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Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【3月2日㈬~3月8日㈫】

3月4日㈮、遂に“ピエル・パオロ・パゾリーニ生誕100年記念上映”『テオレマ 4Kスキャン版』と『王女メディア』が都内2館(ヒューマントラストシネマ有楽町新宿武蔵野館)で公開となりました。お陰様で好スタートです!

初日の夜、『テオレマ~』上映前に新宿で行われた俳優 三上博史さんのトークショーは満席。パゾリーニは、十代の頃「天井桟敷」(寺山修司氏の劇団)に在籍していた当時、周りの団員の方々の口によく上っていて、その名前を覚えたのが最初だそう。テレンス・スタンプはオムニバス映画『世にも怪奇な物語』(’67)の中の一話「悪魔の首飾り」(フェデリコ・フェリーニ監督作)で観たのが初めてだそうです。2015年に日本テレビ系で放送された紀行番組「アナザースカイ」で、ロンドンのテレンス・スタンプを実際に訪ねて対談した時の裏話は、なかなか聞けない貴重なエピソード満載。30分あまりの短い時間でしたが、ご来場のお客様も楽しんでくださった様子で何よりでした。

三上博史さんの登場を待つ満席のお客様たち

先週の当通信で書いた通り、ザジでは三上さんに予告篇のナレーションをやって頂いたことがあるので、お会いするのは二度目なのですが(「会う」というより「見た」というほうが正しい気がしますが)、相変わらずカッコいい。気難しそうに見えるかもしれませんが実際は気さくで、当日聞き手を担当してくださった矢田部吉彦氏との、トーク前の打ち合わせも笑いが絶えませんでした。また何かお仕事ご一緒出来る日が来ると良いな。

そして翌5日は、パゾリーニの、生きていれば100歳の誕生日当日。この日は有楽町に場所を移し、『王女メディア』上映後にパゾリーニ研究の第一人者である映画誌・比較文学研究家の四方田犬彦さんに、パゾリーニの映画の見方のヒントを、分かり易くお教え頂きました。こちらも満席になりました!

私的に目から鱗だったのは、メディアは夫イアソンが別の女性になびいたことを恨んで復讐に燃えたワケではなく、アルゴ船探検隊の少年たちと無邪気に戯れる姿に嫉妬したのだ、という解釈。いわゆる女性が立ち入れないホモソーシャルな世界に絶望した、ということだそうで、それでいうと『王女メディア』の日本版予告のラスト、目を見開いたメディアのアップの直前に、少年たちと踊るイアソンのカットが入っているのは、まったくもって正しい編集だったと言えます。予告篇ディレクター、さすが!

四方田犬彦さんのお話に聞き入るお客様たち

それにしても『テオレマ』も『王女メディア』も、まったく一筋縄ではいかない映画。作品の理解を深めるために何度も観て頂けるよう、リピーター割引とか考えれば良かったかもしれませんね。失敗!

さて。話は変わりますが、1月の当通信で、新規に買い付けたとご報告済みだったアニエス・ヴァルダ監督作品『冬の旅』(’85)。「この春に都内で行われる特集上映の中での1回限りの上映のため」とお伝えして、そのままになっていましたが、来週15日から東京 京橋の国立映画アーカイブで始まる上映企画“フランス映画を作った女性監督たちー放浪と抵抗の軌跡”の中の1本なのでした。リュミエール兄弟が映画を発明して間もない1896年から活動を始めた監督アリス・ギイの作品集の上映をオープニングに、ジャンヌ・モロー、ユーザン・パルシー、現在活躍するセリーヌ・シアマ、ミア・ハンセン=ラヴまで、女性監督の映画の歴史を振り返ります。『冬の旅』の上映は3月26日㈯の15:00から。東京近郊の方、ぜひご来場ください。私は去年の夏行われた特集上映“カンヌ国際映画祭とフランスの女性映画監督たち”で見逃したセリーヌ・シアマ監督の『ガールフッド』をこの機会に観たいな、と思ってます。

フライヤーの表紙は『冬の旅』のヴァルダと主演サンドーヌ・ボネールのオフショットです!

最後にもう一つ、映画祭の話題。17回目を数える大阪アジアン映画祭も来週10日(木)から始まります。近年はザジとはとても縁がある映画祭。一昨年は『ハッピー・オールド・イヤー』(’19)がコンペ部門で上映され、見事グランプリを受賞、去年は特別注視部門で上映された『三姉妹』と出会い、買い付けて本年6月いよいよ公開。今年も2泊3日で10本を観るスケジュールを立てています。今年も注目作が多くて、とても楽しみです!

が、悩みの種は夕飯…。マンボウ下の大阪、夜の回の上映が終わると、もうどこの店もやってないことが容易に予想されます。去年は一泊目の夜がコンビニ弁当、二泊目はまだ開いてる吉野家を探しまくってテイクアウトで牛丼。せっかく大阪に行くのに今年も同じようなことになりそうだなぁ。でも映画を観る本数を減らして、美味しい物を食べるなんぞ本末転倒なので、そこは我慢します!せめて上映と上映の間にデパ地下に行って、美味そうな弁当を選びたい!

texte de Daisuke SHIMURA





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