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短編小説『青春、消息不明』
「実は、この前の文化祭の時から、俺お前のこと好きだったんだ。付き合ってください!」
「ごめんなさい!私なんか悟君にはもったいないと思うの。悟君にはもっと良い人がいるはず。だから私たちはずっと友達でいましょう?」
「そんなことないよ。俺はお前が好きなんだ!」
「ごめんなさい」
川上悟(かわかみさとる)、16歳。人生4回目の失恋だ。
通う生徒の男女割合が均等であるという理由で高校を選択し、経験は
連載小説『俺たちは爆弾を作ることについて真剣に考えなければならない』第3章
第2章・あらすじ
津幡第一中学校・爆弾製作委員会、通称"爆委(ばくい)"は、男子中学生3人が所属する極秘の特別委員会である。
2023年11月5日、委員長・田淵健太(たぶちけんた)は、委員の杉浦桔平(すぎうらきっぺい)、中島翔之助(なかじましょうのすけ)の2人を招集し、これまでの議事録を確認する、最後の定例会議を開いた。
10月31日の議事録には、田淵が、爆弾を作るための材料が全て揃っ
短編小説『寝不足カンタータ』
………少し長くなるが、聞いてくれるかい。
何故わたしが君の元を訪ねるに至ったか、これを聞いてよく考えてほしい。この話を聞いた後で、君の知見をぜひお聞かせ願いたい。
わたしは、奇跡を見たんだ。いきなりこんなことから始めてしまってすまない。だが頼むから、まずは聞いてくれ。
わたしの職業は作家だ。40年間、まだこの世に存在しなかった新たな人生を歩む者たちの物語を紡ぎ、その者たちと共に生活して
短編小説『温泉地獄』
友義(ともよし)君は銭湯の入り口が見えてきたところで、大人の男性が一人、自動扉から中に入っていく姿を確認して足を止めました。
これはある一人の男子高校生による、たった数十分の葛藤を描いた物語です。
俺の所属するバスケ部の練習は、この時期になると厳しさを極める。
指導方法が古いおじいちゃん監督が、無限に続くんじゃないかという気になるような長時間のランニングを宣告してくるのだ。耳から入っ
連載小説『俺たちは爆弾を作ることについて真剣に考えなければならない』第2章
第1章・あらすじ
津幡第一中学校・爆弾製作委員会、通称"爆委(ばくい)"は、男子中学生3人が所属する極秘の特別委員会である。
2023年11月5日、委員長・田淵健太(たぶちけんた)は、委員の杉浦桔平(すぎうらきっぺい)、中島翔之助(なかじましょうのすけ)の2人を招集し、最後の定例会議を開いた。
4月に発足した爆委は、7カ月間で様々な準備を重ねてきた。ついに計画の最終段階に取り掛かるようだ
ショートショート『俺に話しかけるな』
もううんざりだ。
最近、いやここ何年間にも渡って、気が狂った男に喋りかけられている。内容も意味がわからない。ああ、ほら、まただ。
「なあ相棒。ケーキは好きか?ショートケーキ。チョコレートケーキ。バスクチーズケーキ。なんてのもある。とにかくケーキだ。あれ焼くときよお。丸い型に生地入れて焼くよな。でも食うとき。食うときはよお、三角に切り分けるよな。そのとき。みんな先端から食うよな。先端だ。三
ショートショート『ムカデ~自己消失物語~』
あるなんでもない晴れた日、私は勉強の息抜きのため外に出向こうと思いました。そこで部屋にいない間は換気をしておこうと、デスクのすぐ上にある窓を開けて出ていったのでございます。
息抜きと言っても、私の住む田舎では散歩をする以外の選択肢はございません。また、いつも決まった道を歩くわけではなく、着の身着のまま、目についた道に足が進めばそれに従うだけなのです。
ですので、玄関を出て何度か右に曲がり、
連載小説『俺たちは爆弾を作ることについて真剣に考えなければならない』第1章
「健太、これで良いか?」
「うん、上出来だ」
「かっこいいね。てかやっぱり桔平は文字打つの速いな」
「今そんなことはいいだろ。それじゃあ始めようか」
―――爆弾製作委員会・議事録―――
日 時:2023年11月5日
場 所:杉浦家 2階 会議室
出席者:津幡第一中学校 爆弾製作委員会 田淵健太/杉浦桔平/中島翔之助
議 題:俺たちは爆弾を作ることについて真剣に考えなければならない
津
ショートショート『少女の夢』
『少女の夢』
読書感想文の宿題を半分ほど終わらせてしまったところで、わたしは少しウトウトしていたようです。
10分だけなのか、それとも2時間ぐらいそうしていたのでしょうか。部屋の時計を見てみましょう。
ああ、そういえば。
寝始めた時刻は何時だったのか、正直よく覚えていません。とにかく今、時計の短い針は8時と9時の間、長い針は30分と35分の間の所を指しています。
机に突っ伏すように
ショートショート『男の放浪、あるいは夢について』
保育所という共同体に人生を据える弟は、毎夜就寝前に私に創作物語のを語ってくれる。
しかもそれは、全てを俯瞰する語り手の時もあれば、ある時は西洋の喜劇に登場するようなバカな男、またある時は家を失った女の子など、様々な視点で展開される物語であるがゆえに、私は毎夜聞き入り、時に微笑み、時に悲しみ、時にはよく感心させられ、充実した入眠へと誘われるのだ。
ある夜、この日弟が語ってくれた物語はもうすぐ成