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休職したいのに、どこにも診てもらえない…
昨今、精神科や心療内科はどこも混み合っており、初診で1ヶ月以上先と言われることは珍しくありません。いざ「休みたい」と思っても、予約が取れずに焦ってしまい、逆に症状が悪化してしまうケースもあります。
「10件以上電話してもダメだった…」なんて話も少なくありません。ただでさえしんどい状態で、病院探しの負担がのしかかるのは、本当に辛いものです。
そんな時に少しでも参考になればと思いこの記事を書いたので読んでいただければ幸いです。
まずはミニストーリーから。続きなので、もしよければ前回の記事を読んでいただければ幸いです。
ミニストーリー
渡辺舞子(32歳)は、スマホのアラームが鳴ると同時に目を開けた。頭が重く、身体がベッドから起き上がるのに大きなエネルギーを必要とする。ここ最近、こんな朝が続いている。かつては目覚めとともにスムーズに出勤準備を整えていたのに、今では家を出るまでに2時間以上を費やす日も少なくない。
「ああ、今日もなんとか出勤しないと…」
布団の中で何度も繰り返し自分に言い聞かせるが、起き上がるだけで精一杯だった。それでも、這うようにして出勤する日が続いた。
職場に着いた頃には、すでに午前の仕事は始まっている。デスクの上には未処理の書類が山積みだ。同僚からの「大丈夫?」という言葉すら、気遣いなのか呆れなのか分からず、渡辺の胸に重くのしかかった。
集中力も続かず、些細な作業に何倍もの時間がかかるようになった。帰宅してからも頭の中は仕事のことでいっぱいで、夜中に目が覚める。眠れない夜が続く一方で、日中は眠気に襲われ、ベッドから出られない日も増えてきた。有給休暇は残りわずか2日。もう限界だと心が囁くのに、「休むわけにはいかない」と自分を奮い立たせる日々だったがとうとう休職する決心をしたのだった。
そのきっかけは、田村課長との面談だった。
「渡辺さん、少しお話しできますか?」と声をかけられ2人で話をした。業務に支障が出ていると告げられたときは心臓が飛び出そうなくらい音が大きくなったが、その後の言葉で救われたのだった。
「渡辺さん、まずはご自身の体調を整えることが一番です。無理に出勤を続けて、さらに体調が悪化してしまっては大変です。一度お医者さんに相談してみるのはどうでしょう?」
「…すみません」と涙が滲んだ。迷惑をかけたくない、頑張らなければという気持ちだけで無理を続けていたが、限界はとっくに超えていた。
この言葉をきっかけに一旦休もう。そう決めたのだった。
帰宅後、渡辺はスマホで心療内科を検索した。「よし、病院に行こう」と決心したものの、表示された病院はほとんど「電話予約のみ」。知らない人に電話するのが怖い。何て言えばいいのか分からない。有給が残り2日しかないことで焦りが増した。2日以内に受診できないと、それまでは頑張らないといけない。
意を決して電話してみると、「初診は1ヶ月先になります」という返答。
「1ヶ月…?そんなに待てない…」
他の病院にも電話をかけ続けたが、「現在、初診は受け付けておりません」「紹介状が必要です」と次々と断られた。
「もうダメかもしれない…」電話を切るたびに涙がこぼれる。何件目かの電話を終えた時、手が震えてスマホを落としそうになった。「私、どうすればいいの?」焦りと絶望で頭が真っ白になる。
そんな時、友人からふと「予約なしで飛び込みできるクリニックがあるよ」と教えられた。半信半疑のまま、翌朝そのクリニックに向かった。
もし診断書を書いてもらえなかったら?「そんなことぐらいで休む必要はない」と言われたらどうしよう…
待合室で順番を待つ時間も不安でいっぱいだった。ネットの書き込みでは「ここの先生は突然怒ることがあるから注意」と☆1の口コミもあった。
それを見つけてしまったときは行きたくないと思ったけれど、ここ以外に来るところがなかったので覚悟を決めた。
自分の名前が呼ばれるまでの時間が長く感じた。
いざ診察を受けると、なんてことなかった。怒られることもなく話を聞いてくれて、診断書も書いてくれた。
受付の人から診断書を受け取った渡辺はその紙を握りしめ、涙をこらえた。「これで休める…」。張り詰めていた気持ちが少しだけ解けた瞬間だった。
解説
いかがでしたでしょうか?
いざ休もうと決心してからも、さまざまな不安があり、心療内科受診までのハードルが大きいことを描きました。
今回はたまたま友人に教えてもらい、予約がなくても受診できるクリニックに受診ができました。ですが、もし友人がいなかったらどうなっていたでしょうか。
そこで、今回はすぐに受診できるクリニックがない場合の対応方法をいくつか紹介したいと思います。
1. 精神科・心療内科受診までのつなぎの対策
① 内科を受診する
身体の不調がある場合、受診して診てもらうことができます。
胃が痛い、肩が凝る、食欲がない、眠りが浅い等の症状でも診てくれるところが多いです。
もしかしたら医師から「精神科に行った方がいいですよ」と言われるかもしれませんが、正直に理由を伝えれば対応してくれると思います。
なんと言えばいいかわからない人は下記を参考にしてください。
「予約をとろうとしたのですが、1ヶ月後まで受診できなかったので、ひとまず診てもらえないでしょうか?会社を休むためにも診断書が必要なので書いてほしいんです」
診察した医師にもよりますが、精神科受診までの短期間なら書いてくれることが多い印象です。かかりつけのクリニックがある人はそこで相談してみると、関係性ができているので対応してくれやすいです。
② 産業医や保健師に相談する
会社に産業医がいる場合、先に面談するのも手です。産業医に今の体調等を伝えてください。おそらくこの状況で働くのは難しいと判断されることと思います。
基本的には「精神科を受診して、主治医と相談してきてください」という流れになるのですが、ここでも①のようにすぐに予約が取れない状況であることを伝えて下さい。
産業医は「今の状態では働かせられない」等の意見を人事部(もしくは上司)に伝えることになるはずです。産業医によっては「精神科受診の結果を待つまでは働かせていいか判断できないので働かせないのが望ましい」等の意見になるかもしれません。
いずれにしても、主治医の意見がなくても、産業医の意見があれば、会社が休職の必要性があると判断してくれる場合もありますので、一度相談してみてください。
ただし、産業医の訪問日が限られていて、なかなかすぐに面談ができない場合もあるので、その時は別の方法を検討してください。
③ オンライン診療を利用する
ネットを調べてみると、「即日で診断書を発行可能」等、初診ですぐに診断書を出しますと謳っているクリニックもあります。
これについて賛否はありますが、どうしても休職が必要な時の選択肢としては利用してもいいかもしれません。
ただ、中には診察のたびに先生が変わるところもあるそうで、個人的には一定期間は同じ先生に通院した方が、カルテ上に残らない情報を把握してくれているので、より適切な治療を提供してくれると思います。
なので、もし受診する際は同じ先生に診てもらえないのであれば、別の心療内科受診までのつなぎとして利用するのがいいと思います。
そのときも正直に近くのクリニックの予約がすぐに取れなかったと伝えてください。
2. まずは「休むことが優先」
上記は診断書がないと休めないという前提で話をしていましたが、実際はそんなことはありません。
有給や診断書がなくても休むことは可能です。「欠勤」という形で休むことができるので、まずは身体と心を休めることを優先してください。
中には、「他の人に迷惑をかけている」「自分は他の人のように働けないダメな存在だ」と自分を責めてしまう方もいるかもしれません。でも、無理をして働いてしまうと今よりももっと悪化します。体調が悪化すればするほど、回復には時間がかかってしまいます。
できるだけ早く休むことが大切です。
3. 会社側も柔軟な対応を
会社としても、柔軟な姿勢が求められます。理想的なのは、診断書がなくても「勤務に影響が出るほど体調が悪そうだ」と上司が判断したら、一時的に休職を命じることが望ましいです。
ルールでは診断書がないと休職できないとなっているかもしれませんが、もしかしたら暗黙のルールかもしれません。人事に事情を伝えてみると案外対応してくれるものです。
会社によっては産業保健師が常駐しているところもあります。皆さんの会社に保健師がいれば親身に話を聞いてくれるので一度相談してみてください。
まとめ
「もう限界」と感じた時、ひとりで頑張り続ける必要はありません。病院探しや手続きが大変でも、必ず助けてくれる場所はあります。周囲のサポートを頼りながら、まずは休むことを優先してください。
休職は「終わり」ではなく、心と体を整える「スタート」です。焦らず、無理をせず、あなたのペースで進んでいきましょう。
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