雪解け、春
雨の上がった帰り道、春の匂いしたねって彼女が笑った。ちょっと一息ついて会話を続けようとしたら、私の鼻腔にもふわっと生ぬるい香りが届いた。
本当だ、って言うとあの子は嬉しそうにしてた。こういう感覚を共有できる人の希少価値に気付く日々。想いやモノの価値を選択する毎日に流されないように必死で。
もう春なんだ、2月とは思えないような気候と青空だけれど、たまに降った雪のあとに澄んだ空気が綺麗だと思った。
眠りが浅いのか、とにかく沢山夢を見ている。深夜に目が覚めても、時計を見ないようにしてまた毛布にくるまる。
色々なこと考えてたら大抵はまた眠れるけれど、喉の乾きだけは私を寝かしつけてくれなくて、浄化した水道水を無理やり口に流し込む。そうしたら身体が生き返ったように潤っていくから、そうしてまた朝を待つ。
そんな夜は無性にマウンテンデューが飲みたくなって、昼下がり、その衝動を抱えたまま私は自販機に向かった。炭酸感の弱い甘さが優しく包み込んでくれるような、まだ眠気まなこのまま、口内が潤されていく。
湯煎で作るオムレツはまだあまりにも半熟だったから、適当に選んだからあげくんをつまみながらこの文章を書いている。これが食べたいとか、飲みたいとか、そういう小さな欲求を、見逃さないように生きている最近のこと。
そうやって自分を奮い立たせて、なんとか立てるよう踏ん張ってる。しょうもないことでも必死かも、そんな自分、結構好きかもなって、ひとりの時間に考えてる。
恋人とシェアして食べるホットスナックが一番美味しいってこの前君と会った時に気付いた。今君と一番行きたいところは話題の回転寿司チェーンです。この前はドライブデートが楽しかったね。ダーリン、いつも心配かけてごめんね。
服を沢山着込まなきゃいけない季節はしんどいと我儘言って困らせてしまった。早く夏になれば良いねって優しい貴方は言う。やさぐれてる私に、暖かい上着をいっぱい買ってくれてありがとう。あと少し暖かくなれば、きっともっと元気になるんだけど。
拝啓 大好きな人たちへ、桜を見に行こうね。薄いアウター羽織って出掛けよう。思い切って髪も切りたいし。君としたいことがたくさんあるよ。春色の柔軟剤を纏って、センチメンタルに拍車をかけて生きてこうね、一緒に。
甘い夢の続きみたいな、春がもうすぐ。