母親が死んでから5年ぶりに手料理を食った
恋人が家に来て、手料理を作ってくれた。毎日ベースブレッドという栄養食のパンとコンビニ飯しか食べていないと伝えると、さすがに可哀そうになったみたいでオムライスを作ってくれた。地元のスーパーまで一緒に歩いて行った。片道30分ぐらいなのだが、ゴーストタウンまっしぐらの田舎なので、戦時中みたいなポスターや廃墟があるのが珍しいらしく、スマホで写真を撮っていた。僕にとっては子供の頃からある当たり前の風景なのだが、やっぱ辺鄙な場所に住んでるんだなあと思った。まあ楽しそうなので良かった。
野菜が全部食えないので、肉と米と油を買って帰った。
キッチンに調味料が置いてあったのだが、ほとんど賞味期限が2019年だった。母親が死んだ年だった。もう5年になるのかあ、と切なくなった。
5年ぶりに手料理を食べて泣きそうになった。半泣きだったと思う。あったかいご飯は美味しい。卵が半熟でごま油の風味と相まって凄く美味しかった。ケチャップで「大すき」と書かれてあった。
部屋の掃除もしてくれたし、友人に「なんでこんなにしてくれるんだろ」とチャットを送ると「全身で愛を伝えたいんだね」と返ってきた。
今回は、加島祥造の「受け入れる」という僕の好きな詩集と、カフカの「変身」を持って帰った。この人なら僕が急に虫になっても可愛がってくれそうだな
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