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デヴィッド・リーン監督『戦場にかける橋』戦争がもたらした苦しみ



<作品情報>

ピエール・ブールの同名小説を名プロデューサー、サム・スピーゲルと巨匠デビッド・リーンのコンビで映画化した戦争大作。第2次世界大戦下の1943年、ビルマとタイの国境付近にある捕虜収容所を舞台に、捕虜となったイギリス人兵士と、彼らを利用して橋を造りたい日本軍人たちの対立と心の交流を描く。出演はウィリアム・ホールデン、アレック・ギネス、早川雪舟。57年度のアカデミー賞では作品賞、監督賞を含む7部門で受賞した。

1957年製作/155分/アメリカ
原題:The Bridge on the River Kwai
劇場公開日:1957年12月25日

https://eiga.com/movie/46213/

<作品評価>

70点(100点満点)
オススメ度 ★★★☆☆

<短評>

おいしい水
何度も書いてますがそもそも戦争映画が苦手なのでそこまで楽しめなかったのですがまあ名作だと思います。ただ『アラビアのロレンス』で感じた間隙の美のようなものがあまり感じられなかったのが少し期待外れでした。
やはり日本軍が悪の立場として描かれると居心地が悪く感じてしまい、逆説的に自分って日本人なんだなぁと思ってしまいました。脱線ついでに言うと若い頃の早川雪洲の写真調べたんだけど、美しすぎます。美輪明宏に近い東洋的な妖しい美男…
有名なクワイ河マーチに始まり捕虜として、人間としての尊厳のために団結し建設した橋、しかしそれは結局は意味がなかった…という皮肉な話をリアリティたっぷりに描き出しています。それぞれの心の機微、特に斎藤大佐の弱さを出せない苦しみと屈辱、ニコルソンの正義感と自尊心のせめぎあいの描写が素晴らしかったですね。

吉原
本作にはメインキャラクターとしてイギリス軍とアメリカ軍と日本軍が登場します。英と米が日本の捕虜になる海外の作品なので、日本が批判的に描かれているのかと思いきやそういうわけでもありませんでした。日本軍のトップである斉藤は最初こそ、捕虜に対してぞんざいな扱いをしていたけど、それでは計画がうまくいかないと理解し、どうすれば計画を成功に導くことが出来るかをきちんと把握できている人間として描かれています。その上で、イギリス軍将校の不屈の精神とリーダーとしての素質を描いているので、アレック・ギネス演じるニコルソンと早川雪洲演じる斉藤は軍人魂、武士道というお互いの信条の基に平等に描かれていたという印象を抱きました。最終的にイギリス軍と日本軍が協力して橋を完成し、ストックホルム症候群に陥るわけですが、これはお互いの信条に通づるところがあったからだと理解出来ます。
その一方で、ウィリアム・ホールデン演じるアメリカ兵は軍の命令に従うしかなく、意に反した行動をすることを余儀なくされますが、行動力があり、決死隊のメンバーとしては申し分ないキャラクターでした。
ラストの橋の爆破のシーンは圧巻で、この危険な撮影のためにどれだけの人材と資金が注ぎ込まれたのだろうと誰もが想像することでしょう。「ワイスピ」みたいにCGでやってしまえば、それまでだが、アナログな撮影でしかなし得ない魅力が本作にはありました。

<おわりに>

 デヴィッド・リーンらしい圧巻の映像に呑まれる映画体験でした。作品賞受賞も納得の名作です。

<私たちについて>

 映画好き4人による「全部みる」プロジェクトは、映画の可能性を信じ、何かを達成したいという思いで集まったものです。詳しくは↓


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