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[エッセイ]最後のサンタが届けてくれたもの
12月25日 クリスマス
街は色めき
街行く人の手にはケーキやチキン
心なしか表情も明るい
私の元にサンタクロースが来なくなって久しい。
記憶の中では小学3〜4年くらいが最後だった。
それ以降は毎年祖父の家に行き、としまえんのトイザらスに連れていってもらっていた。
宮沢家のサンタクロースの欠勤を
祖父がせっせとフォローしていたのだ。
最後のサンタクロースが届けてくれたものを今でも覚えている。
当時ニンテンドー64ソフト
『バンジョーとカズーイの大冒険2』
である。
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若者は知らないかも知れないが、
バンジョーとカズーイ(通称バンカズ)はニンテンドー作品きっての名作であり、数多の小学生に人生初の挫折とトラウマを与えてきた激ムズ良作なのだ。
12月25日の朝
リビングに行くと不自然に母と姉が座っていた。
ニヤニヤとこちらを見ている。
なにかがおかしい。
慌てて部屋に戻ると
枕元で倒れているニセモノ観葉植物の下敷きになっている袋が見えた。
これは…!!!!
と思い、必死にニセモノ観葉植物をどけてみると
そこには外箱が凹んだバンカズ2のパッケージがあった。
母と姉への報告をそそくさと済ませ
早速ニンテンドー64にセットした。
テレビの中で躍動するクマと赤い鳥に心躍ったが、
なにせ前述した通りこのゲームは激ムズなのだ。
ニンテンドーが販売はしているが、レア社というイギリスの会社が開発を担っており、難しさだけでなくブラックジョークもふんだんに盛り込まれている。
(気になる人はゲーム実況をしている人も多いのでぜひ見てみてほしい)
そんなこともあり
あっという間に私の興味は薄れてしまった。
しかし心のどこかで
せっかくサンタクロースがくれたのに。申し訳ない。
という気持ちが小学生ながらにこびり付いていた。
もはや今でもガチガチに付いている。
この気持ちを浄化すべく、YouTuberに自己投影しゲーム実況を見ることにした。
最後まで見届けることで少しでもクリアできなかった無念と後悔を晴らすことができると思った。
エンディングを迎えることができなかったゲームソフトへの供養だ。
やはり難しすぎて途中で見るのをやめた。
サンタクロースが最後に届けてくれたのは
浄化できないトラウマと挫折の経験と、ちょっとばかしの申し訳なさであった。