奴隷の哲学者
エピクテトス。彼は奴隷としての日々を送りながら哲学を学び、それによって奴隷を脱し、晩年は哲学の先生として穏やかに暮らしました。
しかしながら彼の考えは死後とても大きな影響を与えました。ローマ帝国の五賢帝の一人、哲人皇帝 マルクス・アウレリウスの愛読書はエピクテトスの本でしたし、広く東洋まで伝わり、それは夏目漱石の愛読書でもありました。
そんなエピクテトスが語った、こんな言葉があります。
「あなたは自由に生きたいか?そうではないか?もし自由に生きたいのであれば、我々次第でないものを軽く見なさい。」(省略意訳)
私達の周りには我々次第ではないものが沢山あります。仕事の成果もそうです。他人からどう見られるかもそうです。誰かに愛されるか、お金があるか、容姿が良いかでさえ我々次第ではありません。必ずその中には偶然性が含まれています。
それを悔しがるな、羨ましがるなというのも中々難しいかもしれません。しかしこの「軽く見なさい」というのがとっても現実的で、良いアドバイスだと思うのです。
また面白いなと思うのが、エピクテトスはローマの人、つまり西の人です。そしてブッダはインドの人、東の人ですが、共に同じようなことを説いています。
ブッダは自分の思い通りにならないものに執着するのをやめなさいといいます。それが苦しみの元だからだと。
人生で起こるハプニングは選べません。しかしそれをどう受け止めるかによって人生は大きく変わります。
智慧があるとは、思い通りになる事とならない事を分ける事だといわれます。分かるという事はまず分けるという事から始まります。
もしエピクテトスが何不自由ない人生を歩んできた人なら、その言葉を言うのは簡単だったかもしれません。
しかし奴隷として不自由しかない人生を送りながら、智慧を持ち、人生の不運に度々見舞われながらも、ちゃんと幸せな人生を送ったエピクテトスの人生と言葉から、私はとっても勇気をもらえるような気がしています。
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