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8.オーラどころか生理が止まる

満開の、灰色の桜。

心身ともに沼の底。

自己嫌悪沼の破壊力。



暗い春から遡ること半年、

私のテンションは最高潮でした。


かの営業マンに

「どうやったら私も覇気が放てるのですか」

と聞くのはさすがに突拍子もないので

「そういう考え方は
どこかで学ぶんですか?」
「独学ですか?」
「本ですか?」

商談が終わるまでに聞き出さねば、と
しつこく質問を重ねてようやく掴んだのが

自己啓発の研修でした。

「はい行ってきます、
48万円のフルコースで!」

即日申し込みをしました。

亡くなった祖母が遺してくれたお金です。

夫との結婚生活が
どうにもこうにも行き詰まった時に

自分と子どもだけ「脱出」出来るように、
ひたすら温存していました。

それを
自己投資に使ったという部分は
見ようによっては「男前」ともとれますが

実際は

「研修さえ受ければ変われる」

と巨大な勘違いをしていたのです。

今思い出しても心配になります。
「違うよ」って
その時の自分に教えてあげたい。

恐らく、研修を教えてくれた
営業マンも同感だったでしょう。

そして、そういう時の私は
助言を聞かないのです。
素直の皮を被った大頑固者。


さて、
待ちに待った初日。

飛び込んだセミナー会場で
目にした卒業生の姿は

やっぱり覇気が出ていました。

覇気覇気している(いやホント)。


曰く、
「スーパーサイヤ人」
「スター状態のスーパーマリオ」

卒業生達は
自分達の状態をそう例えました。

私の心はそうなれる期待に踊ります。

戦闘能力が高すぎてスカウターがぶっ飛ぶ
アレになれる。

私が。

陰に紛れて生きてきたこの私が。


人生薔薇色
勝ち組
成功の確約

本当にオメデタイお花が
私の頭からは生えていました。


他の研修生が
「会場の入り口を開けるのが苦痛」
「地獄の扉」と
憂鬱そうに参加しているのが
全く理解できない。


覇気とオーラに眼が眩み
「人生イージーモードで
攻略出来るようになる」という
誤った幻想に陥っていました。

本来の目的は華麗に置き去りです。


周りの研修生が課題を乗り越えようと
がむしゃらに行動するのを
他人事のように眺め、

私は無難に
ボロを出さないよう最終日までこなして
スーパーになろう、と
たかをくくっておりました。

わざわざ自己啓発にきて
がっつり防御して居座る…


ん何しに来てんねん!!


今だから自分で突っ込めますけども。

当時は気付けず、

そして
その状態で卒業できるはずがないのです。

トレーナーやアシスタントさん達が
全力で向き合ってくれればくれるほど

「逃げ場」が無くなりました。

お金もすっからかん。
家族にも内緒の参加。

そのタイミングで
夫の糖尿病が判明、
即入院を言い渡されました。

「あ、病院代がかかる。
夫のお給料も減る。
どうしようどうしようどうしよう
こんなことしてる場合じゃない」

そこで
MAX目前だった逃避メーターが
軽々と振り切れ

去り際も
「恥ずかしくないのか」というほどの
優柔不断感を出しながら

「中退」したのでした。


「逃げる」という目的は
いつも通り達成され、
清々しかったのはその日と翌日くらい。

そこからは
自己嫌悪の洪水。


箸が転んでも「私なんて…」
チリが落ちても「私なんて…」

グレーな日々を
送っていたところ、

生理がぱったり来なくなり、
寝起きに浮腫み手足はしびれ、

何のスイッチもなしに滝汗で
ハンカチをびしょびしょに
濡らす人となりました。


次回
【家計の歴史はファミリーの歩み⑨
〜セカンドオピニオンも宇宙人〜】の巻き👾

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