伸びしすぎというか、お堅いというか、もう少し肩ひじを張らずに、自身の教養を高める手法があっても良いのではないか?という考えが日増しに大きくなっていく中、先に述べたようなアニメや特撮作品から、ベーシックな教養を学ぶケースや手法があってもいいじゃないか!と考えるようになりました。たとえば、『機動戦士ガンダム』のSF考証・世界設定のベースになったのは『成長の限界』という経済書と言われていますし、この夏に公開される『シン・ウルトラマン』では、人類学者レヴィ・ストロースの『野生の思考』という著書がキーアイテムになると言われています。このように、サブカルチャー(といってもいいのかな?)から、本質的な学問・知識に辿り着くアプローチがもっとメジャーなものになれば、我々オタクをはじめとした現代人の教養レベルも、少しは向上するのではないか?と考えています。そして、いつになるかはわかりませんが、私も最終的にはそんなサポートができる仕事に辿り着きたいな、と実は虎視眈々と構想を練っているところです。こういった話、みなさん興味ありますか??

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