ンポコポコッ、自分が楽しみながら誰かの役に立ちたい | ZenSounds 撮影日誌 #8
ついに、録音機材を一新しました。どんな機材を手に入れたかは次回まとめて書きますが、ようやく「フィールドレコーディングやってます」と言える録音環境が整いました。まだまだ知識が浅く、技術も拙いですが、経験を積むことでグングン成長していきたいと思っています。
新しい機材を携えての第一歩は、仁淀川支流の小川川(おがわがわ)で撮ってきました。川が二文字並ぶヘンテコな名前ですが、仁淀川水系だけあって綺麗な水が流れています。2024年3月11日、陽が沈むまでの60分になります。
Zen Soundsは定点で撮った30分のノーカット映像をアップロードしてきましたが、今回は60分に尺を伸ばしました。小さな落差工に打ち付けられて隆起し、激しく鳴る水流。気持ちいい音が撮れました。
「睡眠用」「作業用」とされる自然環境音の動画はYouTubeにたくさんあって、驚くほど再生数が回っているものもあります。質の高い睡眠へのニーズや集中したいのにできない悩みは世界共通のようです。
自分も寝付きが悪い時にiPhoneを枕元に置いて、または寝室のプロジェクターで投影して、自然の音や柔らかい音楽(とか、エンドレスに続く漫才の音声)を再生しています。
そこで、自分でユーザー体験してみよう!と、Zen Soundsを再生しながら布団に入ってみたのですが、その時に、オオッ!と気づきました。
30分じゃ、短すぎる。
自分は「ドキュメンタリー映画監督」という肩書きで世の中に存在させてもらっています。「矜持」という言葉は仰々しいですが、ドキュメンタリーをつくる人間として、YouTubeにある環境音動画のほとんどが一定の映像をループしたものであることに違和感を持っていました。
音がメインのコンテンツであれば、映像のゴールは「邪魔しない」ことであり、ループさせるのが最適解なのかもしれません。それでも、生理的に受けつけないのです。波が打ちつけ続けているのに太陽が一向に動かない、そんな不自然な映像を見ていると心がザワザワします。
ループさせるくらいなら短い方がいい。Zen Soundsは30分の動画で始めました。しかし、自分が視聴者になってみることで、その判断が間違っていたことがわかりました。
「いつになったら眠れるのだろう?」「このまま眠れないのではないか?」スムーズに入眠できない時、不安に駆られると思います。起きなければいけない時間から逆算して、減っていく睡眠時間にドキドキ焦る。そのうちに頭が冴えて、余計に眠れない。
そんな悪循環はどうしたって避けたいっていうのに、30分のZen Sounds動画では不安を増長してしまいます。自分自身、30分以内に眠りに落ちることを課されているかのような気分になりました。「この動画が終わったってことは、もう30分経ったってことだな」とプレッシャーを感じる始末。これでは逆効果です。
また、デスクワーク作業している時にも再生してみました。30分はやはり短すぎる。集中して作業している時に「環境の変化」はノイズです。ストップの判断は自分がしたい。3時間や8時間という長尺動画が他にある中、尺が短く音質でも劣るZen Soundsを選ぶ理由がありません。
ということで、今回は60分です。それでもまだ短いと思うのですが、ループ映像ではない長尺動画をつくるのは簡単なことではないので、色々と試しながら、せめて90分を基準にしようと考えています。ニーズがあれば長尺ループ映像もつくってみたいと思います。不自然じゃないループ。
こんな風に思えるようになったのは、自分が納得するクオリティで録音できるようになってきたことに尽きます。現場でトライすること、そしてエラーから学んで改善すること。自分と向き合うことで精一杯だった段階を抜けて、ついに「聴くひと」を意識することが始まりました。今回の動画がフォノグラファーまたはアンビエンターとしての、産声です。
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