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【落語deざわざわ #第二席】『長屋の花見』に見る、一体感の醸成と組織カルチャー

【落語deざわざわ】とは、現代のさまざまな諸問題を古典落語の演目にこじつけて論じるコンテンツです。基本的に「若い衆(わかいし)」と「横丁のご隠居さん」との会話スタイルで展開(例外もあります)しますが、内容はいたって無責任ゆえ気軽な読み物(時々深いかも)としてお楽しみください。

第二席目は『長屋の花見』です。

あらすじ(前半、端折ってます):
揃いも揃って店賃を入れていない貧乏長屋の面々が、大家さんに花見に誘われます。
酒、肴は全部大家さんが揃えたといいますが、そこは流石の貧乏長屋。
酒は番茶を煮だして薄めた、お茶け。
たくあんを玉子焼き、大根のお香々を蒲鉾と見立て、莚(むしろ)を毛氈(もうせん)に見立てて上野のお山に繰り出します。
長屋の面々は、お茶けを飲むにあたっては「燗をつけろ」だの「いやいや焙じた方が」など好き勝手言っています。
蒲鉾を食べるとなると「これが好きで毎朝味噌汁の実に」とか「胃の悪いときには蒲鉾おろしにしまして」とか、
「最近は練馬の方でも、蒲鉾畑が少なくなりまして」とか「こりゃすっぺぇ」など好き勝手言います。
玉子焼きにいたっては「尻尾じゃねえとこを、くれ」などと言い出す始末。
月番は大家さんに「景気良く酔っ払え」と言われて、
「酔った~。酒飲んで酔ってるぞぉ。貧乏だ貧乏だって馬鹿にすんなよぉ。借りたもんは、利息をつけて返してやらぁ。悔しいから店賃だけは払わねえぞ」と言い出します。
たまらず大家さんまで「わりぃ酒だな。これは灘の生一本だぞ」と言い返します。
なんだかんだで、なかばヤケ糞気味に大家さんともども長屋の面々も盛り上がってきます。
と、一人が湯のみをじっと見て
「大家さん、近々長屋にいいことがありますよ」
「そんなことがわかるのかい」
「酒柱が立ちました」

※入船亭扇遊 師匠の高座が鮮烈に記憶に残っています。
 故 柳家小三治 師匠の高座もたいへん素敵でしたがこちらはTVで観たので、ライブで観た方を上げておきます。

若い衆:
凄いですねぇ、この長屋の連中。なんだかんだ言って皆んなで大家に乗っかってますね。一体感ハンパないっすね。いいっすよね、一体感があるって。

横丁のご隠居:
危険だな。

若い衆:
は?

横丁のご隠居:
危険だっつってんだよ。

若い衆:
危険、すか? いいじゃぁないすか、皆で盛り上がって。蒲鉾だって玉子焼きだってお茶けだって、楽しいでしょうよ、こんだけ皆んなで一緒になってヤケ糞になれれば。

横丁のご隠居:
この噺の連中はいいんだよ。危険なのはお前さん。

若い衆:
あっしが? 危険?

横丁のご隠居:
そう、お前さんの捉え方が危険。上っ面だけなぞって、ただ単に「一体感、一体感。一体感いいぞ!」と連呼しても圧力にしかなんないぞ。ましてやそれがでかい組織だったら同調圧力とかファシズムを生み出しかねんぞ。

若い衆:
なんかご隠居、話を危険な方向に持っていこうとしてません?

横丁のご隠居:
そうでなくて、大事なのは「自然と一体感が生まれてくるような“組織カルチャー”の醸成」ってぇことだ。もちろん、情報操作によるカルチャー醸成はだめだぞ。

若い衆:
組織カルチャー、っすか。

横丁のご隠居:
この噺では、共通キーワードとして“貧乏”ってのがあるな。いっそのこと開き直って、大家ともども“貧乏”を遊んじまおうってぇところがこの長屋のカルチャーであって、そこから一体感が自然に生まれてるってぇことなんだよ。まぁ、ヤケ糞かもしんないがな、考えようによっちゃぁ、それもカルチャーよ。

若い衆:
はぁ。カルチャーっすか。

横丁のご隠居:
ヤケ糞だけど“貧乏”を遊んじまおう、ってぇカルチャーがなかったら「酒柱が立って、縁起がいい」なんて返せるもんじゃぁねぇぞ。同調圧力の下では「あぁ、そうですね。美味しいですね。なぁ皆んな、酒も蒲鉾も玉子焼きもうめぇな!(泣)」「だよな!(泣)」って我慢して終わりだろ。

若い衆:
ん~。

横丁のご隠居:
そんでな、同調圧力が怖ぇのは、それが皆んなの「思考停止」を起こさせる要因にもなるってぇことだ。ブラック校則を「昔っからそういうもんだから」っつって、何の根拠もなく正しいと信じ込んでる大人たちがいい例だな。そう言やぁ、髪型でツーブロック禁止ってぇ校則があったりするらしいが「サザエさんに出てくる中島くんはツーブロックじゃぁねぇのか?」なんてぇ話がエスエヌエスで話題になったことがあったな。あれ? お前さん、まだエスエヌエスやってねぇのか? 面白ぇぞ、ありゃぁ。なんたって原発が要ら・・・おっと、話がそれたか。

若い衆:
またエスエヌエスっすか! そのネタが言いたくて中島くんを引き合いに出したんでしょう。それ、もうやめた方がいいっすよ、ご隠居。あっしだって、トップメッセージに右へ倣えで、みぃ~んな同じことしか言わない年頭決意のオンパレードな組織はヤバいと思いますよ。

横丁のご隠居:
ん、まぁ、そうだな。そんな外食産業の会社とかもあったな。そんでな、でけぇ単位で言うとな、この国は東日本大震災の時に略奪や暴動なんかも起こらず、インフラや道路が迅速に復活して世界から奇跡だと讃えられたことがあったな。それってぇのは、わしら(日本人)が、簡単にひとつになれるってぇ面でもあるんだって、同調圧力が良い方向に働いた例だって、エラい演出家の人が言ってたな。わしゃぁ、あの人好きだぞ、くわしくは忘れたけど。つまりな、これって、自然と生まれた一体感っつうことだな。

若い衆:
誰すか? そのエラい演出家の人って。

横丁のご隠居:
そこか? まぁ、内緒だ。また話がそれるといかんでな。んで、一方でな、例の流行病がひどかった時には、自粛警察だのワクチン・ファシズムだのってぇのもあったな。つまりな、同調圧力と一体感ってぇのは小判の裏表みてぇな側面があるってことだ。だからこそ、根本部分の組織カルチャーが重要になってくるってぇもんだ。

若い衆:
それじゃぁ、あっしら小市民単位で考えると、クリスマス・ファシズムってぇのもヤバいんすかねぇ。

横丁のご隠居:
あぁ、そうだな。エラいコラムニストの人が言ってたやつな。よく知ってたな。まぁ、クリスマス・ファシズム信者なんて、メディアと資本主義にスポイルされっぱなしってぇことだな。ん? ちと、古くねぇか、このネタ。お前さんのやっかみが入っとらんか? お初っちゃんとはその後どうなんだ?

若い衆:
あ、いやぁ、まぁでも・・・。一体感と組織カルチャーね。そういうもんすかねぇ。

横丁のご隠居:
そういうもんじゃて。お前さんもそのうち分かる日がくると、いいんだがな。まぁ、また何か聞きたいことがあったら、いつでもおいで。次は羊羹でも出してやるからな。ただし、薄切りでな。

若い衆:
へぇ、へぇ。次に羊羹って、ホントにあるんすかねぇ。まぁ、ありやとやんした・・・

まとめ:前田


この記事について
“ざわざわ”は、ツールの使い方や社内コミュニケーションの最適解を教え合う場ではありません。道具が多少足りなくても、できることはないか?姿勢や考え方のようなものを「実務」と「経営」の両面から語り合い、共有する場ですが、【落語deざわざわ】におきましては、戯言に近しい話がほとんどですので、単なる「ボケ」とお考えいただいても一向に構いませんし、これを機に落語沼にハマっていただいても構いません。ただし、日常生活に支障を来たすほど寄席に通ってしまうようになっても、“ざわざわ”では一切責任を負いません。

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