チームでのコミュニケーションのあり方〜Design Matters Tokyo 2022 参加レポート〜
コミューンのUXライターのダイゼンです。先日、Design Matters Tokyo 2022 に行ってきました。
とても刺激を受けたので、感想とともに、登壇で話されていたことや会場の様子を、2つのテーマに分けてレポートします!
わたしが参加したDesign Matters Tokyoとは:
2020年が前回の開催で、今回は2022年。
この2年間に起こったことから、「これからの未来をどうデザインするか」ということをベースに、コミュニケーションや働き方、持続可能性、多様な人種・性別・コンテクストの共存などのテーマが、全体的に多かった印象です。
わたし自身、海外でマイノリティとして暮らしてきた経験や、障害を持った人や高齢者が周りにいるため、より多くの人が関与できるプロダクトづくりや働き方に興味がありました。
また、わたしは大人数でのコミュニケーションが苦手ですが、仕事でどうしても多くの人を巻きこまなければならないと感じる場面があります。
同じ空間にいなくても信頼関係を築いたり、誰もが参加しやすい環境を作るということに興味がありました。
執筆した2つの記事は、「チームでのコミュニケーションのあり方」「多様なバックグラウンドを考慮するデザイン」をテーマにしています。
リモートでのデザインジャーニーの共有
様々なツールは、オンラインであることを前提に設計されています。
だから、わたしたちもオフィスに集まることなく、オンラインでタスクを完結させることが可能になりました。
しかし、デザインは協働です。
ひとつの体験を作るためには、誰かとのコラボレーションなしでは、良い体験を作ることには結びつかないかもしれません。
登壇者の Ramsés さんは Sketch のプロダクトデザイナーです。
リモートでも、いかに所属意識を持ってデザインチーム を作るか、意味のあるコミュニケーションを行うかについて話していました。
Ramsés さんの働く Skectch にはオフィスがなく、41か国のメンバー(Sketch サイトより引用)を繋いで100%リモートです。
だからこそ、リモートで働く環境での3つの大事なことを挙げていました。
🤝 コラボレーション
ポイントとして、「Interdisciplinary」と「Multidisciplinary」を挙げていました。
様々な知識を合わせて、ひとつのアプローチ (例えばデザインだけ) でなく、複数のアプローチで、総合的に関わり合うということが「Interdisciplinary」。
部門間を超えて、チーム以外の人とも積極的に関わることが「Multidisciplinary」です。
そして、全員リモートであるため、常に同期しているわけではない、ということを理解し合い、考える時間や個人の時間を尊重することも大事であると話していました。
メッセージの返信もすぐにしなければならないというわけではありません。
精神的なスペースを確保する、という意味でも尊重し合うことは重要です。
🗣 意味のあるコミュニケーション
リモートだからこそ、意味のあるコミュニケーションを重視します。
「Work For:〇〇 のために働く」ではなく、「Work With:〇〇 と一緒に働く」と考えることが大事と話していました。
ひとつの手法として、Ramsés さんが実践されている「Design Journal」を紹介してくれました。
これは、日々行ったデザインや決定などを What I did と How I did をすべて書き込むというものです。
デザインやテキストに関することを、ほかのチームとも共有し、さらなる選択肢や意見を探ることができます。
もちろん共有方法は、テキストだけでなく、ビジュアルを含めます。
👫 一緒に考える
1人ではプロトタイプもできないし、プロダクトをローンチすらできないかもしれません。
一緒に考えるプロセスがあるからこそ、リモートでも100%成功するコミュニケーションができます。
文化の複雑性があるということを認識する
国内だけにいると見えづらい、文化の複雑性。
マルコム・グラッドウェル氏の著書「トーキング・トゥ・ストレンジャーズ〜「よく知らない人」について私たちが知っておくべきこと〜」を思い出しました。
知らない人とどう付き合うか、オフ・オンラインでも知らない人と、いつの間にか知り合いになったり、チームメンバーにもなります。
そんな現代を生きているからこそ、人それぞれが持つ文化の複雑性を理解する必要があるのかなと思います。
登壇者の Aditi さんは Shopify のUXマネージャーです。
色々な文化圏に住んだことから、文化・コンテクスト・状況・背景・言語のギャップにぶつかっていた経験とそれを克服したことについてシェアしてくれました。
まず、この世の中の前提として、必ず文化の複雑性やギャップがあることを認識し、常に Miscommunication はある、と始めました。
Aditi さんは「わたしは Bridge Person である」と話していました。
つまり、自分が橋となって、ギャップを克服するということです。
克服するためには、チームのモチベーションを高めます。
文化的な複雑性があるということを認識し、すべての相互作用に気を配ります。
そして、どう対応をするかということと、自分の行動を結びつけます。
文化の複雑性は非常に曖昧です。
時には言語化できない場合もあります。
だから非言語的に表現したり、チームのモチベーションを上げるためにも、ユーモアを取り入れたり、方向性を示すための青写真を用意することも重要だと語っていました。
Aditi さんは、最後にこう付け加えました。
「そもそも違いは、文化だけではありません。時間、場所、状況も違うのです」
ちなみに、Aditi さんのプレゼンは、アイコンやミームが多かった印象です。
アイコンや絵文字は、使い方を間違えると、大きな誤解が生まれてしまいますが、意味が通じるものであれば、コミュニケーションとして強力な武器になるのかなと思いました。
チームで違いを乗り越えるために
COVID-19 で、わたしたちの働く環境は大きく変わりました。
デザイナーだけでなく、多くの仕事は「協働」で成り立っています。
オフィスでのコミュニケーションも、オンラインが当たり前となっている今、コラボレーションをどう行えば良いのか、という課題を抱えている人は多いのではないのでしょうか?
登壇者の Akira さんは YUMEMI のサービスデザイナーとして、組織内だけでなく、クライアントとのコラボレーションも行っています。
その中で、オンラインとオフラインのギャップを埋めるためのコミュニケーションについて語られていました。
「ギャップを埋めるために、最も強力なツールは言葉である」
言葉はコンテクストに依存しますが、言葉の力は強く、異なるコンテクストを克服するツールであると話していました。
デジタルデバイスでコミュニケーションをとることに慣れてしまったわたしたちは、違うコンテクストを常に共有し合って生きています。
その例として、ルビンの壺を挙げていました。
ある人には顔に見えても、他の人には壺に見える。
そのようなことが、コンテクストの違いによって発生しているということです。
もし、言葉を使って、この絵を見ている人たちのコンテクストを合わせたら、見え方が同じになるかもしれません。
Andrew Hinton さんの著書「Understanding Context」から「インフラとしての言葉」を引用していました。
インフラである言葉を整える、デザインすることで、違うコンテクストにいたとしても、効果的なコミュニケーションやコラボレーションができるということです。
チームとして変わるためには、メンバーの個性や状況を、コンピテンシーとして認識をします。
認識をすることで、心理的安全性が生まれます。そして、お互いの成長のために貢献し合う関係性が生まれます。
この流れをつくるためには、やはり慎重に言葉をデザインして、違いを認め合い、ギャップを埋めていくことを継続します。
それにより、リモートでも、より効果的なコミュニケーションできるということです。
まとめ
デザインの力で、不特定多数の人たちの課題を解決することができます。 しかし、「不特定多数」は、必ずしも同じコンテクストを有しているわけではありません。 さらにスコープを近くすると、わたしたちのチームメンバーでさえも、違うコンテクストを持っています。もしかしたら、言葉や住んでいる国が違うかもしれません。
だから、協働することが、良いデザインをするためのキーだと思いました。
もちろん、協働の中でギャップが生まれるでしょう。
そのギャップを埋めるのが「コミュニケーション」であると、登壇者の多くは語っていました。
YUMEMI の Akira さんの話にもあった「インフラとしての言葉」は、筆者の前職通訳での経験でも感じることがありました。
誰しも同じ状況を共有していないので、まずは前提合わせから始めなければいけません。
効率的にコミュニケーションをするための道路を作らないと、事故が発生します。事故とは Miscommunication です。
その事故を防ぐためにも、今は道路の状況が悪い、つまり文化に複雑性があるということを認識して、それを克服するための道筋を考えなければいけません。
チームで生かすために、まずは自分たちの状況やコンピテンシーを共有し、オープンであること。
そして自分たちができることをクロスファンクション的にコラボレーションをすることです。
そして、克服する道筋を計画していくことを、実践でも活用できればと思いました。
*前編の記事「多様なバックグラウンドを考慮するデザイン」はこちらより
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