映画感想『浅田家!』
◆あらすじ◆
幼い頃から写真を撮るのが大好きだった浅田政志は、家族全員を巻き込んで製作したユニークな写真集で写真界の芥川賞といわれる木村伊兵衛写真賞を受賞する。これをきっかけに、ようやく写真家として軌道に乗り出した矢先、東日本大震災が発生する。被災地に向かった政志は、その被害の大きさを前に、写真家の自分に果たして何ができるのか自問してしまう。そんな時、津波で泥だらけになった写真を一真一枚洗って家族のもとに届ける写真洗浄ボランティアとして奮闘する人々と出会い、その活動を手伝い始める政志だったが…。
※自身の両親と兄を被写体に起用し、全員で消防士やレーサーなどさまざまな職業に扮するユーモラスな家族写真を収めた異色の写真集『浅田家』で木村伊兵衛写真賞を受賞した写真家・浅田政志の実体験
実話に基づいているんだが映画としてもかなり優れたものがあった。
構成、展開の緻密さ!
スクリーン内の役者達の家族としての違和感の無さはホントに【浅田家】として存在しているようだった。
まるで前後編の様な構成で前半は、結果『木村伊兵衛写真賞』を受賞した写真集『浅田家』が発売されるまでの経緯を通して浅田家のちょっと風変わりでコミカルな様子を中心に描かれる。
だが物語は東日本大震災を起点に一変する。
浅田氏の人生の転機だ。
ここからこの映画のエンジンが掛かりだす。
写真と言う媒体を通して何故撮るのか?と言う問いと家族写真の意味に答えを見出して行く物語性の演出が素晴らしかった。
改めて二宮和也と言う俳優の凄さを目の当たりにしたな。
被災地で小野君(菅田将暉)に出会うのだが浅田氏は泥に塗れた写真を丁寧に洗い一枚一枚並べて被災した人達へ返却する小野君の姿を見て【自分の出来る事】【やるべき事】を見つけたんだろうな。
未曽有のあの災害が起きた時のシーンは感覚がリアルで驚いた。
そう、離れた場所ではいつもの【ただの地震】だったんだからね。
恋人からの電話を受ける所なんてあの内容がまさしく私が体験した事で「凄く揺れた、今までとは違う、福島の方は大変な事になってる」
そう、あの時自分も経験した事の無いような揺れで本当に「これで死ぬのかも」って思った。でも落ち着いてからTVを付けたらもっと信じられない光景を目にして愕然としたのを覚えてる、あの時は動悸が止まらなかったな。
仕事を通じて出会った家族の安否を確かめに行った被災地で見たその光景に命のある自分が出来る事をやらなければという使命が宿ったんだと思う。
この作品の恐らくもう一つの重大なテーマが【出会い】で、その出発点が【家族】である事は容易に理解出来る。
この世に生を受けて初めの出会いだからだ。
その出会いによって何を学び、何を得るのか?
写真家を目指して東京に出たがその夢が叶えられず実家に戻り、ふと自分の家族は本当は何になりたかったのか?と言う疑問から撮り始めた『浅田家』。
成りたい者に成れるのはほんの一握りで実はみんな【自分が出来る事】をやって生きてるって事に気付く。
出版を断られ続けた【普通じゃない家族写真】はヒョンな出会いから【写真集】の姿に変る。
人生は【捨てる神あれば拾う神あり】だ。
だから出会いは本当に大切で『ただ出会ってるんじゃない』って事を思わされるね。
いやぁ、ホント、実に組み立てが上手いなぁ・・・。
てか、浅田氏の人生もあの家族が居たからこそ映画にまでなったんだなって思うよね。
あの両親が出会って無ければ、もし夢の通りだったらこの物語・・・いや人生は誕生してなかったんだからね。
感動作でありながらそれを超えた家族の在り方や意味みたいなものを感じた。
いやぁ、実にイイ家族だなぁ。
「浅田くんちの家族、なんかええなぁ・・・」なのだ。
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それにしても黒木華が演じる幼馴染みはかなり重要なポジションだったね。彼女が居なかったら奴はどうなっていたのか?
政志にとってこれ以上の女は居ないぞ!
彼女の望みが叶って良かったって心底思ったよ。
それと、余談だけど政志の着てる服が時々オモシロイww
特に授賞式のシャツ(ブラウス?)はウケたなぁ…もうめっちゃシャレオツ!
2020/10/07