【ss】ネコクインテット (毎週ショートショートnote参加)
上水沿いの細い道の脇にその店はあった。
漆喰の白壁に木製のドア、カフェカーテンのかけられた窓を覗くと色の統一されたテーブルと椅子が並んでいる。
【We are open
ネコクインテット】
と書かれたドアを押すとドアベルが鳴る。
可愛い猫達が迎えてくれるかと思ったら、出てきたのはニット帽を被った髭面の男性だった。
「いらっしゃいませ」
ぼそぼそ言ったきり席に案内してくれないので、勝手にカウンターに座る。
「ネコちゃんいないんですね」
「え、いや、なんで」
小さな絵本のようなメニューを開く。
「コーヒーとかスイーツはないんですね」
「え、いや、なんで」
ネコクインテットは昼から飲める居酒屋だった。
タコわさともろキュウをつまみ、焼酎のお湯割りを飲んだ。
支払いを済ませ外に出た時、振り返ったら無くなっているんじゃないかと思ったけど、振り返っても変わらずあった。
ほろ酔いの私は、
「え、いや、なんで。え、いや、なんで」
とつぶやきながら家路についた。
(411字)
#毎週ショートショートnote #短編小説 #ショートショート #掌小説 #猫 #ほろ酔い文学
※はじめて参加してみました
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?