ラドゥ・ジューデ監督『アンラッキー・セックス またはイカれたポルノ』奇妙すぎるルーマニア映画
<作品情報>
<作品評価>
60点(100点満点)
オススメ度 ★☆☆☆☆
<短評>
おいしい水
何に驚いたってJAIHOが配給であること!確かに普通の配給会社ではこの作品は公開できないだろうと思います。
自己検閲版とはいえ露骨な性描写、攻めた政治的思想など物議を醸す要素が無数にあります。
先日それこそJAIHOで観た、割と正攻法でつくられた『アーフェリム!』とは全く異なる作風でした。
パート2は最近のゴダール風というか、コラージュや再現ビデオ、実際(風?)の映像を交えて世の中の混沌を表します。それでもゴダールは結局「世界、芸術の美しさ」を表すのですが、ラドゥ・ジュテは「世の中の醜さ、愚かさ」をこれでもかと見せてきます。
ラドゥ・ジュテの「この世の中はクソだ!」というのに共鳴できればいいのでしょうが、やはり僕はそれには完全には賛同しかねます。人は愚かで不完全、だからこそ美しいんじゃないのかと思います。
マルチエンディングは面白かったですし、「え!これで本当に終わり!?」という笑いで劇場を後にできました。
これはなんだろう、とにかく見てとしか言えません。タッチは全然違いますが、コロナ禍でより拡大した、人々の不寛容、無意識の悪意や偏見を描くという点で石井裕也『茜色に焼かれる』を思い出しました。
奇妙奇天烈なブラックコメディかというとそれだけでもなく、『アーフェリム!』にも通じる映画的センスは確かにあると思います。壁に描かれた絵や色んな店であったり、巨大なシャボン玉を道端でつくるおじさんですとか、建物の上に置かれたギリシャ風の裸体像ですとか、直接は関係ないですが風刺にも思える描写が的確に配されています。
とにかく奇怪な作品で、戸惑うばかりの映画でした。
吉原
金獅子賞を受賞した作品ということもあり、かなり期待して観ましたが、正直なところ評価が難しい映画でした。映画は3部構成になっており、第1部と第3部ではコロナ禍の中、自身のセックステープが流出してしまった女性教師が描かれています。第2部では、ルーマニアの美と悪がゴダール的なコラージュで表現されていました。
監督が伝えたいメッセージは理解できたものの、全体的に尺が少し長く感じられました。特に第3部では、女性教師の処罰を保護者が議論する非常に興味深い場面があり、見応えがありましたが、第1部は何が起きているのかよく分からず、かなり退屈に感じました。
日本で公開されたバージョンは、検閲が入ったという話を聞きましたが、男性器や挿入シーンまでしっかり映っていたので、何を規制したのか非常に気になりました。
<おわりに>
ひたすらに戸惑うばかりの映画でした。ラドゥ・ジューデ監督、恐るべしといった感じです。
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