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ラドゥ・ジューデ監督『アンラッキー・セックス またはイカれたポルノ』奇妙すぎるルーマニア映画



<作品情報>

ルーマニアの鬼才ラドゥ・ジューデ監督が、世界的パンデミックとその後の社会の閉塞感を背景に、人間の「性」をアイロニーに満ちたまなざしで描き、2021年・第71回ベルリン国際映画祭で金熊賞に輝いた作品。コロナ禍のブカレストの街をさまよい歩く女性エミ。名門校の教師である彼女は夫とのプライベートセックスビデオをネット上で拡散されてしまい、夜に開かれる緊急保護者会を前に、事情説明のため校長宅へ向かっていた。彼女の不安といらだちは街の人々が抱える怒りや絶望と重なりあい、猥雑で怒りをはらんだ空気が徐々に膨れ上がっていく。日本では「イメージフォーラム・フェスティバル 2021」で特別上映された後、ジューデ監督自ら追加編集を施した「監督〈自己検閲〉版」を劇場公開。「監督〈自己検閲〉版」はぼかしやカットの追加のみならず、ジューデ監督によるアイロニカルでユーモアあふれるメッセージが本編の所々に映し出される。

2021年製作/106分/R15+/ルーマニア・ルクセンブルク・クロアチア・チェコ合作
原題または英題:Babardeala cu bucluc sau porno balamuc
配給:JAIHO
劇場公開日:2022年4月23日

<作品評価>

60点(100点満点)
オススメ度 ★☆☆☆☆

<短評>

おいしい水
何に驚いたってJAIHOが配給であること!確かに普通の配給会社ではこの作品は公開できないだろうと思います。
自己検閲版とはいえ露骨な性描写、攻めた政治的思想など物議を醸す要素が無数にあります。
先日それこそJAIHOで観た、割と正攻法でつくられた『アーフェリム!』とは全く異なる作風でした。
パート2は最近のゴダール風というか、コラージュや再現ビデオ、実際(風?)の映像を交えて世の中の混沌を表します。それでもゴダールは結局「世界、芸術の美しさ」を表すのですが、ラドゥ・ジュテは「世の中の醜さ、愚かさ」をこれでもかと見せてきます。
ラドゥ・ジュテの「この世の中はクソだ!」というのに共鳴できればいいのでしょうが、やはり僕はそれには完全には賛同しかねます。人は愚かで不完全、だからこそ美しいんじゃないのかと思います。
マルチエンディングは面白かったですし、「え!これで本当に終わり!?」という笑いで劇場を後にできました。
これはなんだろう、とにかく見てとしか言えません。タッチは全然違いますが、コロナ禍でより拡大した、人々の不寛容、無意識の悪意や偏見を描くという点で石井裕也『茜色に焼かれる』を思い出しました。
奇妙奇天烈なブラックコメディかというとそれだけでもなく、『アーフェリム!』にも通じる映画的センスは確かにあると思います。壁に描かれた絵や色んな店であったり、巨大なシャボン玉を道端でつくるおじさんですとか、建物の上に置かれたギリシャ風の裸体像ですとか、直接は関係ないですが風刺にも思える描写が的確に配されています。
とにかく奇怪な作品で、戸惑うばかりの映画でした。

吉原
金獅子賞を受賞した作品ということもあり、かなり期待して観ましたが、正直なところ評価が難しい映画でした。映画は3部構成になっており、第1部と第3部ではコロナ禍の中、自身のセックステープが流出してしまった女性教師が描かれています。第2部では、ルーマニアの美と悪がゴダール的なコラージュで表現されていました。
監督が伝えたいメッセージは理解できたものの、全体的に尺が少し長く感じられました。特に第3部では、女性教師の処罰を保護者が議論する非常に興味深い場面があり、見応えがありましたが、第1部は何が起きているのかよく分からず、かなり退屈に感じました。
日本で公開されたバージョンは、検閲が入ったという話を聞きましたが、男性器や挿入シーンまでしっかり映っていたので、何を規制したのか非常に気になりました。

<おわりに>

 ひたすらに戸惑うばかりの映画でした。ラドゥ・ジューデ監督、恐るべしといった感じです。

<私たちについて>

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