第117回MMS放送 「幸福学とマインドフルネスについて探求する」 マインドフルネス・ファシリテーター 清水ハン栄治さん(2015/11/27対談)
●映画の企画から踏み出した一歩
enmono はい第117回マイクロモノづくりストリーミング本日も始まりました。司会は株式会社enmono三木でございます。本日はマインドフルネス・ファシリテーター、清水さんにお越しいただきまして色々とお話を伺いたいと思います。
清水 よろしくお願いします。
enmono よろしくお願いします。あと声の出演の――。
enmono はい、宇都宮です。
enmono 清水さんと私の最初のコンタクトは私が湯川さんの記事を見て、なんかおもしろい人がいるということでFacebookにメッセージを送ったんです。
清水 そうですね。
enmono それで友達になっていただいて、その後に逆にお声がけいただいてThe Life School(ライフスクール)というのをやるから講師で出てくれと依頼を受けて、最近はコミュニケーションが活発になってるんですけど、今具体的にどういうお仕事をされているのかっていうのを簡単に……。
清水 マインドフルネス・ファシリテーターと仰っていただいたんですけど、これはたまたま今回日本に来て――バリ島に住んでいて時々日本に帰ってきてお呼ばれして色んなところでお話するんですが――あるイベントで「なんかこうドンピシャな肩書きはないかねぇ」と言われて……。色んなことをやっているのでドンピシャがないんです。どのタイトル(肩書き)を使おうか、と。そのイベントが「働き方イベント」で、マインドフルネスが大事っていうのが世の中的に騒がれているから、「マインドフルネス・ファシリテーターでいかがですか?」と言われたんです。
enmono 言われたんですか(笑)。
清水 まだ生まれて10日目くらいのタイトル(肩書き)でございます。
enmono もともと日本ではIT系のお仕事をされていたんですよね。
清水 そうですね。IT系のお仕事もしていましたし、サラリーマンの時はリクルートで「AB-ROAD」という旅行雑誌とか旅行予約サイトを粛々とやっておりました。その頃、結構人生を考えちゃったというか、仕事は楽しいし、仲間はいいヤツばっかりだし、そういった意味ではすごく充実はしてたんですけど、なんか心の中の空っぽ感というのがあって。
enmono それは何年くらい前ですか?
清水 もう9年くらい前ですかね。盲目的に信じてたんですよ。子どもの頃から「勉強しっかりしろ、いい学校行け、かけっこ速くなれ、格好よくしろ、冗談うまくなれ」みたいなことを幸せの定義だと思ってがんばってやってきて、実際に勝ち組的な――自分の口で言うのもなんですけど――世の中的にチヤホヤされる会社で給料もそこそこよくて、そこそこいいところ住んで、そこそこ幸せになったと思ったんですけど、快楽的な幸せは持ちながらも、なんかこう心の中はちょっと虚しいというか。35歳くらいの人生前半を終えたあたりで、後半もコレかよ、ほかの幸せもあるんじゃないの? って興味を持って。
清水 ロコ・ベリッチという若い頃からの親友がいて、彼は大学卒業してからずっとドキュメンタリー映画を撮ってたんです。アカデミー賞にノミネートされたり、サンダンス映画祭で作品賞を取ったりとか。ドキュメンタリーの中ではすごいキャリアを築いてきた人間で。ちょうど僕が人生の岐路に立っている時に「栄治、ドキュメンタリーの新作資金が調達できたよ」「なんのテーマ?」「幸せ!」その瞬間に辞表書き始めるみたいな感じで。
enmono その話が来て会社を辞めたんですね。
清水 そうです。辞めることは決めていたんですけど、そのタイミングで会社を辞めて、世界中いろんなところを回って、収入とか地位とか人種とか宗教とか健康とかに左右されない、ユニバーサルな幸せってなんなのかというのを探る旅に出たんです。幸せの仕組みをつぶさに観察しながら、脳医学の先生や心理学の先生と何が人を幸せにするのかというのを検証してドキュメンタリー映画『happy -しあわせを探すあなたへ』を制作しました。
enmono 何ヶ国くらい取材されたんですか?
清水 世界16ヶ国回りましたね。
enmono その中で一番印象に残っている取材対象の方ってどういう方ですか?
清水 例えばアメリカ人のテキサス州に住んでいる女性の方で、元はミスコンとかに出られちゃう綺麗な人で、子どももいて旦那さんもいて、幸せな生活を送っていて、まさにリア充だったんですけど、ある日交通事故に遭って顔の半分をなくしちゃったんですよ。それで人生落ちるところまで落ちちゃったんですね。旦那さんもショックで鬱になっちゃって、結局離婚しちゃって。さらには事故による脳への衝撃で、子どもの頃の埋没していた記憶が戻ってきて、その記憶っていうのが父親に性的虐待を受けていたというものだったんです。もう三重苦みたいな状態ですね。それで寝たきり状態で、自殺を考えてギリギリまで行ったんだけど、戻るきっかけがあった。それがなにかというと、今日のテーマでもあるマインドフルネス。
●マインドフルネスとは、心を調えること
enmono 僕らは起業のきっかけがリストラなんですよ。リストラされて、その時奥さんがインドに行ってて、僕は家に一人でいるわけですね。奥さんが旅から帰ってきたら、家の観葉植物が全部枯れてるわけです。どうも人の(マイナスの)意識を浴びてそうなってしまったようで。
清水 水をあげていたのに?
enmono 水は一所懸命あげてるのに枯れちゃったんです。それでどうした??のみたいな話をしていて、自分自身を自分の力で回復させるために、まずはYotubeなど見ながら見ようみまねで坐禅を始めたところから僕の禅修行が始まったんですけど。禅寺には何度か通い僧侶の方から指導をうけましたが、基本的に自宅で禅の修行を重ねて行き、自分で自分自身を自ケアしていく中で段々よくなってきて、ヤル気も出てきて、自分が修行を通じてハッピーになった経験をほかの人にも提供したいということで、禅的な考え方に刺激を受けて生み出した学校「zenschool」を始めたんです。
清水 テキサスの――メリッサさんというんですけど、おそらく三木さんと同じで自分で内省したのがマインドフルネスなんです。視聴者の皆さんはマインドフルネスという言葉をご存じなんでしょうか?
enmono 多分知らないと思います。
清水 この言葉、響きがちょっと怪しいじゃないですか。マインドコントロールみたいな。だけど宗教的なものはなくて、要は心を調える術です。色々大変な時でも心を安定させることはできる。その術(すべ)がマインドフルネス。
清水 ただ、マインドフルネスという言葉が流行ろうが流行るまいが関係なくて、色んな表現があっていいと思うんです。例えば「心をシュッとさせる」とか「心の軸を見つける」とか「優しい集中」とか、心ここに在らずの逆で「心ここに在り」でもいいし、あとは日本人ってなにかやる時に襟を正すことがあるじゃないですか。あれを心の中でやるみたいな感じで。だから表現はどうでもいいと思っていて、けれどもその習慣・アクションを思い起こそうというムーブメントを作りたいです。
清水 メリッサさんの場合は瞑想じゃないんだけど、ある友達からアドバイスを受けていて、「変えられないから受け入れようよ」と。今までは受け入れられなかったんですよね。それは意志がなかったんじゃなくて、その前に一度心を安定させていなかったから。そうして一歩一歩受け入れていって、今では――もちろん手術跡とかはわかるんですけども――彼女は昔よりも幸せと言っています。
enmono マインドフルネスというキーワードを知って、Googleのトレーニングに行かれたというのは?
清水 そこまでには1ステップあって、映画『happy』は心理学の先生、脳医学の先生、色んなお坊さんたちと一緒に作りました。作ったらあれよあれよという間に人気作品になったんですね。12個くらい賞をもらったり、あとアメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリア、英語圏のiTunesでナンバー1。おもしろい作品として評価していただきました。それよりも嬉しかった評価がAPA(アメリカ心理学会)の年次総会のオープニング映画とか、ポジティブ心理学という分野なんですけど世界最高峰の「幸せ」を研究する機関の教材になったりとか、そういった意味で科学者たちから「うまくまとめてくれた」という評価を得られた。
清水 日本でも世界でも、心をもっと豊かに優しく幸せになりたいという人はいっぱいいます。それはものすごい需要です。どんどん需要が増えている。答えもあるんですよ。あるんだけど研究論文などでは答えにリーチしない。そこで翻訳機能が必要で。僕らはメディアの人間だから、それを映画という形で伝えました。そしたらドンピシャだったんですね。映画の後にもっとやろうよという動きがあって、ワークショップはどうかなということを提案していったら、どんどんみんなが乗ってきて、名前はベタベタなんですけど「HAPPINESSトレーニング」っていうワークショップを作ったんです。
enmono 世界中で今やってますよね。今年だけでも何ヶ国くらい行きました?
清水 今年だけで……7~8ヶ国。ちゃんと大学とか国際会議で教えてるんですけど、詳しくはWEBサイト(記事末尾にリンク)を見ていただければ。そういう中でこれが2年前にGoogleの人材プログラムで採用されました。
enmono (こちらと同じことを)すでにやられてたんですね。
清水 すごく似てるんですよ。似てるっていってもどっちがコピーライトって話じゃなくて、2700年前にお釈迦様が作ったもので、僕らはそのバージョンなので。僕のプログラムは「優しい心」とか「感謝の気持ち」とか「楽観」とか、言ってることはお爺ちゃんとお婆ちゃんがみかん食べながら孫に言う話みたいなんですけども、今、科学がそのメソッドを解明するので、それをおもしろおかしく伝えようと考えています。
enmono Facebookを見ているとすごく楽しそうで。参加している人の表情もすごくハッピーな感じで。その場で伝えているのはどういうことなんですか?
清水 幸せになるための因子とかドライバーって、もう心理学でわかってるんですね。さっき言ったような優しい心とか感謝の気持ちとか自己効力感とかあるんですけど、それをするためには心がいったん軸をしっかりと持たなければならない。土台がしっかりしないとダメだということです。どうやって軸を作るかというと、人類は今のところマインドフルネスっていう素晴らしいツールを作ってきた。それをいったん鍛えることによって、ほかのドライバー/因子をさらに高めていく。そうすると幸福度は上がるっていうデータに基づいた事実があります。
●自分について考える場――ライフスクール
enmono 後半はライフスクールについてお話を伺いたいと思います。このライフスクールのコンセプトはどんなものなんですか?
清水 いたってシンプルで「幸せに働く、幸せに生きる、を普通にするムーブメント」です。日本では悲しいかな、それが普通ではなくなっている。
清水 今は働いている人がエンジョイしていない会社が多い。
清水 「仕事好き?」「仕事楽しい?」「今幸せに感じてる?」って色んな友達に聞いても「感じてない」という人があまりにも多すぎるので、「じゃあなんのために生きてるの?」となってしまう。そこをちゃんと考えようよと。
清水 現状を変える方法ってのは二つあるかもしれないです。そういった会社を辞めて起業する。好きな人と好きな時間に好きな場所で好きなことをするって起業もあるし、あるいは企業に留まって例えばマインドフルネスを学んで現状を変えていく。変えたものを文化としていくとか。そういった方法もあるんだと思います。皆さんに会社を辞めろと啓蒙しているわけでもないし、社内でなにか変革を起こせと啓蒙しているわけでもない。
清水 「これをしなさい」というわけではないんだけど、ちゃんと自己責任で自分の幸せや仕事の満足について考えないとダメですよね。「じゃあそのためになにをするのか?」「学校作っちゃおうか」と。真剣に自分の人生と仕事に対して、幸せという観点から考えるきっかけを提供する学校を作ろうということになって……。
enmono それ思いついたのいつ頃ですか?
清水 最近です。想いはここ5~6年持っていたんですよ。みんなが萎縮して言いたいことも言えない会社でイノベーションなんか生まれるのかなと懸念していて、例えば今までもハピネストレーニングとかをやっていたんですけど、やっぱりムーブメントを作りたいなと思って。
enmono 最初にお話伺った時に共感したんです。「あ、これって僕らが求めている一つの形かもしれない」と。
清水 ありがとうございます。いろんな経営者の方を知っているけど、成功している人って実はすごく好奇心が強くて、遊び心満載で、いい意味で子どもじゃないですか。だから興味があって挑戦して失敗して立ちあがって、またやるんですよ。そこの部分が成功している起業家の友達とかはみんな共通してるんです。
清水 日本にはもう無能な従順者はいらないんですよ。腕の立つじゃじゃ馬がほしいんです。
enmono そこは最近変わってきてる感じがします。
清水 そこを加速しないと。世界はみんなそうなってるんです。
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●世界では今どういう状況なのか
enmono 世界の流れに日本が取り残されているという感覚はあると思うんですけども、世界ではライフスクール的な動きはたくさんあるんですか?
清水 9月にイギリス・アフリカ・オランダとかに行ってきたんですけども、そういったところを見るにつけ、やっぱり同じ懸念があるんですよ。日本ほど顕著ではないんですけど、1日9to17かわからないけど長い時間ハコに入って、与えられた仕事をこなして、残業もして、生き生きできるのかということを疑問に思っている人が多くて、そういった人たちが集まりはじめてライフスクール的なものを始めてるんですね。もう、一歩先に。
enmono ヨーロッパとかでですか?
清水 そうですね。ググっていただければわかると思うんですけど「Escape the City」というムーブメントがあって、「ハッピースタートアップ・サマーキャンプ」とか、そういうのがイギリスで出てきて、そこからヨーロッパに派生していったりとか。
enmono アメリカとかではどうですか?
清水 アメリカでは「キャンプ・マーベリック」というのが。僕らライフスクールのフォーマットはそこからインスパイアを受けたんですけど、要はビジネススクールなんですよ。ビジネススクールなんだけど、キャンプ場でやるビジネススクールなんです。みんなでキャンプファイア囲みながらビジネスアイデア出し合ったり、河原でマインドフルネス学んだり、イノベーションとかクリエイティビティとかリーダーシップを遊びながら、運動会しながら学ぶ。
enmono 教室の中じゃなくて自然の中で。
清水 そうですね。
●幸せに生きること、幸せに働くこと
enmono ライフスクールはすごく面白い試みで、どんな展開になっていくのかなとすごく楽しみなんですけど、将来像はどう考えていらっしゃいますか?
清水 色んな分野に行きたいなと思って。今は基本「幸せに生きること、幸せに働くこと」なんですけど、前回のイベントは起業家とか新しいビジネスをスタートしよう、仕事のやり方を変えてみようって感じだったんです。同じテーマで春にもう一度やろうと思っています。秋にもやります。それ以外にもちっちゃいイベントをやっていきたいなと思って。その中でやりたいのは、楽天のオフィスみたいに日本人同士で英語をしゃべるような、英語しか使っちゃいけないバスツアーとか。マインドフルネスを学ぶピクニックとか。
清水 あと、これは今仲間とプランしているんですけど、子どもを連れて行かないキャンプとか。夫婦とか彼氏彼女とかが二人で行くキャンプ。で、そこに色んなカップルが集まります。そこに色んな先生を呼びます。子育ての先生とか、ホームスクーリングって海外では流行ってるんですけど、子どもを学校に通わせないで、仲間同士で集まって、ものを教えると。そういうのに興味を持っている人たちは結構いるんだけど、やり方がわからないから、その先生を呼んだりとか。モンテッソーリの先生を呼んだりだとか。
清水 それ以外にせっかく夫婦を呼んでいるんだからラブメイキングの話も恥ずかしがらずにやりましょうよということで、例えばカーマスートラとかタントラを教える先生を呼んできて夫婦で学ぶ。そういう風に変にタブー視するものをなくして、幸せに生きなきゃもったいないじゃんと。そういうイベントもあるし、そうでないものでは親孝行キャンプといって年老いたお父さん・お母さんと一緒に行くキャンプをしてもいいし。マッサージの先生を呼んで、お母さんにマッサージする方法を学ぶとか。
enmono いいですね。
清水 色んな方法があるのかなと思います。それもあって、巡り巡って「なんとかかんとか技能訓練所」みたいな名前にはしなくて、ライフスクールにしたわけです。
●ようやく浸透し始めたマインドフルネス
enmono 僕らが一つ興味があるのは、日本ではまだマインドフルネスがメジャーではなくて、最近ようやくワークショップをやってみないかというところが増えてきたかもしれないんですけど、もっと日本の企業にそういうのを導入する流れを作っていきたいなと思っているんです。今やられていて感じるところはありますか? 少し流れが出てきたとか。
清水 マインドフルネスを企業プログラムとして教え始めてもう4年になるんですけど、はじめは「なにこの怪しいの……」っていう門前払いですね。簡単なトライアルとかやると、クラスの後ろの方にお二人くらいは「人事から言われて来たけどさぁ……」みたいな人がいて、始めから挑戦気味なんですね。
清水 だからそういった意味で結構難しかったんですけど、今は二つの流れがあって、一つはシリコンバレーでやっているような「Search Inside Yourself」の類いを段々見聞きするようになってきた。人事とかビジネスの中でもこれが公用語になりつつあるので、ここ1~2年ですごい楽になったんです。
清水 もう一つは供給サイドではなくて需要サイドでみんなもうあっぷあっぷなんですよ。仕事でどんどんプレッシャーに押しつぶされそうになっている。技術は発達しているんだけど、どんどん忙しくなっている。
enmono ITが出てきてから。
清水 そう、ITはツールだから楽にしてくれるはずなのに、そうはならなかった。そこで企業さんとかは色んな研修を提供したんですね。例えばシックスシグマとかロジカルシンキングとかリーダーシップ研修とか色々やるんだと。確かに賢いことを教えてくれるんですよね。で、ツールを教えてくれるんですよ。例えばこれiPhoneですけど、ツールのイメージはアプリをダウンロードして、これやるとリーダーシップがピューンってアップするとかイノベーションがピューンみたいな感じでやっているんだけど、その前にみんなもうあっぷあっぷ過ぎちゃって、対応できない。なぜならばOSのアップグレードをしてないんですよ。
enmono 心のOS?
清水 うまい言い方です。心のOSのアップグレードをうまく教えるっていうのが今需要サイドからそのニーズが高まってきている。心に入っていかないとダメなんですね。精神科医の先生はものすごい偉い研究をしているんですけど、伝える手段は「論文」という人たちが多いんですね。そこで僕みたいなへんてこりんがワークショップ形式で教える。方法論はシリコンバレーらしきところから出てきた。実はやっていることは日本の禅じゃないのっていういのはあるんですけど。
enmono マインドフルネスっていう言葉は僕らは去年くらいにようやく知ったんですけど、日本の元々持っている禅というのもあるから、日本の企業には和式マインドフルネスとかそういうアプローチもあるんじゃないかなぁと今はそういうのを探りながらやっているところです。
特に大企業より中小企業の方がダイレクトに実績に繋がりやすいのは、みんな経営者なので自分がOSをアップグレードするとすぐ業績に反映されるんですよね。だから中小企業側もかなりやり甲斐があるなと。
清水 僕は中小企業さんとあんまり接点がないからアレなんですけど、経営者・創業者の思想がすぐに反映されやすいのは、すごくありがたい。マインドフルネスって一見へんてこりんじゃないですか。だけれども、彼らが価値をわかっているから、ダーンと入れちゃう速度感がある。
清水 大企業になるとHR(※)の近所の人たちがそれなりのノーム(規律・規範)がある中で、ちょっと体験会に来てくれて「うわぁ、目から鱗!」ってなるんですけど、よく聞くのは「でもこれ、どうやって上に伝えましょうかね」っていうので。
※HR……ヒューマンリソース。人的資源を最大限活かすための戦略を推進する部門。
enmono 皆さんそれで悩むんですよね。
清水 そう。だけど中小企業は比較的やりやすいと思いますね。そのフィルターがあまりないから。
enmono なので、そこの評価指標をある大学と共同研究して、質問票を使って受ける前と受けた後、幸福度がどれくらい上がったかとか、結果としてそれが業務にどう反映されたのかというデータをとっていきたいなと思っています。そういうのが取れてスタンダードになると、皆さんそれを使って評価していけると思うんですね。
清水 データお待ちしております。
enmono わかりました(笑)。
●ムーブメントを最終的には根付かせたい
enmono 色んなお話を伺うことができて非常に嬉しいです。割とこういう仕事をしていると「変な人たち」に思われがちなんですよね。
清水 もっと変な人の横にいると立派に見えるじゃないですか。
enmono いえいえ(笑)。僕らがzenschoolというのを始めて、実際かなり業績の出ている人も多いんですけど、それをうまく説明する言語を僕ら自身も持っていないわけです。瞑想したらよくなるよといっても、それは証明されていないことで、世間的にはなかなか受け取ってもらえない。そこでマインドフルネスという言葉が出てきたから非常にありがたいなっていう。
清水 そうですね。ムーブメントに終わらせないで、ちゃんと根付くようにしたいですね。
enmono アメリカとかの事例でも、大企業に導入されているんですか?
清水 欧米の方ではいわゆる超優良企業といわれるゴールドマンサックスとかP&Gとかドイツ銀行とかIntelとかGoogleはもちろん、マインドフルネスはデフォルトメニューみたいになっています。
enmono 本当に!?
清水 欧米企業にはVP(Vice President) of FinanceとかVP of Marketingていう役職があるじゃないですか。上級副社長とか。ドイツのソフトウェア会社SAPにはVP of Mindfulnessがあるんです。
enmono うそォ、すごい!
清水 部署はないんですよ。だけども重要度でいうとマーケティングやファイナンスと同じくらいという意図をもって、マインドフルネスがある。
enmono ……衝撃的ですね。
清水 記事はちょっとうろ覚えなんですけど、先日イギリスでマインドフルネス国家戦略というのが。
enmono ああ、ありました。
清水 日本はDNA的にマインドフルネスなくちゃいけないのに、オウムの記憶があるからなんかまだ「ちょっと怪しい」「そういうの近寄りがたい」と感じている間に、どんどんほかの国が心を調え始めていると。
enmono 日本も今年から来年にかけてそういう時代になっていくんじゃないですか。
清水 政治家さんたちが心に興味がないから時間がかかるかもしれないですけどね。
enmono じゃあマインドフルネス担当大臣を作らないと。
清水 一億総なんとか大臣ができたくらいですからね。
enmono あるいはお坊さんが大臣になっていただけるといいんじゃないかなと思います。
enmono お話はまだ尽きないんですけどお時間となってしまいました。今日は本当にありがとうございました。
清水 ありがとうございました。
対談動画
▼Facebook 清水ハン栄治さん
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