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小殿筋を臨床に活かす


起始・停止・神経支配・作用

 【起始】後殿筋線と下殿筋線との間の腸骨
 【停止】大転子 関節包
 【神経支配】上殿神経
 【作用】股関節外転 内旋 外旋

解剖・機能の特徴

・股関節を求心位に保つ役割
・停止部に関節包
・前部線維と後部線維に分けられる
・股関節の安定性に重要

臨床と小殿筋

小殿筋と伸張肢位

・Beckらは股関節屈曲位での外旋および股関節伸展位での内旋にて小殿筋が伸張されると報告

不安定面における小殿筋筋活動の分析

小殿筋の筋線維は大腿骨の頚部に沿って走り、股関節の安定性に寄与し、骨頭を中心位置に保つ役割があるとされています。
 片足立ちの際、股関節にかかる合力は体重の約3倍にもなり、特に女性においては股関節に大きな負荷がかかります。小殿筋の筋活動の方向が中心位置に向かっているため、収縮力が強ければ関節への応力を内側に移動させることができると考えられます。そのため、片足立ち時に小殿筋の活動を促進することは、関節の安定性を高め、疼痛の軽減につながると思われます。

小殿筋の賦活化方法

 低負荷で20度以上の外転運動を行い、等張性運動を実施する。
 

 小殿筋は、20度以上外転することで中殿筋の筋力を抑制し選択的な収縮を行うことが可能と報告されている。
 
等張性外転運動にて、中殿筋よりも小殿筋の筋活動が高まることが報告されている。
 小殿筋の筋線維タイプを調査した結果、遅筋が40%、速筋が約20%で、大部分が遅筋であることが明らかになった。遅筋に対しては、負荷量よりも時間や回数を増やすことで、遅筋繊維を支配する運動単位の活動を高める可能性がある。側臥位で重錘を使用し、HHDで最大筋力を測定し、負荷量を設定した上でメトロノームを用いて低負荷にて複数回等張性収縮を実施することがいいと考える。
引用:筋電計による小殿筋の動的な質的筋活動評価と選択的筋力強化方法の検討


小殿筋の深部にある脂肪組織と外内転可動性

 小殿筋の深部には脂肪組織を通じて関節唇や骨頭が確認できます。大転子付着部近くの超音波画像では、小殿筋の深部にある脂肪組織は厚くなり、小殿筋を支えるように大転子に接するまで存在しています。この脂肪組織は、小殿筋と関節包、または小殿筋と大転子間の力学的ストレスを緩和し、両者の滑動性を向上させると考えられます。小殿筋深部の脂肪組織の変性や癒着は、小殿筋と関節包間の滑動性を制限し、その予防は非常に重要な運動療法です。
 外転0°では、収縮による脂肪組織の機能的変形は観察されませんが、外転30°で収縮すると、脂肪組織は大きく拡大する。さらに、外転30°での等尺性外転運動時に脂肪組織の動態を前後の関係で観察すると、小殿筋の収縮に伴い脂肪組織が前方へ移動する様子も観察されます。このような脂肪の移動は、小殿筋の牽引ベクトル方向の違いによって生じる変化と考えられ、脂肪組織の機能的変形を維持するためには、可能な限り大きな外転角度で小殿筋の収縮を行うことが重要であり、それによって股関節内転制限の発生を予防する重要な技術です。
 引用:下肢における超音波機能解剖と最近の知見 ~運動器超音波時代の幕開け~ 運動器機能解剖学研究所 林典雄

小殿筋と股関節前方部痛

 小殿筋の深層では腸骨大腿靭帯に起始し、この靭帯は関節唇と連続するそのため小殿筋は関節唇の機能・病態に関与する可能性がある。
引用:関節機能障害を治す 理学療法のトリセツ 工藤 慎太郎
 小殿筋が癒着や滑走不全により機能不全となることで股関節屈曲時に関節唇の付着部に疼痛を訴えるケースが存在する。
 
 小殿筋は大腿直筋の第三頭と連結しています。そのため、直筋と小殿筋のリラクゼーションやストレッチングは、股関節の前方痛の要因を改善するのに役立ちます。


小殿筋と坐骨神経痛様症状

 Travellらは小殿筋に存在するトリガーポイントが活性化した場合は坐骨神経痛様の症状(大腿外側から下腿外側にかけて疼痛)を呈すると報告している。また、Travellらはまた反復性の過負荷が小殿筋に加わるとトリガーポイントが永続化するとも報告している。小殿筋にトリガーポイントが形成される原因としては仙腸関節の機能障害, 急性あるい反復性の慢性過負荷, 薬物の筋注, 神径根の刺激などが諸家により報告されている。
過負荷が小殿筋にかかる要因としては、脊柱の動きの低下(生理的な前後弯の異常)が仙腸関節に過度の負荷をかけ、それにより仙腸関節が機能不全に陥り、小殿筋に過負荷がかかってトリガーポイントが形成されることが挙げられます。
 



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