オンボロ人生からの脱却 〜5〜
家に閉じこもったことで、自分のことを見つめ直すことが多くなった。
あぁ、何やってるんだろ。
こんなん生きてる意味あんの?
何で生きてるんだっけ。
生きないとしたらどうなる?
きっと何も思わないだろう。
暗い言葉しか浮かばない。
別にそれでも構わないとさえ思った。
そんな中、少しだけだが、今の状況を打開できるかもしれない案を1つ思いついた。
もう学校、やめようか。
凄く浅はかな考えであることは十分わかってる。
ただ、今の地獄の状況から抜け出すにはこれしかないのだ。
でも、学校をやめるという案を出してみたとはいえ、やめた先のことに関しては一切想像つかないし、上手くやっていける自信なんてどこにも無かった。
インターネットで、高校をやめた後のことについてどうすればいいかを調べてみたが、全くいい答えは思いつかなかった。
いっそのこと芸能人にでもなるか?とか本気で考えるくらいには何も出てこなかった。
そっちの方で上手くやっていける自信がなかった私は、結局高校生を続けることにした。
ただ、今の場所に通うという覚悟を決めた訳ではなく、別の場所に行ってもう一度ゼロからやり直そうという覚悟を決めた。
それが、今現在私が通っている通信制高校だ。
学校を変えようと言っても、まぁそんなすぐには変えることはできなかった。
親に相談してから1ヶ月くらいは揉めたし、学校の先生にも止められた。
その揉めているときに毎回言われるのは、
「通信制高校は世間的にイメージが悪いからこの先大変だ」とか、
「もしお前が大学進学を目指すならかなり厳しいと思うぞ」とかだったと思う。
確かにそんな風に感じていた部分もあったが、その時の私は世間体にも大学進学にも目を向けられるような自信は一切ないほど崖の崖に立っていたので、親や先生の言葉は引くほど響かなかった。
さらに私は1度決めたことは何としてもやらないと気が済まないクソガキ精神を持っていた。
そして見事全ての人を納得させ、通っている学校をやめることができた。
9月の半ば頃、私は次に移る学校との手続きを全部済ませたが、実際に高校に通えるようになるのは10月からだったので、それまでは前のところに通わなければならなかった。
親からは、あとちょっとしか行かないんだから残りの日数はちゃんと学校に通えと言われていたが、体調に関しては案の定だったので、私は午後から通うことにした。
どこから噂が流れたのかは知らないが、クラスのみんなは私が学校を変えることを知っていた。
「あと2週間くらい学校こいよー」
とか、こっちの事情を一切知らないような軽い口調で多くの人にさんざん言われた。
まぁでも、この人たちからしたら別に私が学校へ来ようが来まいがどうでもいいんだろうなと割り切ることはできた。
それまでも学校にずっと通っていた訳じゃないんだし、私がいなくなったところで何も変わらないんだろう。
しかし、それが何故か悔しかった。
確かに私は、1年以上はこの学校にいた。
色んな人と話をしたし、色んな思い出も作ってきた。
でも、それは単なる自分の思い出に過ぎず、他人の思い出の中へは干渉することができなかったのだ。
みんなにとっては、私はただのモブキャラ、むしろそれ以下の存在だったのだ。
何も特別な人になろうとしていた訳じゃない。
それを求めていた訳でもない。
結果、誰の心にも残らなかった。
ただ、単純に、その事実が非常にやるせなかった。
私は結局孤独だ。
以前の私だったら、初めに絶望の感情がやってきただろう。
でも、今回の私には、怒りや悔しさがこみあがってきていた。
見返してやりたい。
別に誰かに何か嫌なことをされた訳でもないのに、私はそう思った。
だから、クラスに手紙を書いてみた。
最後にいたクラスには思い出もほとんどないし、思い入れもあった訳でもない。
ましてや、こんな方法で見返すことができるはずがない。
それは分かっていた。
ただ、手紙なら。
手紙を書けば、今までの自分の絶望や苦しみを。
誰かが共感してくれる。
そして、たった1人だけでも。
私の名前が思い出に刻まれる。
なんの根拠もなかった。
それでも、きっとそうなると自信があった。
9月31日、さいごのひ。
当たり前みたいな顔をしたまま放課後に学校に着いた。
職員室に行き、4枚の便箋が入った封筒を担任に渡した。
お世話になりましたと頭を下げ、学校を出た。