『水底フェスタ』辻村深月(読書感想文)

めちゃくちゃ面白い。「全国的な野外フェスを毎年開く湖畔の小さな村」という舞台設定に、ラブシャのイメージを重ねて読んだ。

辻村作品の中でも少しテイストが違い、展開が早くてストーリー自体がダーク。
淡々としていてえげつない。

辻村さんは達観した若者の内面を書くのが上手い。張り巡らせた伏線が転がるように回収されるのと同時に、積み上げた世界観が見事なまでに自己崩壊する。

多少なりとも各々の視点で世間を見下して自分を保つ多くの若者にとって、辻村深月の書く文章は、図星で、痛々しくて、面白いんだと思う。

湖畔の小さな村で、少なくない人間が傷つき沈んでいく。しかし不思議なことにこの物語には「悪者」は出てこない。
では、これは何が起こした事件なのか?

邪魔なものを全て呑み込み、沈めて捕え、なお微動だにせず深い緑を湛える水根湖。
平穏なこの村では、今までもこれからも、
絶対に「何も起こらない」

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